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自称平凡少年の異世界学園生活  作者: 木島綾太
【七ノ章】日輪が示す道の先に
306/350

第一八三話 馬鹿に付ける薬なし

間をあまり置かずに中編、スタートになります。

物語全体の核心に触れていくお話なので楽しみです。

 日輪の国(アマテラス)を騒がせたマガツヒの騒動から三日が経過。

 無差別に大勢の命を脅かし、(のち)克至(こくし)の動乱と名付けられた事件。

 それを収めた中心人物として各組織、機関を先導していたフヅキ家とコクウ家の子息(フミヒラ)息女(マチ)が矢面に立てられ賞賛を受けていた。

 しかし、二人は“真に賛美を受けるべき者たちは別にいる”と。

 向けられる羨望の眼差しは的外れだと言い捨て、その目線は冒険者クラン、アカツキ荘に注がれていた。


 実際に動乱の最中、克至病(こくしびょう)の特効薬精製、マガツヒの制圧、首魁であるシラビの鎮圧など数多くの活躍を見せている。

 民衆もまたフェネスが放つ生命の炎、ユキに騎乗した姉弟(きょうだい)の特効薬散布によって救われた記憶が根付いていた。

 動乱の中心地となっていたコクウ家の寺社へ猛進しながら、周囲を助けて回っていたクロトとカグヤ、両名の姿も焼き付いている。


 日輪の国(アマテラス)を絶望から掬い上げた希望の光。

 彼らも四季家の子息女と同様に、動乱を鎮めた一員だと。

 人間、アヤカシ族問わず、大勢の注目を集める結果となったのだ。


『先日の動乱に乗じて神器の強奪を(はか)った大罪人、アカツキ・クロト』

『アカツキ荘のクランリーダーでありながら、シノノメ家に取り入った姑息な犯罪者に対して』

『コクウ家当主シュカは国家転覆罪の疑いアリと判断。よって──彼の者の身柄を捕らえ、起訴し、最高裁判への出廷を命じた!』


 ──故に許せなかった。

 お前は何を言っているんだ? と誰もが言いたくなるほど、あまりにも無理のある裁判を引き起こそうとしているシュカを。

 自身の愚行を瓦版にて堂々と(さら)け出して。

 事態の全容を知る者はおろか、又聞きで情報を知った者でさえも。

 反感を抱いた者たちが列を成し、コクウ家の屋敷に大挙して押し寄せていた。


 ◆◇◆◇◆


「……のう。儂、あやつを解放する目論見で舵を切るように伝えたはずじゃろ。その為に、まあ便宜を図るつもりである分、ある程度の試練か障害を用意しろとは言うたが……このままだと罰せられんか?」

「ツクモ様の懸念はもっともです。しかし、彼は追い込まれるほどに自身の爆発力や人間関係、周囲の環境を利用して状況を打破する才能の持ち主と見ています。王家としてもコクウ家、というよりシュカのやり方には頭を悩ませていましたので……そこを、利用させていただくだけです」


「ハッ、歳の割に老獪(そうかい)な為政者らしくなってきたではないか」

「貴方様の御心を害するつもりはありません。これも一つの試練……彼が乗り越えるべき壁ですので、そう遠くない未来にこの地を来訪することになりましょう。知人の関係者といえど、貴方様がそうまでして気を揉む客人です。無下には致しません」

「ふーむ……まっ、いいか。これも天運。俗世に流れる者としての足掻きを見させてもらうとするかの──」


 ◆◇◆◇◆


 そして、日輪の国(アマテラス)の駅構内にて。


「なんじゃあこりゃあ。あの子、この国で何やってんの……!?」


 積み重なった業務を終えて降り立った、フレン学園長が。

 号外の新聞に載る、見覚えのある顔を見て肩を震わせる。


「……ええい、せっかくの遠出で遊び回りたかったのに! こうなったら直接乗り込んだ方が早いわね!」


 新聞を握り潰し、肩から提げたカバンを背負い直す。

 (くだん)のクロトが出廷している最高裁判。それが執りおこなわれている日輪の国(アマテラス)の王城。

 その眼下にある、大衆に大罪人の姿を晒すことを目的とした展覧型の施設へ向けて、彼女は小走りに駆け出した。

核心に触れる前に冤罪を晴らさなくちゃいけません。なんでこんなことに……


次回、キレるクロト、怖がるレオ達、気圧される裁判官、冷や汗を流すシュカのお話。

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