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自称平凡少年の異世界学園生活  作者: 木島綾太
【七ノ章】日輪が示す道の先に
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第一六二話 四季家会合《中編》

四季家のキャラが続々登場し、クロトがやらかすお話。

「まず初めに、私からの呼び立てだというのに皆を待たせてしまったこと、再度謝罪させてほしい。本当にすまなかった」

「いや! 待たされたとしても数分程度! さほど気にする事ではない!」

(しか)りっ。何事も順調に進みはしないっ。我らに比べてそちらは人も多い、致し方ないと思われますっ」


 腹の底から吐き出すような大声で、オキナさんの謝罪に応えたのはがっしりとした体格の男性二人。

 オキナさんと同等の肩幅に快活そうな表情を浮かべた人は、四季家の一つ。夏を担当するフヅキ家の象徴、鈴生りに咲いた青い花が着物に描かれていた。

 フヅキ家の二人、というかこの場にいる四季家の人間は親である当主と、息子か娘の組で座っているようだ。どことなく雰囲気が似ているから、間違いないと思う。


「して、ウチらを待たせるだけの価値のある人物なのかえ? そちらは」

「見ただけではあまりにも非力というか、雑多な集団と思えますが」


 次いで値踏みするような、見下しを隠そうともしない声音の女性が二人。

 花魁じみた見た目に独特な香水の匂い。衣服には雪の結晶をモチーフにした家紋が刻まれているのが特徴的だ。冬を担当する四季家の人か。


「紹介が遅れたな。彼らはアカツキ荘、カグヤが在籍しているニルヴァーナ冒険者学園で、クランを組んでいる方々だ」


 そう言って俺たちをよく見えるように、オキナさんとカグヤは座った位置を変える。


「右からクロト、エリック、セリス、ユキ。そして冒険者学園にて教鞭を執っているミィナ教諭。彼らは学園行事である国外遠征で日輪の国(アマテラス)に来訪してくれたんだ。しかし、大霊桜(だいれいおう)に関する取り決めで彼らが(こな)せる依頼がギルドや分校側に無く……」

「そんで私らに、大霊桜(だいれいおう)の祭りと神器展覧会に警備として参加させられないかって持ち掛けてきた訳かい」

「前もって聞いといた通りではあるなぁ」


 民族感の強い衣装を身に着け、豪快に胡坐で座る女性と幼さの残る男子は顔を見合わせて呟く。

 どことなく見覚えのある風貌に、ニルヴァーナにおける食糧自給の要であるコムギ先生を想起させた。彼女もまた、日輪の国(アマテラス)の南方“アラハエ”出身である。


「名前と御託はいい。こいつらはオキナを手玉に取るほどの腕を持つ、そのことに意味がある」

「わざわざ四季家会合の場に連れてきて、懇願する程の価値があるのか。オレ達は知らんがな」


 言葉と語気が強い男親と娘の声に肌がざわつく。

 和服にマントのような外套を身に着けている二人は睨むように、こちらから目を離さない。どことなく敵意すら感じる。

 外套に刺繍された見覚えのある花柄が雰囲気を柔らかくする……などということもなく。

 身体を隠すような怪しげな見た目と、あまりにも見え透いて無神経すぎる為かユキの尻尾が警戒を示していた。


「いくらシノノメ家の身内が参入しているクランの一員だとして、部外者である事実に変わりはない。そこな男は日輪の国(アマテラス)の人間に見えるが、仔細は定かでないのだろう? 疑わしいにも程がある」

「待て、結論を急いても意味は無い! それに、彼らは四季家をよく知らないはずだ!」

「面通しは済ませたのだっ。今度はこちらが名を明かそうっ!」


 個性の塊みたいな四季家の方々とのやり取りを眺めつつ、口を開いてよいものか分からないままに事態が進んでいく。


「まずは我から名乗らせてもらおう! 春夏秋冬になぞらえた夏の武家、現当主! 性をフヅキ、名をホフミという!」

「こちらはホフミを父に持つ息子、フミヒラと申すっ。お見知りおきをっ」


 フミヒラさんは自身の胸に指を差してから、二人どもども頭を下げる。


「相変わらず暑苦しいわぁ。でも、流れには乗っときましょうか」

「ウチは冬の武家、クレシ・キリといいます。こっちの妙齢な方が母であり、クレシ家当主のビワになります」

「代わりに紹介してくれたんはありがたいけど、悪意ないかえ?」


 身内ノリで名乗るキリさんは隣のビワさんの睨みつけを流していた。


「私らは秋のムナビ家だ。こっちは息子のシグレで」

「親のシモツだ。四季家の中じゃあんまり目立たねぇから、影が薄いんだよなぁ」

「これ、事実だが滅多なこというもんじゃねぇ」


 ユキと同じ程度の背丈なシグレさんの頭を、シモツさんが軽く小突いた。


「……春の武家、コクウ・シュカ」

「娘のマチだ。これ以上は言わん」


 嫌悪を隠さず、簡潔な挨拶を終えたコクウ家の二人はそっぽを向いた。

 他の三家と比べて、やっぱり警戒心というか敵愾心(てきがいしん)が強いなぁ。理解は示すけど、せめて隠そうよ。

 でも、貴族とか名家の心持ちとしては正しいのか? 今まで関わってきた権力者は気さくな人が多かったから……認識を改めないと。


「彼らはそれぞれ得意とする武具に特化した武術を継承し、日輪の国(アマテラス)の護国を担う側面も持ち合わせている。その武術の根幹にシノノメ家が誇る舞踊剣術が、形を変えて取り込まれているという訳だ」

「だから駅の構内でフヅキ家の方々が演舞を披露してたんですよね」

「そうだ。……君たちの、特にクロトの特異性を示す良い機会か。納得を得られるやもしれない、彼らがどんな武具を使えるか言い当てられるか?」

「えっ。フヅキ家は大太刀、クレシ家は弓、ムナビ家は鎖鎌、コクウ家は槍というか長物じゃないですか?」


 既に先程の受け答え、身格好、わずかな身動(みじろ)ぎ。

 手の平に垣間見えた武器特有のマメや傷の付き方、手首の可動域の癖。

 諸々(もろもろ)を観察させてもらったので即答したのだが……時季(じき)御殿(ごてん)の空気が冷えたように感じる。四季家からの視線が強まり、より警戒された感じが(ぬぐ)えない。


「……俺、もしかしてなんかやらかした?」

後々の展開だったり短編を書く時に”こんな人おらんやろ”と思われない・忘れない為、サブキャラに登場してもらいました。

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