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自称平凡少年の異世界学園生活  作者: 木島綾太
【五ノ章】納涼祭
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第一一五話 とある学園最強の憂鬱

見直したら一切話題に出てない人がいたので描写します。

エピローグは次回に持ち越しです。申し訳ない……

 ジンとの通話を終えてエルノールさんの下へ戻った俺は、色恋眼鏡でニヤついている彼に浮ついた話じゃない、と一言入れてから紫の魔剣を見せた。

 さすがにルシアから渡されたとは言わず、あくまで自身が所有している事を認知させる。


 以前、緑の魔剣であるゴートを目にしていた事もあってか、素直に受け入れた彼は安堵するように息を吐き、果実水を(あお)った。

 これで情報通りなら持ち込まれた魔剣は二本とも俺の手元にあり、魔剣による被害はもう出ないことになる。その安心感は筆舌にしがたいのだろう。


 ルシア達も当初の目的こそ果たせなかったが、ジンからのお咎めは無くニルヴァーナから撤退するようだし、カラミティが魔剣を収集する理由もそれなりに分かった。

 双方、そこそこの痛手は負ったものの得る物はあった……いや、カラミティは損失しかしてないな。


 まあ、同情の余地は一つもないからどうとも思わん。ざまあみろ。

 さて、懸念していた問題は解決したし、いつまでもエルノールさんと絡んでいる訳にもいかない。後は後夜祭と化した宴会を楽しむとしよ──


「クロトくぅ~ん……」

「えっ? うわぁ、ノエル!?」


 エリック達と一緒になって料理に舌鼓を打っていると、凄まじく顔色の悪いノエルが現れた。突然過ぎてびっくりしたわ。

 猫背で負のオーラを背負っているが、しっかりと両手に肉の串焼きを握っている辺り楽しんではいるらしい。


 思えばシオンにシルフィ先生と再開発区画に乗り込んできた、という話を聞かされてから彼女の動向を一切知らない。

 説明会の場にもいなかったし、何してたんだろう?


「ごめんねぇ、あんまり力になれなくって。やたらと手強い奴がいてさぁ、一瞬でケリを着けようにも場所が場所だし、助けに行けなかったんだよぉ」


 しょんぼりとした顔のまま椅子に座り、串焼きをモソモソ頬張って。

 ノエルは心底申し訳なさそうにしながら後悔を口にし出した。どうやらこちらの内情をある程度把握しているらしい。


「いや、先生と救援に来てくれただけでもありがたいし、無茶して怪我されても大変だから無事でよか……無事だったよね?」

「そこは大丈夫。無傷で済んだから」


 食べ終わった串を置いて、ノエルはピースを向けてきた。

 なんともないように言ってるけど戦ってた相手ってシオンだよな。……俺、アイツに一矢報いた程度でボコボコにされたんだけどなぁ。


「あと少し、ってところで謎の光に包まれてさ。気づいたら吹き飛ばされててガレキに埋もれてたの」

『んぐっ』


 光に包まれる。そこに心当たりのある俺と何人かが声を詰まらせた。


「なんとか自力で這い出たんだけど、その頃には自警団が区画内の調査を始めてたんだ。さすがに学生の身で出しゃばる訳にもいかなくて、出会った団員にクロトくん達は帰ったって言われてボクも区画を後に……って、どうかした?」

「なんでもない、なんでもないよ」


 不思議そうに首を傾げるノエルに手を振り、悟らせないようにする。

 まさか俺のシフトドライブが原因で戦闘を中断させられたとは思わなかった。……ドレッドノートの咆哮(ハウル)以上の火力が出せるとはいえ、想定よりも被害範囲が大きい。

 指向性を持たせていた事と完全同調(フルシンクロ)のおかげで、俺や近くに居た皆も無事で済んだが……今後はリミッター解除の使い時を考えよう。


「とりあえず学園に戻ってからは事後処理に走り回り、徹夜で対応して、生徒会主導の復興作業に(いそ)しんで……キミのお見舞いにも行けず、こんな時間になってしまいました……」

「そこまで気にしなくてもいいのに……」

「だってぇ! ただでさえボクと戦ってボロボロなのに、また血だらけで救護所に運び込まれたって噂が流れてきたからぁ!」

「第三者視点から聞くと本当に酷いな、俺の状態」


 ノエルは今にも泣き出しそうな顔で串焼きを貪り、頬を膨らませた。

 自責の念が強いのは十分わかったけど食欲に忠実過ぎるだろ。


「あと事後報告で聞いたけどウチの生徒から犯罪者が排出されたとか、所属してる教師の品性が悪かったとか。色々なご意見・批判・中傷が届いてきて頭が痛い」

『ああ~……』

「生徒会長とはいえボクは一生徒だよ!? 言われた所で解決できるような権力は無いんだから教師に言いなさいよぉ!」


 日頃の重責とイタズラな悪意のダブルパンチで。

 ついに涙腺が決壊したノエルを横目に、アカツキ荘の面々を手招き。


「ありゃあ短期間で問題が起こり過ぎたせいで相当溜まってるな、鬱憤(うっぷん)が」

「立場や状況を考えたら仕方ないんだけど、ストレスで胃に穴が空くのは時間の問題だね」

「下手に学園長を近づけたら殴りかかるかもしれん。なるべくアタシらで(ねぎら)うか」

「あまり刺激しない方が良いでしょうね……荒れるような心中、お察しします」

「かわいそう」

「こらっ。本当のこと言っちゃだめでしょ」


 顔を寄せ合い、ひそひそと内緒話。

 慟哭を耳にして面倒事が増えるとでも思ったのか。離れようとする卑劣な学園長の襟元をシルフィ先生が掴んで引き留め、それを素知らぬ顔で盾にしたルシアを眺めながら。

 短くも容赦の無い憐憫(れんびん)を口にするユキを抑えて、ノエルのフォローに回った。


 なんだかんだノエルは学園や生徒の為を思って行動を起こしている。しかも直近ではメイド喫茶を手伝ってもらったり、事件解決に協力してくれた恩があった。

 そんな彼女を粗末に扱うような人情の無い人間はこの場にはいない。

 強さは本物だがメンタルが若干豆腐な彼女を(なだ)め、時間を掛けたおかげでどうにか持ち直したらしい。


「大変ご迷惑をお掛けしました……」


 しかし後輩に気を許し過ぎたとでも思ったのか、それとも今さら気恥ずかしくなったのか。今度は赤くなった顔を両手で隠して(うつむ)いてしまった。

 もはや生徒会長としての威厳は欠片も無いし、手遅れだから取り(つくろ)わなくてもいいのに。

今度こそ、今度こそ次がエピローグです。

ちなみに誰とは言いませんがデートしたヒロインとの絡みになります。すごく楽しみ。

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