本当は怖い21世紀童話 『浦島太郎』
わりと最近起こったはなし。
歌舞伎町に、浦島太郎という派遣社員の若者がいました。
本日もパチンコに負けた浦島さんが深夜の街を通りかかると、チャラ男達がBSR58のわっちゃんに似ている女性を捕まえてナンパしていました。
「おい、やめろ!!その子が嫌がっているだろ。放してやれ!!」
浦島はびくびくしながら言った。当然、彼らは怒りだして浦島のほうに絡みにいった。
「なあ小僧、俺たちが、やっと捕まえたんだ。邪魔するなよ、あ!?」
見ると彼女は涙をこぼしながら、浦島さんを見つめていましたが、浦島さんも同様に涙をこぼしていた。そこで、浦島さんはお金を取り出し、チャラ男達に差し出して言いました。
「あのさー、このお金をあげるから、放してあげて。」
「うん、それならいいよ」
あっけないなーっていう突っ込みは置いといて、浦島は、彼女をを受け取った。
「大丈夫かい? もう、捕まるんじゃないぜ。」
と痛いぐらいカッコつけて言ったが。
「ちょっとあんた、あたしのことなんだと思ってるのよ!!」
浦島は彼女に殴られた。
「お金払って人助けなんて正気ですか?馬鹿ですか!?私は風俗嬢とでも言いたいんですか。吉原だからって勘違いしないでダイコン男!!」
怒り狂った彼女は浦島を罵ってその場を去っていった。
「もっと罵って!!」
どういうわけか、浦島さんが何かとんでもない方向に目覚めてしまっていることに、浦島本人は気が付いていなかった。
それから二、三日たったある日の事、浦島さんがパチンコに出かけ、2万を落として店を出ると、
「・・・浦島さん、・・・浦島さん。」
と、誰かが呼ぶ声がします。
「おっ?誰が呼んでいるぜ?」
「わたしですよ」
するとビルの上から、ひょっこりと女の子が出てきて言いました。
「このあいだは助けていただいて、ありがとうございました。」
「あ!!あの時の、ええっと名前は・・・」
「坂木翠と言います。この前は助けていただいたのにもかかわらず、殴ったりして申しわけありませんでした。せっかく命が助かったというのに無礼をお許しください。ところで浦島さんは、竜宮へ行った事がありますか?」
「竜宮?竜宮って、ソープの事?」
「浦島さん、シメテいい(笑顔)?」
「すみませんでした。」
さすがに失礼だろ浦島太郎。少しは考えろ。しかし彼女は冷静さを取り戻してにこにこしながら説明を続けた。
「空の向こうです。」
「えっ?もしかして君、中二・・?」
「今すぐご逝去させてあげましょうか?」
「申し訳ありませんでした。」
浦島太郎の頭のネジには、翠もあきれ返っていました。
「では、あなたのために用意したロケットがあるので、わたしがお連れしましょう。さあ、どうぞ!!」
彼女はは浦島さんをロケットに縛り付けて、運転した。空の向こうでは、太陽の光がギラギラしており、雲がユラユラとゆれ、なぜか、緑や赤の植物がどこまでも続いています。
「あれ、なんか息できないんですけど!!」
状況が分からなくなってしまった浦島さんは思考が停止してしまい。泡を吐いてしまいました。そうこうしているうちに、やがて立派な御殿へ着きました。
御殿についた浦島太郎は、正気を取り戻すと今度はパニック状態を起こして暴れ出した。浦島太郎はあまりにもうるさかったので、翠は、100tのハンマーで彼の頭を殴りつけました。
「着きましたよ。このご殿が竜宮です。さあ、こちらへ」
「これラブホじゃない??」
「これ以上しゃべらないほうが身のためですよ?」
「許してください。靴をなめますから。」
浦島さんは再び100tのハンマーで殴られました。
彼女に案内されるまま進んでいくと、この竜宮の主人の美しい姫さま(?)と、どこかで見たことあるような色とりどりの神7(?)達と一緒に浦島さんを出迎えてくれました。
「ようこそ、浦島さん。わたしは、この竜宮の主人のモブ本圭子です。このあいだはカメを助けてくださって、ありがとうございます。お礼に、竜宮をご案内します。どうぞ、ゆっくりしていってくださいね。」
浦島さんは、竜宮の広間ヘ案内されました。浦島さんが用意された座布団に座ると、神7たちが次から次へと素晴らしいごちそうと少年誌を運んできます。
かなりパンクな音楽が流れて、BSR58みたいなアイドルグループっぽい人たちが水着を着て見事な踊りを続けます。本物よりうまいような気がするのは気のせいだろうかという話は置いといて、ここはまるで、天国のようです。
浦島さんは時間を気にしつつも「もう行っちゃうんですか??もう一時間いてください。もう行っちゃうんですか、もう一日いてください。もう行っちゃうんですか、もう一年いてください。」
と、キャバ嬢が言いそうなことを姫様に言われるがままに竜宮で過ごしているうちに、三年の月日がたってしまいました。きっと仕事はクビになってしまっただろう。
ある時、浦島さんは、はっと思い出しました。
俺の仕事どうなっているだろう?
俺のネトゲーのアカウントどうなっているんだろう?
俺の家族はどうなっているんだろう?
さすがにもうヤバイと今更気が付いた浦島さんは、言いました。
「姫様、今までありがとうございます。ですが、もうそろそろ家へ帰らせていただきます。」
「は、帰るの?さっさと帰んな。」
ものすごく反応が冷たかった。
「はい、わたしの帰りを待つ者もおりますので」
すると姫様は、さびしそうに言いました。
「そうっすか。それはなごりおしいなー。じゃじゃ、おみやげにこの本を差し上げましょう。」
「なぜに本?」
「はい。この中には、浦島さんが竜宮で過ごされた『時』が入っております。これを視聴せずにに持っている限り、浦島さんは平和に過ごせます。ですが一度開いてしまうと、暗闇の世界に落とされるため、決して視聴してはなりませんよ。」
「なんかよくわからないけど、わかりました。ありがとうございます」
分かったのかわからないのか曖昧な返事をして姫様と別れた浦島さんは、ロケットに再び縛り付けられて地上へ帰りました。地上にもどった浦島さんは、まわりを見回してびっくり。
「おや? わずか三年で、ずいぶんと様子が変わったな」
確かにここは浦島さんがよく通っていたパチンコ店ですが、何だか様子が違います。浦島さんのアパートはどこにも見あたりませんし、出会う人も知らない人ばかりです。それどころが、まともな建物が残っておらず、人けのない廃れた町に成り下がっていました。
「あれ?俺のアパートは、どうなったの?」
そうやってつぶやいても辺りはシーンとしていました。
辺りを歩いていたら、見覚えのある一冊の少年誌が落ちていたので、拾って読んでみたみました。なんと、看板漫画だったワンポークが連載終了しているじゃないですか。まあ、3年たっていれば終わってもおかしくないと思っていたが、年号を見たらあきらかにおかしいことに気が付いた。
すると、一枚の色が透けたポスターが飛んできた。なんとそこには、探しています。浦島太郎と書かれていました。
「一体どうなっているんだ。」
すると、片腕を失った老人が、ベンチに座っているのが見えたので今の様子を聞いてみることにしました。老人は教えてくれました。
「浦島、ああ、数年前に行方不明になったと聞いたね。」
「えっ!?」
老人の話しを聞いて、浦島さんは再びパニックになり、壁に頭を殴りつけました。
竜宮の3年は、この世の50年にあたるのでしょうか?
がっくりと肩を落とした浦島さんは、ふと、持っていた本をを見つめました。すっかり姫様の忠告を忘れてしまった浦島さんは、開いてはいけないと言われていた本を開けてしまいました。
なんと、そこに記されていたのは、見覚えのない請求書の山でした。
「あーあ、あれほど開くなと言ったのに開いちゃったね浦島さん。お金払ってもらいましょうか?」
振り向くと、今度は見覚えのあるダンス集団に似た男たちが指を鳴らしながら待機していました。
「やっぱり世の中金だね。」
浦島太郎はそうつぶやいてダッシュでその場を逃げました。
こんな話を作ってしまいましたが、世の中には、まだ綺麗なとこが残っていると信じています。