0403
僕へ向けられるその想いも、いつかは……。
《つなぎとめるのに必死なんだ》
ある日のティータイム。
この日は担任であるハルル先生も入れて、三人でお茶をしていた。
「そういえば、タクトくんはアヤちゃんのこと好きなんだよね?」
突然のハルル先生の質問に動揺したアヤが、慌ててティーカップをテーブルに置く。
いつも唐突に始まるハルル先生の質問に慣れているアヤも、流石に恋愛方面になると話は別のようだ。
「いきなりですね。まぁ、アヤのことは好きですよ?」
そう答えて、ななめ左前に座るアヤの様子を見る。すると、アヤは顔を赤くして俯いていた。
「そう言うわりには、タクトくんが妬いているところ見たことないんだよね」
不思議そうに言うハルル先生。なるほど、だからあの質問を投げてきたのか。
「嫉妬とかしないの?」
「何て答えてほしいですか?」
「もう! 質問を質問で返さないでよ」
「ハルル先生がイジワルな質問をしてくるからですよ」
にこやかに笑って返せば、ハルル先生は子供のように頬を膨らませた。
そんなこんなでティータイムが終わり、気付けば夜になっていた。
夕食後、いつものようにリビングでくつろいでいると、アヤが紅茶を二人分持って入ってきた。アヤからティーカップを受け取り、お礼を言う。一口飲んで息を吐いたあと、アヤが口を開いた。
「あの、さ……」
「なあに?」
「昼間の、はるるんの質問の答え……は」
「不安になった?」
アヤの言葉を遮って尋ねる。すると、小さな頷きが返ってきた。
「ごめん。アヤを不安にさせるつもりはなかったんだ」
「それで……」
「アヤが他の男の人と笑っているところを見る度に、妬いてるよ。時々、ものすごく不安になる時もあるし」
きょとんとした顔でアヤが首をかしげる。仕草だけで、どうして? と尋ねていることが判った。
「僕は、みんなが思ってるほどいい人じゃないし、アヤが心移りすることがあったら、と思うと、ね」
アヤを信じていない訳ではないけれど、まだ付き合い始めたばかりだから、どうしてもそんなことを考えてしまう。
「心移りなんて、しないよ。私のこと知ってるのは、タクトだけなんだから」
「……そうだね」
――それでも、君のことをつなぎとめようと、必死になっているんだ。――
Fin.
…ひとやすみ…
思っていたのと違う方向に話が進んでしまいました。
ちなみに、この話は二人が付き合い始めた頃です。
お題に合っているのかも微妙な話になってしまいました。反省しないとですね……。
H25 3/10