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第二章

 景子と別れた後、必死で走った遼はその甲斐あってすんでのところで遅刻を免れていた。朝からの全力疾走でもう疲れきっている遼の所へ一人の女子が近寄ってきた。

「どうしたの、遼? 朝からそんなに衰弱しちゃって。寝坊でもしたの?」

「違うよ。朝、電車に乗ってたら痴漢に遭ってる女の子がいてさ、助けてたら遅れちゃっ

て」

「そうだったんだ。相変わらず優しいね。だけど彼女の身としてはそれで女の子から人気が出ちゃったりすると不安になるけどね」

「大丈夫だって。俺が好きなのは裕美だけだから」

「うわっ。よくそんなことが堂々と言えるね。こっちが顔赤くなっちゃうよ……」

 遼から真顔で好きと言われた裕美は顔を抑えながら悶えていた。その様子を見て遼は笑っていたが、その視界の先にあるものを見つけると顔色が急に変わった。

「んっ? どうしたの、遼?」

 突然、顔色が変わった遼に違和感を覚えて、振り返るとすぐ側に彼らの担任が立ってい

た。

「黒澤、斉藤。そろそろ朝のホームルーム始めてもいいか? それとも今日の議題はお前

らの素敵なエピソードの紹介にでもするか?」

 担任のその言葉に周りのクラスメートは笑いながら賛成と言っていたが、本人達の強い

要望で今日のホームルームはいつもと変わらない連絡事項のみとなった。


 放課後、遼と裕美は並んで校門から出てきた。彼らはいつものように二人で下校をする。

ただ遼の家と裕美の家は逆方向のため学校最寄の駅までの短い距離しかいっしょに下校で

きない。

「あーあ、私の家と遼の家が近かったらもっといっしょにいられるのにね。帰りにどっか

で遊んでいける回数も増えるだろうし……」

「しょうがないだろ。実際逆方向なんだから。こればっかりはどうにもならないよ」

「もういっそのこと遼が私の家に住んじゃえばいいのに。遼、一人暮らしなんだから私の

家に来なよ。お母さんも歓迎してくれると思うよ」

「だけど人の住まない家は荒れるからなぁ。父さんと母さんが赴任先帰ってくるのもいつ

かわからないし」

「やっぱ無理か。それじゃ逆に私がそっち行っちゃおうかな」

「そっちは見つかったら学校の方が面倒なことになりそうだからなぁ」

「さすがに高校は出たいよね……」

 二人は結局同じ家に住むことは諦めて、駅で別れた。こんなふうに喋りながら駅までの

つかの間の下校を毎日楽しんでいた。


 遼は改札で裕美と別れ、一人で電車に乗り込んだ。自宅の最寄り駅までは駅六つほどだ。

さすがに六つもあるとあまり遅くまで裕美と遊んでいられない。帰る頃にはだいぶ遅い時

間になってしまう。さらに一人暮らしの遼には買い物という仕事もある。だから土曜日か

祝日前ぐらいしか下校後に遊ぶことはできないのである。

 電車が最寄り駅に着くと遼は電車から降り、家へ向かって歩き出した。

 だが、遼は家へ向かうまでの間に違和感を感じ始めていた。学校から駅まではこんな感

じはなく、自宅の最寄り駅からだ。まるで誰かに見張られているかのような感覚。

不気味に感じ始めた遼は自宅まで走って帰った。そのまま自宅まで来ると見張られている

ような感覚は消えていた。

「なんだったんだ……。俺の気のせいか?」

 遼は気持ちの悪い感覚を残したまま家へ入っていった。

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