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ゴブリンの願い

作者: 渡しログ
掲載日:2026/02/02


 薄気味悪い夜だった。

 フラフラと1人で森を歩いてた冒険者を叩き殺した。


 オレの棲み処のすぐ近くだ。

 なに考えてやがったんだコイツは。


 死体を漁ると臭い匂いの緑色のポーションが1つ。

 刃こぼれだらけの剣が1本。

 身に着けてる装備もボロボロだ。


 コインが入った革袋だけ拾って、その場を離れた。


 尻を掻きながら棲み処に入ろうとすると、後ろに気配を感じた。

 振り返ると、さっき殺した冒険者の顔だった。


 透明のカラダで。

 しかも素っ裸で。


 殴ってみたがすり抜けやがる。

 そいつは、身じろぎもせず、じっとオレを見てやがる。


 無視して歩いてもついてくる。

 走って逃げてもオレより早ぇ。


「あっちいけ!おめぇはもうぶっ殺されてんだよ!」


 すると、幽霊の口が動き出した。

 よく聞こえねぇから、近づいた。

 すると、耳元で囁きやがった。


「僕のおばあちゃんが……死にそうなの……助けてあげ……て……」


 気持ち悪ぃ。背筋が凍る。

 知るかよ。

 そんなもんオレのしったこっちゃねぇ。


「うるせぇ!あっちいけ!!」


「おばあちゃん……おばあちゃん……」


 幽霊が、黒光りを始めやがった。

 真っ暗な夜の中で、そこだけさらに黒い。

 吸い込まれるような黒さだ。

 やべぇ、こいつはやべぇ……

 カラダが……持ってかれちまう……

 やべっ……なんだ……意識がっ……




 ある朝。

 洞穴の入り口で僕は目が覚めた。


 僕はゴブリンになっていた。


 胸もお腹も、手も足も、僕の肌は緑色だった。

 これは間違いなく、夕べ僕を殺したゴブリンだ。


 だって、僕のコイン袋を持っている。


 おばあちゃんの薬を探したけど、僕は持っていなかった。

 だから、僕は僕の死体を探しに森へ入った。


 森の中は、小鳥が囀っていて、風も心地よい。

 僕のカラダはゴブリンだけど、森の空気は美味しかった。


 僕が殺された場所に行くと、僕の死体が転がっていた。

 戻れないか、試そうとしたけど、ムリそうだった。


 ポーションは、そこに落ちていた。

 僕はそれを握りしめて、村へと向かった。

 まっててね。おばあちゃん。

 僕は今、ゴブリンだから、家の前に置いてくる。

 それだけでいい。


 まだ朝陽は昇りたてで、少し霧がでていた。

 僕は村へつくと、家路へと急いだ。


 おばあちゃんの家が見えてくる。


「ひっひいぃぃ!!」


 悲鳴が聞こえた。

 隣りに住んでる小さなサリーだった。


「ゴ……ゴブリン!!おどおちゃーん!!」


 サリーは腰を抜かして、涙を流している。

 ゴブリン?


 あ……僕か……


 あちこちの家から、男たちが出てくる。


「なんだコイツ!1匹で、なにしにきやがった!」


「まって……僕は……」

 喋っている途中なのに、横から棒のようなもので顔を殴られた。


 僕はおばあちゃんに薬を……


 あちこちから、殴られる。

 僕は丸くなって、薬を守った。

 これだけは……これだけはどうしても……

 おばあちゃんに……


 薬は……薬だけは……



 瓶が転がっていく。



 僕の意識が無くなる前に……

 だれかが拾ったのを見た。


 その手は小さな……




(終)


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