ゴブリンの願い
薄気味悪い夜だった。
フラフラと1人で森を歩いてた冒険者を叩き殺した。
オレの棲み処のすぐ近くだ。
なに考えてやがったんだコイツは。
死体を漁ると臭い匂いの緑色のポーションが1つ。
刃こぼれだらけの剣が1本。
身に着けてる装備もボロボロだ。
コインが入った革袋だけ拾って、その場を離れた。
尻を掻きながら棲み処に入ろうとすると、後ろに気配を感じた。
振り返ると、さっき殺した冒険者の顔だった。
透明のカラダで。
しかも素っ裸で。
殴ってみたがすり抜けやがる。
そいつは、身じろぎもせず、じっとオレを見てやがる。
無視して歩いてもついてくる。
走って逃げてもオレより早ぇ。
「あっちいけ!おめぇはもうぶっ殺されてんだよ!」
すると、幽霊の口が動き出した。
よく聞こえねぇから、近づいた。
すると、耳元で囁きやがった。
「僕のおばあちゃんが……死にそうなの……助けてあげ……て……」
気持ち悪ぃ。背筋が凍る。
知るかよ。
そんなもんオレのしったこっちゃねぇ。
「うるせぇ!あっちいけ!!」
「おばあちゃん……おばあちゃん……」
幽霊が、黒光りを始めやがった。
真っ暗な夜の中で、そこだけさらに黒い。
吸い込まれるような黒さだ。
やべぇ、こいつはやべぇ……
カラダが……持ってかれちまう……
やべっ……なんだ……意識がっ……
ある朝。
洞穴の入り口で僕は目が覚めた。
僕はゴブリンになっていた。
胸もお腹も、手も足も、僕の肌は緑色だった。
これは間違いなく、夕べ僕を殺したゴブリンだ。
だって、僕のコイン袋を持っている。
おばあちゃんの薬を探したけど、僕は持っていなかった。
だから、僕は僕の死体を探しに森へ入った。
森の中は、小鳥が囀っていて、風も心地よい。
僕のカラダはゴブリンだけど、森の空気は美味しかった。
僕が殺された場所に行くと、僕の死体が転がっていた。
戻れないか、試そうとしたけど、ムリそうだった。
ポーションは、そこに落ちていた。
僕はそれを握りしめて、村へと向かった。
まっててね。おばあちゃん。
僕は今、ゴブリンだから、家の前に置いてくる。
それだけでいい。
まだ朝陽は昇りたてで、少し霧がでていた。
僕は村へつくと、家路へと急いだ。
おばあちゃんの家が見えてくる。
「ひっひいぃぃ!!」
悲鳴が聞こえた。
隣りに住んでる小さなサリーだった。
「ゴ……ゴブリン!!おどおちゃーん!!」
サリーは腰を抜かして、涙を流している。
ゴブリン?
あ……僕か……
あちこちの家から、男たちが出てくる。
「なんだコイツ!1匹で、なにしにきやがった!」
「まって……僕は……」
喋っている途中なのに、横から棒のようなもので顔を殴られた。
僕はおばあちゃんに薬を……
あちこちから、殴られる。
僕は丸くなって、薬を守った。
これだけは……これだけはどうしても……
おばあちゃんに……
薬は……薬だけは……
瓶が転がっていく。
僕の意識が無くなる前に……
だれかが拾ったのを見た。
その手は小さな……
(終)




