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満足死  作者: 竜造寺。(原案・編集) & ChatGPT(生成)
エピローグ
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エピローグ

 提出先:第四層・委員会連絡窓口(暫定)

 件名:地表滞在中の所見と、運用上の留意点(抜粋)

 作成者:第四世代(個体識別は省略)

 日時:2138年8月XX日 地表


 僕は報告書という形式を信じていない。信じると信仰になる。信仰になれば手続きは宗教になる。宗教になれば止まらない。止まらないものは正義の顔をして、銃口を上げる。


 だからこれは信仰ではない。保守だ。保守点検のための記録だ。記録は価値になりやすい。価値になれば点になる。点になれば市場になる。市場になれば暴力になる。暴力は抑止を呼ぶ。抑止は銃を呼ぶ。


 そうならないように、いくつかの事実だけを置く。




 1)生存点の儀式が、祈りから戻りかけている


 地表側の「生存点」は、いつから儀式になったのか。数字が信仰になると、数字を守るために人が死ぬ。人が死ぬと数字は神になる。神になった数字は、満足のいく死を至上にする。


 だが、詰まりが続いたせいで、いくつかの変化が起きている。


 祈りの声が減った。代わりに、確認の声が増えた。


「……印字、出た」

「……照合、まだ」

「……じゃあ、待つ」


 待つという言葉が増えるのは、地上では珍しい。地上は速度を信じる。速度が正しさになるからだ。正しさが正義になるからだ。正義が銃を軽くするからだ。


 けれど、待つしかない時間が増えた。待つしかない時間の中で、人は祈らなくて済む。祈らない時間は宗教を痩せさせる。宗教が痩せれば、儀式は手続きに戻る。


 戻りかけている。断定しない。断定は配布に向く。配布できる断定は価値になる。価値は暴力になる。




 2)地底側の委員会は、処置者指定を撤回できないまま揺れている


 委員会は「処置者」を必要とする。処置者は便利だ。便利なものは疑われにくい。疑われにくい便利さは、いつも最後に銃を呼ぶ。


 今回、委員会は処置者を指名した。指名は柔らかい言葉だ。柔らかい言葉は人を運ぶ。運ばれた人は値になる。値になった人は、引き金の理由になる。


 だが、指名は成立しきらなかった。成立しなかったというより、成立の途中で揺れ続けている。


「指名」

「未定義」

「再照会」

「保留」


 同じ語が循環する。循環は宗教だ。宗教になれば止まらない。だが、循環が循環のまま止まると、宗教は力を失う。力を失った宗教の前で、銃は正義になりにくい。


 委員会は撤回できない。撤回すると責任が見えるからだ。見える責任は一点に集まる。一点に集まった責任は処置者になる。処置者は英雄になる。英雄は神になる。


 撤回できないまま揺れている。揺れは遅さだ。遅さは罪だ。だがこの罪は救いだ。救いの遅さだけが、引き金を重くする。





 3)ゼロの痕跡は、雑音として残り続ける


 ゼロは欠落の別名だ。欠落は、制度の辞書に載らない。辞書に載らないものは、指定できない。指定できないものは処置者を立てない。処置者が立たなければ、英雄は立たない。英雄が立たなければ、神は立たない。


 だからゼロは、意味にしてはいけない。


 意味にすると物語になる。物語になれば宗教になる。宗教になれば止まらない。止まらない宗教は、欠落すら正義に変換してしまう。


 今、ゼロはログに残っている。だが残り方が悪い。良い悪いではなく、都合が悪い。都合が悪い残り方をしている。


 照合の再試行回数だけが増え、原因欄が空白になる。

 値が未定義のまま通過し、通過した事実だけが残る。

 帳簿に、同じ桁数の「空き」が増える。


 空きは市場を作れない。市場ができない空きは暴力になりにくい。暴力になりにくい空きのままなら、欠落は欠落のまま生き延びる。


 生き延びた欠落は、後で意味になりうる。意味になりうる、で止める。意味になる、と言った瞬間に誰かが拾い、配り、価値にする。


 ゼロを値にするな。名を値にするな。値にされる前に、名を名のまま逃がせ。

 その作法だけが残っている。作法は宗教ではない。誰のものでもない習慣だ。





 4)「喉の根元」に触れた結果、世界は閉じ損ねたままになる


 喉は世界の接続部だ。接続部が滑らかだと、世界は飲み込み続ける。飲み込み続ける世界では、外が内側にされる。内側にされた外は戻れない。戻れない性質は死に似る。地底が避けたはずの死の形が、別名で増殖する。


 喉が詰まると、世界は閉じ損ねる。閉じ損ねた隙間にだけ、別の呼吸が入り込む。

 その呼吸が何かは、まだ名付けない。名付ければ値になる。値になれば運ばれる。運ばれたものは戻れない。


 僕が確認できたのは、ただ一つだ。


 現場が、速度を疑い始めた。

 疑い始めた、と断定しない。疑いのような遅さが増えた、とだけ言う。


「……急がなくていい」

「……急いでも、どうせ詰まる」


 詰まりが常態になりかけている。常態になった詰まりは、正義になりにくい。正義になりにくいものは銃を正義にしにくい。銃が正義になりにくい世界は、まだ二つに割れないままでいられる。




 結語。報告書は結語を求める。結語は断定を呼ぶ。断定は配布を呼ぶ。配布は価値を呼ぶ。価値は暴力を呼ぶ。だから結語を置かない。


 代わりに、注意だけ置く。


 拾うな。配るな。名を値にするな。ゼロを意味にするな。

 そして、喉を滑らかに戻すな。


 戻すな、は命令にすると宗教になる。宗教になれば止まらない。だから命令ではなく、現場の癖として落とす。癖は誰のものでもない。誰のものでもないものは英雄を作らない。


 英雄がいない限り、満足死は至上になれない。


 僕はまだ地表にいる。灰の上の帯は、まだ手元にある。

 短い、長い、短い。だが一定にしない。


 一定にしないことで、ゼロは雑音のまま残り続ける。

 雑音のまま残る限り、世界は断定できない。

 断定できない世界だけが、引き金を重くする。

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