表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

第8話 泉プロデュース・お家デート

クラス全員が見守る中、次に呼ばれたのは神谷蓮と朝倉真帆だった。さすがS評価ペア、期待を裏切らない。

「神谷・朝倉ペア。女子満足度94点、男子満足度98点。総合評価はA」

 ざわっ、と教室が揺れる。どよめきの中、朝霧先生が黒板に大きく“A”と書き込んだ。

「二人は高い理解度を示しただけでなく、自分自身も楽しんでいた。相手と一緒に喜び合う──それがこの課題の理想形です」

 神谷は照れ笑いを浮かべ、朝倉は胸を張って微笑む。教室は自然と拍手に包まれた。

 その後も、他のペアの発表が続く。

 C評価で悔しがる男子。B評価に安堵する女子。笑いとため息が交互にこぼれる。

(なるほど……やっぱり大半はBからDに収まる感じか)

 そんな空気の中──いよいよ俺たちの番が来た。

「最後に。鷹宮・白羽ペア」

 朝霧先生の声に、教室がざわめく。史上初のF評価を叩き出したペア。視線が一斉に突き刺さる。

「女子プロデュース。──男子満足度85点、女子満足度70点。総合評価はB」

 ……一瞬、教室が静まり返る。

 そして誰かが叫んだ。

「おい、白羽のデートってまさか──お家デート!?」

 結果表示の点数の脇に、デート内容が小さく記されている。その文字を見つけた男子が、食いつくように声を上げた。

 ざわつきが爆発する。俺は思わず頭を抱えた。

 ──その日の記憶が蘇る。

 待ち合わせ場所に現れた泉は、涼しい顔のまま口を開いた。

「……うち」

「……は?」

「お家デート。これで十分でしょ」

 呆気にとられる俺を置き去りに、泉はさっさと歩き出した。付いていくしかなかった。

(女子の家に行く……って、どう考えてもやばいだろ)

 心臓がやたらとうるさい。

 白羽家は広くて整然としていた。泉の部屋に通されると、壁際に本棚、シンプルなベッド、整頓された机。女子らしい小物はほとんどなく、書斎のように落ち着いた空間だった。

「まあ時間まで、ゆっくりしていって」

「……いや、本当にやる気ないんだな」

 俺が苦笑すると、泉は肩をすくめてソファに腰を下ろし、タブレットで映画を流し始めた。俺も隣に座ったが、自然と一歩分の距離をあける。

(……思ってたより普通、か)

 画面には、可愛らしい猫が小さな冒険に出る物語。子ども向けかと思いながらも、気づけば引き込まれていた。

「こういうの、好きなのか?」と小声で尋ねても、泉は返事をせず、ただじっと画面を見つめている。横顔はやはり整っていて、光の加減で少し幼く見えた。

 映画が終わると、泉は小さく欠伸をして、静かに横になった。

「眠いなら寝れば?」

「……そのつもり」

 そのまますぐに寝息が聞こえ始める。

 俺は途方に暮れたが、不思議と居心地は悪くなかった。光に照らされた寝顔は、普段の冷たさより年相応に見えて──思わず目を奪われてしまった。

 その後の時間は、タブレットを借りて俺の好きな映画を一本観た。

 結果。泉の満足度は70点。昼寝できて満足だったのだろう。

 俺はまさかの85点。ドキドキの連続だったが、落ち着いた時間を意外に楽しんでいた。

 現在に戻る。

「お家デートとか……やらしいなぁ」

「いやらしすぎだろ!」

 (おい、男どもは泉と俺で変な妄想はするなよ?)

「白羽さんって意外と積極的?」

「鷹宮くんが狼に……」

 (あれ、女子たちまで?)

 クラスメイトが口々に冷やかす。

「なっ……! 何もしてないわよ!」

 泉が顔を赤くして睨み返す。その珍しい反応に、教室は爆笑の渦に包まれた。

 ──次は俺プロデュースの番だ。そのスコアを見て、クラスメイトはどんな反応を見せるのか……考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ