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第7話 新課題、デートプロデュース

この学園も、四六時中恋愛漬けというわけではない。

日々の授業は普通の高校と同じだ。

午後からは国語で古典を読み、数学でグラフを書き、英語でリスニングをやらされる。

──退屈だが、むしろ落ち着く時間だった。

だが放課後。

担任が教室に入り、一枚のプリントを掲げる。

「さて、次の課題を発表する。次の課題は──デートプロデュースだ」

ざわつく教室。

担任は黒板に大きく書き出した。

【一日目:女子プロデュースのデート】

【二日目:男子プロデュースのデート】

「ルールは簡単だ。

 相談は禁止。当日はプロデュース側がすべての行動を決めること。

 支給するスマートウォッチで、会話や表情、心拍数などを記録し、相手の“満足度”を数値化する」

「つまり──どれだけ相手を楽しませられるか。それが評価のカギになる」

その言葉に、生徒たちは一斉にざわついた。

「テーマパークなら鉄板じゃね?」

「いや、映画とかカフェが無難でしょ」

「悩むなぁ……」

(……こいつら、やる気満々だな)

俺は隣を見る。泉は案の定、プリントを机に丸めて放り出し、窓の外を眺めていた。

(……マジでどうするんだ)

──その夜。

自宅の机の上で、俺はスマホを手に明日の予定を確認していた。

今日の泉プロデュースのデートには正直びっくりした。

ただ、その中で気づいたこと、学んだこともある。

明日は俺の番だ。精一杯やるしかない。

(……今日のデートで思いついたことが役に立てばいいんだが)

スマホの画面を閉じ、深く息を吐いた。

そして結果発表の日。

「まず最初に──笹本・高梨ペア」

担任の声に応じて立ち上がったのは、笹本駿と高梨あかり。

笹本は日に焼けた肌に背の高いスポーツマンタイプ。

短髪がよく似合い、野球部出身だと一目で分かる。

高梨は対照的に小柄で、前髪を眉上で切りそろえた可愛らしいタイプだった。

「女子プロデュース:野球観戦。男子満足度90点、女子60点。総合評価はB」

結果を聞いたあかりは、照れたように笑って言う。

「あれ、あかりの点数も出んの?てか、あかりあんまり楽しんでなかったの?」

「駿ちゃんがずっと野球やってて、あのチームの試合もよく見てるから……好きなのは知ってたけど。私、ルールは正直曖昧で……」

駿が苦笑して肩をすくめる。

「そうだったのか」

「うん。でも一緒に見れたのは楽しかったよ」

そこで副担任の朝霧玲奈が一歩前に出た。

ロングの黒髪を揺らし、きりっとした目で教室を見渡す。

「覚えておきなさい。──この課題の評価は“相手の満足度”だけではない。

 プロデュースした側の心拍数や表情のデータも解析されている。

 つまり、自分がどれだけ楽しんでいるかも重要な指標なのです」

ざわっと教室がどよめいた。

「え、自分も点数出るのかよ!?」

「相手を喜ばせればいいって話じゃなかったのか……」

副担任は淡々と続ける。

「相手が楽しむ姿を一緒に喜べるかどうか。それが最高評価への分かれ目です」

騒がしい生徒たちに次は笹本の番だと朝霧は続ける。

「男子プロデュース:舞台観劇。女子満足度90点、男子50点。総合評価B」

あかりが思い出し笑いを浮かべる。

「そういえば駿ちゃん、途中で寝てたよね。やっぱり退屈だったんだね」

駿は頭をかきながら言った。

「悪い……あかりが好きな舞台ってのは分かってたんだけど、俺には良さがイマイチでさ」

「お互い様だね」

「ああ」

二人は照れながら顔を見合わせ、笑った。

クラスに小さな笑いと温かい空気が広がる。

俺はその様子を眺めながら、ふと考える。

(……相手を楽しませるだけじゃなく、自分も楽しむことが大事、か)

(俺たち……できてたっけ?)

胸の奥が、妙にざわついた。

10/3(金)20時に投稿予定です!

第8話 泉プロデュース・お家デート

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