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第6話 S評価ペアとの邂逅

史上二組目のS評価──神谷蓮と朝倉真帆。

 彼らの名前が告げられた瞬間から、クラスの空気は一変していた。

「やっぱすごいよな」

「完全に息合ってたし、もう恋人同士って感じだった」

「トップペア確定だな」

 称賛と羨望の声が次々と上がる。

 昨日“史上初のF評価”を叩き出した俺と泉とは、正反対の扱いだ。

 机に突っ伏しながら、俺はその声を聞き流す。

 泉は相変わらず涼しい顔で、窓の外をぼんやりと眺めていた。

 昼休み。

 弁当を広げようとした俺の前に、影が差した。

「鷹宮、だよな?」

 顔を上げると──神谷蓮が立っていた。

 すらりとした長身に整った顔立ち。

 制服をきっちり着こなした姿は、まさに“モテる男子”の典型。

 その柔らかな笑みは、男女を問わず自然に好かれるのだろう。

 その隣には、朝倉真帆。

 明るい茶色のセミロングの髪が揺れ、大きな瞳が印象的だ。

 泉のすらりとしたモデル体型とは対照的に、朝倉は凹凸のはっきりしたスタイルの良さが際立っていた。

 健康的で華やか──まさに“教室の太陽”のような存在感だった。

「昨日はお疲れさん。いきなり大変だったな」

「……え?」

 意外だった。

 笑われると思っていたのに、神谷の声色には嘲りがなかった。

「俺たちも最初は緊張したんだ。まあ、なんとか形になったけどな」

 神谷は肩をすくめ、照れくさそうに笑った。

朝倉はにこっと笑って続けた。

「でもね──唯人くん」

 さらりと名前呼び。

 ……これが、S評価か。

「覚えていないペアも多かったし、あれはポイント高いよ? 泉さんも嬉しかったと思うよ!」

(いや、こいつが嬉しがるか?)

 心の中で即ツッコミを入れつつも、口から出たのは一言だけだった。

「……ありがとう」

 その会話を聞いていたクラスメイトが口を挟んだ。

「いやいや、S評価様がフォローしてくれるなんて優しいな」

「FとSじゃ天と地ほどの差だけどな」

 嘲るような笑い声が広がる。

 ……せっかく二人の優しい言葉で少し浄化されたのに、あまり刺さないで欲しい。

 神谷と朝倉は苦笑していたが、結局この空気を変えることはできなかった。

 昼休みが終わり、席に戻ると泉がちらりとこちらを見た。

「……仲良くしてもらえてよかったじゃない」

「いや、別に仲良くなったわけじゃ……」

「どうでもいいけど」

 それだけ言い残し、また窓の外に視線を戻す。

 ──どうでもいい、か。

 本当にそう思っているのか、それとも。

 俺は答えを見つけられないまま、午後の授業に身を投げ出した。


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