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第10話 放課後、わずかな距離

──結果発表が終わっても、教室のざわめきは収まらなかった。

「おい、鷹宮! どうやったら白羽で九一点なんて出せんだよ!」

「絶対なんか裏ワザ使ったろ!」

「お家デートの次にこれって……ギャップやばすぎ!」

 男子たちが口々に騒ぎ立てる。

 女子の方からも、ひそひそと声が漏れ聞こえてきた。

「鷹宮くんって意外と……イケてるのかも?」

「いや、あれは白羽さんがチョロかっただけでしょ」

「でも顔赤くしてたのは可愛かったなぁ」

(……居心地わりぃ)

 椅子に座ったまま、俺は頭をかきむしった。

 目立ちたくもないのに、結果のせいで視線が集中してくる。

 当の泉はというと──窓際の席に座り、腕を組んで俯いていた。

「……やる気なかったのに。なんで二位なんか……」

 小さくぼやくその声に、俺は苦笑するしかなかった。

 放課後。

 いつもより妙に視線を浴びながら、俺たちは鞄を肩に掛けて廊下に出た。

 並んで歩くと、廊下の向こうからも「お家デートの二人だ……」なんて声が聞こえる。

(勘弁してくれ……)

 外に出ると、夕焼けに照らされた校門前は赤く染まっていた。

 並んで歩く足音が、妙に大きく響く。

「……で、デートは楽しかったのか?」

 思わず、口にしていた。

 泉は視線を逸らしたまま、しばらく黙っていた。

 だがやがて小さく答える。

「……まあ。猫は可愛かった」

 その瞬間、俺の目には彼女の輪郭に淡い桃色がふっと差すのが見えた。

(……ああ、やっぱり楽しかったんだな)

 心臓が、わずかに跳ねた。

 しばらく沈黙が続いた後、俺は口を開く。

「泉も、もう少し協力してくれると嬉しいんだけど……」

「お断りよ」

 そっけなく返す声。

 だがその輪郭には、ほんのかすかに桃色が残っていた。

 夕焼けの中、二人の影は並んで伸びていた。

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