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大公、出稽古に行く

「ラウル、ヨタロ君。朝ご飯ができたぞい」

 爺の手作り朝ご飯。これもお忍びの楽しみの一つだ。

 幼い頃から爺はよく飯を作ってくれた。


 しかも、味は宮殿の料理人にも負けない。万能すぎるだろ、本当に何者なんだろうこの人は。


「かーっ! うめぇっす! お父さん、小太り食堂よりうめぇっす!」

「なになに、趣味の延長よ。おかわりもあるでな、たんとお食べなさい」

「うっす!」


 気持ちが良いほどにがっつくヨタロの姿をみて、爺が微笑んでいる。


「さて、そろそろ門下生たちが来る頃だな、今日は出稽古に出掛けようと思う」

「お! 面白そう! 俺もついて行っていいっすか?」

「お前さんは怪我人だから、留守番だよ」

「えー」

 

 訓練場でアロンに出稽古に行く旨を伝え、門下生たちに用意をさせる。

 総勢二十名。ぞろぞろと向かうのは、公都の中心街にある公営剣術指南所。


 ここはインガ公国軍の騎士や剣士、加えてインガ公国の予備軍と予備軍補が多く在籍している剣術指南所だ。

 公国の戦力を上げるために、他流の指南所も自由に稽古に参加できるようになっている。


 戦場での戦いを想定したインガ流剣術を指南するここに来たのには理由がある。


 昨日の人斬りたちが使っていたのが、インガ流剣術だったからだ。

 とはいえ、この剣術を使うものは多く、人斬りの犯人を探すのは難しいだろう。


「よし、皆。怪我をしてもここは医務室があるから大丈夫。思いっきり勉強してきなさい」

「「「はい! ラウル師範」」」


 広い訓練場の中央には丸く囲った一対一専用のスペースがあり、大勢が観戦することもできる。

 手練れの騎士が審判であるため、重傷に繋がることが少ないのも良いところだ。


 次々と挑戦する門下生たち。戦績は個々別別いったところだが、剣を握り始めて一、二年の平民がよく頑張っていると褒めるべきだろう。


「ソディア流剣術、アロン。インガ流剣術、コーネル。前へ!」

 審判が手合わせをする二人の名前を呼ぶ。

 いよいよ、ソディア流剣術の優等生、アロンの出番だ。


 上段に構える相手のコーネルに対して、中下段に構えるアロン。

 互いにジリジリとすり足を進め、制空圏がぶつかる。


 先に仕掛けるコーネルに対して、木剣を斜めの角度で受けるアロン。

 コーネルの鋭い縦斬りは軌道を逸らされて地面を叩いた。


 上手い。さすがアロンと言いたいところだが、彼は普段、初手を躱しての反撃を得意とする。

 彼に受けさせるとは、相手も中々の腕前だ。


「チェストォォ」

 アロンの謎の掛け声とともに防御の態勢から繰り出される回転斬り。

 コーネルは、それを地面についた木剣に体重を乗せ防いた。


 一撃目が躱された時に防御と連携させるインガ流剣術の型だ。自然な流れでこの動きができるのは、よく修練している証だ。

 

 二人は間合いを取り、二撃目の準備に入る。

 互いの持てる技でどうやり取りをするかをシミュレーションする。こういった頭脳戦になるのは、実力が拮抗しているからだろう。


 互いに決定打が決まらない状態が続き、遂に時間切れとなった。


「引き分け!」

 審判の判断。我の目から見てもそう見えた。



「ラウル師範、不甲斐なくて申し訳ないです」

 アロンは悔しそうな顔で頭を垂れた。


「いやいや、大したもんだよアロン君。本当に」

 実際アロンの実力は、公国軍でも小隊長くらいにはなれる程だ。

 騎士庁に推進しても良いかも知れないな。その方が彼にとっても実入りが良くなるしな。



 収穫はあった。出稽古に来た甲斐があったというものだ。門下生の皆にとってもいい経験になったであろう。


 指南所へと帰る道、彼らの顔は自信に満ち、清々しい顔をして闊歩していた。

 

 

 この日の夜も、我は夜回りに出かけた。

 ポイントは昨日と同じ、酒場街から貧民街までのエリア。

 

 魔導灯の青い光は今日も道を照らしている。

 クミナス神王国から魔導管を伝って供給される魔導で光を発するこのシステムは、公国の生活インフラだ。


 これも貧民街まで伸ばす必要がありそうだな。

 灯りのない場所には悪が潜みやすいのが世の常である。人斬り事件を解決したら着手するか。


 そんなことを考えていた矢先。

 

「キャァァァァァァ」

 

 酒場街に女の悲鳴が響き渡る。

 駆けつけると父娘らしき二人が四人組に襲われていた。父親は殴られたのだろう、顔が腫れ、口から血を流している


「テ、テスちゃん?」

 これは驚いた。襲われているのは小太り食堂の父娘だった。

 

「ラウルさん、助けて。お父さんが、お父さんが」

「大丈夫、殴られただけだ。死ぬことはない」

 襲われている恐怖で取り乱しているテスの肩を抱き、を落ち着かせると逃げるように指示を出す。


 背格好、剣の構えをから推察するに昨日と同じ四人組だ。

 あとは決定的な証拠を揃えるだけだ。


「貴様は昨日の」

「ああ、今日は逃さないよ。コーネル君」

「な!」


 覆面をしているのになぜ正体が? そう思っただろう。

 驚くのも仕方ないが、我レベルの剣の達人になれば構えを見ただけで人の判別くらいつく。

 そのための出稽古だったのだから。

 そう、人斬りの一人の正体は出稽古でアロンと試合をしたコーネルだったのだ。


 

 

 

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◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄◥

   頑張って更新いたします!

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