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48 一連の結末⑤


「皆に集まってもらったのは、此度の大罪についての調べが終わったからだ。

 そして、元凶であるサイモンとリリアへの処罰が決まった」


 謁見の間に入ると、そこには既に両陛下を始め、宰相や数人の重鎮となる高位貴族の方々、ザイトヘル伯爵に、私の父であるエドワール侯爵まで揃っていた。

 そして、先程の陛下のお言葉だ。

 皆の視線は、一気に陛下に注がれた。


「先ずはサイモンだが。こやつは既に王族から籍を抜いている為、平民として取り調べをおこなった。大概の容疑を認めたが、余に関してだけは、ただ体調を崩して、退位を早めようとしただけだと、頑なに殺人未遂を認めなかったが……」


 そう言って陛下は少し寂しそうな表情をする。


「しかし動機はどうあれ、あの毒草を余に使用した時点で重罪である。また、自分の妻である王太子妃に対し、計画的に堕胎剤を使用して故意に子をなせないようにし、密通相手を娶ろうとした罪もまた重罪」


 陛下がサイモン様の罪をこの場で上げた事で、その場にいた者達は改めて罪の重さを認識し、ざわめきだす。

 しかし、陛下が話を一旦途切らせた事に気付くと、皆は静かになり、次の言葉を待った。


「よって、サイモンは死刑とする。そしてその方法は罪の重さを鑑み、自ら準備した毒草を、毎食時に服用する事を義務付けした上、採掘場送りとする」


 要は、いつ起こるか分からない心臓発作に怯えながら、過酷な労働を強いられる採掘場にて、身体が壊れるまで酷使されるということ。

 いっそ死刑として、一気に殺してくれた方がマシだといえよう。

 その処遇を聞いた皆は、頷く者や、我が子に対する処罰の残酷さに、陛下へ恐れを抱く者など、反応は様々であった。


「次にリリア・ローガストであるが。こちらもすでにローガスト家より、籍を抜かれている為、平民扱いとして取り調べた。生家であるローガスト伯爵家であるが、その家族は全く関与しておらず、また娘の仕出かした事の重大さをしっかりと受け止め、処遇を余に一任するとの申し出があった。その為、ローガスト伯爵家は降爵とし、男爵とすることを決定とする」


 今まで気付かなかったが、謁見の間の隅に、リリアの父であるローガスト伯爵改めて、男爵が控えていた。そして男爵となったリリアの父は、陛下の下命を叩頭礼をしながら、粛々と受け止めていた。


「して、改めて平民となったリリアであるが。この者は甘言と色香で元王太子を惑わし、この一連の罪を誘導し、自分を側妃に、ひいてはその後、王太子妃を貶めて、いずれは自分がその地位の簒奪を計画していたことが取り調べによって明らかとなった。結婚式の時に、階段から突き落とそうとした罪も考慮し、傷害・殺人教唆の罪となった」


 階段の件、忘れられていると思ったら、しっかりと罪に加えられていた。

 少しバツの悪い表情となった私を見て、ヴァルは困ったような表情で微笑んでいる。

 何故かヴァルには、私のした事がバレているようだ。

 その後も陛下の言葉は続く。


「よって、リリアは甘言を囁く喉を焼き、声を失くした上で、これもまた自分たちが用意した、副作用の強い堕胎剤を服用する事を義務付けし、娼館送りとする」


 その決定に、私は息を呑んだ。

 罪人となった者が送られる娼館は、とても劣悪な環境だと聞いたことがある。

 そこに来る客は、女性を玩具扱いしたり、暴力を振るうなど日常茶飯事で、娼婦の命はとても軽く扱われているらしい。そんな所に送られるのなら、いっそ殺してほしいと思うくらいに……

 そんな所に声が出ない上に、妊娠する危険性のないリリアが行けばどうなるか……


 その処罰を聞いた皆は、言葉が出ないようだ。部屋はシーンと静まり、陛下の次の言葉を待つばかり。


「重い処罰だと思うであろうが、これが妥当だといえるほどの事をあの二人はやったのだ。皆もそれを心して受け止めてほしい」


 陛下の言葉に、皆は低頭した。


「また、今回、この二人に加担した者達もまた重罪と見做し、内容に問わず死刑とする」


 という事は、あの茶葉を入れ替えていたメイドや、あの二人のやり取りの手紙を任されていた者など、あの二人に加担した数名、もしくは十数名の者全てが、その判決を受けるということになる。


 それぞれが重い罰となった現実に、誰も言葉が出ない。

 会場内は、陛下の言葉だけが異様に響いていた。

 

「そして、王太子妃シンディであるが……」


 きた。いよいよ、私への処遇が言い渡される。


 「サイモンが廃嫡となった為、その地位は失われる。そして本来であれば廃妃とし、夫の罪を一緒に償ってもらうべきであるが、此度の件に際し、シンディは被害者であり、解決に尽力してくれた為、その限りではない」


 ちらりと父であるエドワール侯爵を見ると、陛下のその言葉にホッと胸を撫で下ろしている。

 詳しい事を知らされていなかったようで、サイモン様が捕まったと聞いて、妻である私も責任を取らされると思ったのだろう。娘の心配はせず、自分たちに火の粉が飛んでこないかとヒヤヒヤしていたようだと、こっそりリック様から報告を受けた時には、ガッカリしたものだ。


 そんな事を考えていた時、次の陛下の言葉に、私は固まってしまった。

 

「そして、此度、シンディは王太子妃の任を解き、とある貴族に下賜する事とする」


 陛下のその言葉に、周りが一気にざわめく。


「何処にだ?」

「聞いていないぞ?」

「誰のところに下賜されるのだ?」


 皆の疑問は、そのまま私の疑問だ。


 私が何処かの貴族に下賜される?

 廃妃で追放ではないの?

 最悪、侯爵家に戻されてから、また何処かの年老いた金持ち貴族に、後妻として父に売られるのではないかなどと、恐れを抱いていたのだけれど……


 あぁ、でも、どちらにしても、もう二度とヴァルに逢えなくなるのは決定なのね……

 

 


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