47 一連の結末④
部屋に戻った私は、一人で先程の事を思い返していた。
今日は色々ありすぎた。
今日の会合で、あの二人を断罪するのに気力を使い果たしていたところに、先程の謁見の間での出来事。
まさか、ヴァルがあのザイトヘル伯爵の息子だったなんて……
そういえば、私はヴァルの事、ほとんど知らない。
何故かいつも私の傍に居てくれて、守ってくれている事に、私はあぐらをかいていただけだ。
こんな私の事、ヴァルはどう思っていたんだろう?
いつでもヴァルは私の傍に居てくれたけれど。
それももうすぐ居なくなる……
そんなことを考え、落ち込んでいると、私付きの三人の侍女がお茶を持って声をかけてきた。
「シンディ様、本日は大変でしたね、お疲れ様でございました」
「わたくし、今でも信じられません! まさか、あの掃除担当のメイドがお茶をすり替えていただなんて!」
「申し訳ございません。知らなかったとはいえ、そんなものを私は毎日シンディ様にお出ししていたのですね……」
ジュリア、イザベル、マリの順にそう言ってきた。特にバーグ先生に止められるまでは、あのハーブティを毎朝淹れてくれていたマリの落ち込みようは半端ない。
「マリ、落ち込まないで。貴女のせいではないわ。悪いのはあのお茶を準備したサイモン様よ。あのメイドはサイモン様の指示ですり替えていたみたいだけれど、何処まで知ってやっていたのかは、これからの取り調べで分かることでしょうし」
結局、調べたところ、茶葉をすり替えていたのは、掃除担当のメイドであった。元は王太子の部屋担当であったそのメイドは、私が嫁いできたタイミングで私の部屋担当に変更していたのだ。
メイド長に確認すると、よく働くからとサイモン様から推薦された為、私の部屋付きに異動させたとか。
何も疑わずにいたら分からなかった事が、ほんの少し調べるだけで全てが繋がってくる。
いくらサイモン様の指示といえ、王太子妃である私に、堕胎剤と知って飲ませるのに協力をしたのであれば、あのメイドも極刑は免れないだろう。
ヴァルの調べでは、侍女三人はなんの関与もしていないとの事だったので、安心したものだった。
少なからず今回の人生において、この三人はとても私に良くしてくれていたから……
「わたくしはもうすぐ王太子妃の任を解かれます。貴方達には、色々と苦労をかけましたね。本当に感謝しています。
あなた方の今後の身の振り方については、悪いようにならないよう、王妃様に頼んでおきますね」
「「「シンディ様……」」」
この三人なら、これから来るであろう新王太子妃のお付きにも推薦できるくらい、優秀だ。悪いようにはされないはず。
そうして三人の侍女たちと、束の間の時間を惜しんでいると、扉がノックされた。
「ヴァルです。戻りました」
そう言ってヴァルが部屋に入ってくる。
「もう、話し合いはいいの?」
私は、話し合いの内容がとても気になったが、態度には出さず、平然と聞いてみた。
「はい。シンディ様、この後、少々お時間を頂けますか? ご説明致します」
「ごめんなさい、ヴァル。色んな事がありすぎて疲れてしまったの。
また今度にしてくれる?」
ヴァルに、この先の別れを告げられることが怖くなり、私はつい、そう返答してしまった。
先延ばしにしても、答えは一緒なのに……
「そうでございますね。配慮が足らず申し訳ございませんでした。では、私は部屋の外で待機しておりますので、どうぞお休みになってください」
ヴァルは、そんな私を優しく受け止めて、そう言ってくれた。
ごめんなさい、ヴァル。
もう少しだけ、私だけの護衛騎士のままで居て。
心の準備が出来たら、ちゃんと貴方の話を受け止めるから……
私はこの日、このまま何も聞かずに眠りについた。
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ヴァルはあれから、何度も私に説明する事を伝えたが、臆病な私はまだ心の準備が出来ずに、ヴァルの話を先延ばしにしていた。
そんなある日、とうとうあの二人の処罰が決定したとの報告を受けた。
改めて私は陛下に呼ばれ、謁見の間へと向かう。もちろんそこにはヴァルも呼ばれていた為、一緒に向かった。
「シンディ様。本日までにご説明出来れば良かったのですが……」
「ごめんなさい、ヴァル。陛下よりあの二人の処遇を聞き、私の事もその時にどう対処されるか言われるでしょう。
ヴァルの話は、その後で聞かせてもらってもいいかしら?」
今日まで先延ばしにしてきた私は、いよいよ腹を括る時が来たようだ。
全ての事に決着が着いたら、ヴァルの事も笑顔で送り出そう。
そう思い、ヴァルの言葉を遮って、そう伝えた。
「……分かりました」
先に伝えたそうにしていたが、私にそう言われて、仕方なく受け止めてくれたようだ。
やや冴えない表情のヴァルを気にしながらも、そのまま私達は謁見の間に入った。




