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45 一連の結末②


「それで、これからあの二人を調べる事となるが、既に先程、アレの部屋から二種類の薬草……いや、毒草が出た。

 それと、リー商会なる手紙も大量にな。中身を精査して、アレを唆した事実が分かれば、あの娘も大罪として裁く事となる。そなたは非合法の薬屋も、既に捕縛していたようだな」


「はい。あのような者を野放しにしていては、この国の害悪にしかならないと感じましたので。今はこの王宮の地下牢にて捕らえております」


 私の言葉に陛下は頷き、王妃様も微笑んだ。


「貴女はとても素晴らしいわ。その判断能力と行動力。そして国を思う気持ちは、王族に必要な力です。だからこそ、今回はとても残念なのです。よりによって、貴女がアレの妃である事が……」


 あ、きた。いよいよ、本題に入る。


「アレの罪は、今後の調べによって沙汰を下すが、既に廃嫡し、王族から追放する事を決定した。ゆえにアレの妃であるそなたをそのままにしておく事は出来んのだ」


「はい……」


 ようやくだ。

 廃妃となり、ここから追放される。


「しかし、今回の立て役者でもあるそなたの処遇について、すぐに決められるものでもない。そなたの事は、アレらの罪が決定した後で、改めてそなたに伝えよう。今まで苦労かけたな。しばらくはゆっくりと休むがよい」


 陛下にそう言われ、私はカーテシーをし、その場から退席しようとした。


 その時、従者が入ってきて陛下に何事か伝えている。


「なんと、ザイトヘル伯爵が!? いや、しかし……うーむ、分かった。入室を許可する」


 え!? ザイトヘル伯爵、ご自分から入室願いを出されたの!?


 そのやり取りを見て、私は驚いた。

 その後、すぐに謁見の間に入って来られる。何故かヴァルを伴って……


「入室を許可して下さり、感謝致します、陛下」


 ザイトヘル伯爵は、仰々しくそう言って、深々と頭を下げる。


「……よい、で、なんだ? 急務だと言うから入室を許可したのだが」


「はい。まずは、この騎士を連れてまいりました。シンディ妃殿下の専用護衛騎士にございます」


「ほう、そなたが?」


 ザイトヘル伯爵の紹介を受け、ヴァルは陛下に騎士の礼をとる。


「国王陛下ならびに王后陛下におかれましては、ご挨拶の機会を賜り、恐悦至極にございます。

 ヴァル・ローレンツと申します」


「うむ、硬くならずとも良い。そなたの働きは、先程シンディより聞いておったところだ。それに、とても良い仲間も持っておるようだな」


 陛下は興味津々にヴァルを見ながら、そう話す。


「そうそう、シンディの今後の処遇を決めた後で、そなたにも褒美を授けたいと考えておったところだ」


「まさに、その事についてお話をさせて頂きたかったのです」


 陛下の言葉に、食い気味にザイトヘル伯爵はそう言った。


「なんだ、ザイトヘル伯爵。いくらそなたでも、この件に口を挟む権利はないぞ」


 不愉快そうに顔を歪めながら陛下はそう言った。


「申し訳ございません。しかし優秀な妃殿下が廃妃されるのであれば、と取り急ぎ参上させて頂いた次第です」


 ザイトヘル伯爵は、陛下の表情に臆することなくそう言った。


 何故ザイトヘル伯爵は、私の今後を気にするのだろう? ザイトヘル伯爵には関係の無い事なのに?

 それに、何故ヴァルはザイトヘル伯爵と共に入ってきたのか……


 色々と疑問に思う中、王妃様が発言した事に、私は目を剥いた。


「廃妃ですって? まぁ、それは案の一つとなりますが、わたくしもシンディの事はとても残念に思っておりますのよ?

 ですから、次の王太子になる者と連れ添わせようかと。幸い、まだサイモンとは何もなかったようですし。そうですわよね? 陛下?」


「王妃よ……まずは次の王太子となる者も決めないといかんだろう。それにその者の意見も聞かんと決めれられるものではない。形だけだったとはいえ、サイモンの妻であったのだからな」


「ちょっとお待ちください、陛下、王妃様。やはり、そのような事を視野に入れておられましたか。

 しかし、それではシンディ妃が余りにもお気の毒。あっちがダメならこっちと、犬の子を交換するみたいな事は、他の貴族の者にも示しがつきますまい」


 ザイトヘル伯爵も参戦し、陛下たちは、恐ろしい事を話している。

 しかし、それは不可能な話なのだ。

 何故なら……


「陛下ならびに王妃様に、お伝えしておかなければならない事がございます」


 私は、色々勝手な事を言い合っている人達の前で、声をあげた。


「わたくしは先程もお伝え致しましたように、副作用の強い堕胎剤を服用させられておりました」


 そう言った私に、王妃様は、「あっ!」と声を上げた。


「そういえばそうであったな。シンディよ、その副作用とはどういったものなのだ?」


 陛下の質問に、近くに立っているヴァルをチラリと見る。

 ヴァルは私の視線に気づき、微笑み返してくれる。

 その表情に、この時ばかりは安心感ではなく、ヴァルの前で次の言葉を言わなければならない事に、少し悲しくなった。


「……その副作用とは、二度と子供が産めない身体となる……というものです」


 その言葉に、両陛下は驚いて息を呑む。


「ですので、わたくしには次の王太子妃となる事は無理でございます」


 これで廃妃は決定。

 女として終わった私は、田舎か何処か、静かな所で大人しく一生を終えればいい。


 そう思いながら目を伏せた。

 その時、ザイトヘル伯爵はまるでそんな事はすでに知っているとばかりに、全く気にしてない様子で淡々と述べた。


「陛下、その件もふまえ、シンディ妃の今後について、是非とも聞いて頂きたい提案があるのです」


 ザイトヘル伯爵の言葉に、私は困惑した。



 


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