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28 ヴァル視点②


 私がシンディ様の騎士として配属された時、ちょうど陛下が崩御された時期であった。

 王宮内はバタバタと目まぐるしく、慣れない私は周りの先輩騎士の後をついてまわりながら、仕事を覚えるのに必死で、シンディ様の事が気に掛かりながらもシンディ様の支えになるには、立場的にまだまだ程遠かった。

 そんな中、王太子が新陛下として即位し、異例の速さでの側妃を娶る話となった。

 シンディ様は毅然とした態度で、粛々と受け入れられており、王妃となった事で更に公務に忙しくされている中、王宮内に少しずつシンディ様への誹謗中傷が囁かれ始めた。

 ようやくシンディ様の近くに配属され、護衛騎士となった私は、誹謗中傷など気にしないシンディ様を尊敬していたし、立場的に妬まれる事はよくある事だと気にもとめてなかった。

 そんなある日、あの事件は起きたのだ。



「シンディ! リリアを階段から突き飛ばしたそうだな! リリアは危うく転げ落ちるところだったのだぞ! それでなくてもリリアのお腹の中には私の子が居るのだ! お前は私の子、ひいては未来の国王になるかもしれぬ子まで危険に晒したのだ! もはや言い逃れは出来んぞ!」


 サイモン国王が、一方的にシンディ様にそう告げていた。

 側妃であるリリア様は国王の後ろで怯える様に隠れながら、シンディ様を見ていた。

 この状況は一体どういう事だ?


「そんな……! 何かの間違いでございます! わたくしはリリア様を階段から突き落とす事などしておりません!」


 そう叫ぶシンディ様の言葉に、周りにいた人達は一切耳を貸さず、嫉妬で側妃に危害を加えたと決めつけてかかっていた。

 あれよあれよという間に、シンディ様は側妃様への殺人未遂容疑として罪を着せられ、離宮送りとなってしまう。

 俺はシンディ様の護衛騎士という立場から一転、シンディ様の監視役として離宮担当となった。

 シンディ様は人を殺めるような人では無い。だが、目撃者がおり、側妃自身もシンディ様に突き飛ばされたと証言している。

 やっていない証拠がない以上、冤罪だと証明する事が出来ない。

 歯がゆい思いをしながらも、俺は離宮の一室で黙々と執務を行なっているシンディ様を見守り続けた。


 離宮で軟禁状態のまま、王妃としての執務のみ行うシンディ様。

 そして、国王に寵愛されながら、日に日に大きくなるお腹を見せつけるように、離宮近くの庭で二人で楽しそうに散歩する側妃。

 この二人の、対照的なまでの立場の違いに、俺は苦々しい思いで見ているだけしか出来なかった。

 離宮にいるシンディ様に執務の書類を届けるのも俺の仕事であった為、日に日に弱っていくシンディ様を目の当たりにしていた。

 しかし、シンディ様は気丈にも俺に弱音を吐こうとせず、粛々と書類の山を受け取る。


「ご苦労さま。貴方もこんな所に配属されてしまって、面白くないでしょう。わたくしの護衛担当になってしまった為に、ごめんなさいね」


 いつも何かと気遣って、一言添えてくれていたシンディ様が、ある日書類を持って来た俺にそう言ってきた。

 その声はいつもより張りがなく、今にも消え入りそうな弱々しさを感じる。

 この方は、この先一生ここで仕事だけさせられるのだろうか。

 この離宮の一室から一歩も外に出る事を許されず、窓から国王と側妃、そしてもうすぐ生まれてくる子供が楽しそうに過ごしている姿を眺めながら。

 以前から側妃は、妊娠しているからと、側妃の仕事まで王妃であるシンディ様に回していたと聞いている。

 多分いつも運んでくる書類仕事の中に、側妃の分まで含まれているのだろう。

 あまりにも都合よく使われているシンディ様に対し、何も出来ない自分が歯がゆくて仕方がない思いでいっぱいだったある日、俺に配置換えの辞令が出た。



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