八話 彼は私に跪きました
八話 彼は私に跪きました
ステーキを焼いて食べさたら、能とエスパーダは大満足。味付けは成功したようだ。これで能へのお返しは終了した。後はエスパーダへのお返しだ。要は緊張してきた。とりあえず食器をかたづけて、テーブルを拭く。
エスパーダはふきんをかわしながら、要に言う。
「ありがとう、要。良いお返しだったわ」
「エスパーダのお返しはまだなんだ」
「え?」
「じゃあ、あの肉は何?」
能が聞いてくる。
「あれは能のお返しだ。晩御飯も兼ねていたが」
「お義姉様が二つもらえると、ズルい」
本気で悔しがっていただが要は能にステーキ以外を渡す気はない。それにこれはエスパーダのためだけに用意した物なのだ。
ふきんを片付けて、プレゼントを持ってテーブルに立つエスパーダの前へ。そして片膝をつけて、跪く。そしてプレゼントを見せた。宝石箱だ。カパッと開けると小さな金の指輪がおさめられていた。
「結婚してほしい、エスパーダ」
要がそう言うとエスパーダは驚いていた。
「お義姉様、返事」
能に促され、エスパーダは指輪と要を交互に見る。
「嬉しい。でも要は良いの? 子供は無理だよ」
「そこにこだわつてるのは母さんだけだ。俺はあの人とは違う」
「そうだよ。生殖が絡まなくたって恋愛は出来る」
能の言ったことは要の言いたいこととは違うが、否定はしない。
「受け取って欲しい。愛の証だ」
エスパーダは宝石箱から小さな指輪を取り出し、左薬指に嵌めた。ピッタリだった。
「ありがとう……最高のお返しよ」
エスパーダは要のサプライズに感激していた。お礼の言葉もやっと言えた風だった。
ヴァレンタインデーの翌日に要はライトハンドとレフトハンドに指輪の作成を頼んだ。素材は金のネックレス。それを溶かしてもらって、指輪を作ってもらったのだ。報酬として要のボーナス分の金額を振り込んでおいた。二人は喜んでいた。「ホワイトデー万歳!」とも言っていた。
「お兄ちゃん、お義姉様、おめでとう。ウエディングドレスは私が作るから。代金よろしくね」
これからも金がかかることが決定した。




