六話 彼は喜んでいました
六話 彼は喜んでいました
チョコを無事に受け取った要。能と同じ様なラッピングだったがホワイトチョコで文字が書いてある。小さすぎて読めないのでスマホで撮って拡大してみるとアルファベットが並んでいた。英語ではない。
要はエスパーダがスペイン語圏の小人族だということを思い出し、翻訳アプリを使った。
『愛してる』と書かれていた。
ストレートな表現に要は照れた。これはエスパーダが書いたのだ。
それにあの格好をわざわざしてくれる労力と熱意は要が好かれている何よりの証拠だ。
「ありがとう。嬉しいよ」
エスパーダは顔だけ出して、笑い返した。
「お兄ちゃん、ホワイトデー期待してるからね」
余計なことを言う。エスパーダも要に期待してる顔をしている。その顔を見て、お菓子を返す選択肢はなくなった。
「分かってる。エスパーダ、期待しててくれ」
「ねえ、お兄ちゃん。私は? 私は?」
「お前、居候してるだろ。家賃と相殺な」
「お義姉様だって……家賃払ってないでしょ?」
確かにエスパーダから家賃をもらってない。
「それはそれだ。妹と恋人は違うんだ。自分で言ってたろ?」
「ノー! 私がいなきゃ、お義姉様のエロ衣装は拝めなかったんだよ! その辺も考慮してくれても良いんじゃないかな?」
確かに能の言うことは一理ある。確かにエスパーダのあの格好はなかなか見られない。その手柄を考慮して、お返しの格を上げたほうが良いかもしれない。
「分かった。うまいもん食わしてやる」
この辺が譲歩できるラインだ。
「肉が良い!」
能が話に乗ってくると、エスパーダが言った。
「じゃあ、ウサギを食べてみない? 能ちゃんもおいしそう派にしてあげるよ」
能は複雑な表情を浮かべていた。