一話 人間の文化を知りました
一話 人間の文化を知りました
能が居候を始めて一ヶ月。要とエスパーダのイチャイチャ度合いは激減し、異文化による衝突もあまり起こらなくなっていた。
能が知らないことは人間が知らないことだと認識してくれて、モメる前にエスパーダが小人族の文化を紹介してくれるようになったからだ。
「そっか。小人は豆を投げないんだね」
「あんまり食べ物は無駄にしないよ。それに小人族は暦もアバウトで節分って言われてもなあって感じかな。一年の終わりと始まりくらいしか気にしないかも」
「そうかいそうかい。じゃあお義姉様はヴァレンタインデーを知らないんだね」
能はわざと「ヴァ」の部分で唇を噛んで発音した。
「何それ、おいしいの?」
「ある意味おいしい日だよ。お兄ちゃんが」
「要が?」
能は頷いた。
「ヴァレンタインデーは女性が好きな人にチョコを贈るという日なんだ。つまりこの家でチョコ貰えるのはお兄ちゃんだけってことだね」
エスパーダは要を見上げ、何やら考えている。
要は貰えたら嬉しいので、彼女の出す答えが気になった。
「私が食べたい」
「最近は自分チョコってのもあるらしいね。でもヴァレンタインデーの本文は好きな人にチョコをあげることだから」
「能は誰かにあげるの?」
「うーん、お兄ちゃんだけかな。こういう場合は義理チョコっていって、手当たり次第安いチョコを配るんだよ。そして一ヶ月後のホワイトデーでリターンを待つのさ」
過分に能の偏見が混じっている。だがエスパーダは納得したようだ。
「私も要にチョコあげてリターンを待つ」
イヤな宣言をされてしまった。