どうやら、騎士さんはお疲れのようです。
どうやら、騎士さんはお疲れのようです。
「ふむふむ……」
書斎にやってきた私は、クリスさんにも手伝ってもらって目当ての本を発見できた。テーブルにそれを数冊置いて、順番に目を通していく。
すると対面に腰かけたクリスさんは、不思議そうに首を傾げた。
「公共福祉改善草案……どうして、貴方がそれを?」
「え、へんですか?」
「変というより、何故、ですね」
「…………ん?」
私の前に広げられているのは、この国の福祉関係の法案についての書物だ。過去から現在にかけるまで、特にこの10年になにがあったのか、ということが纏められている。
私としてはおかしいところなんて、なにもないと思ったのだけど。
クリスさんからしたら、疑問の方が大きいようだった。
「そこに書いてあるのは、貴方が考えた草案です。それをどうして、貴方が改めて読んでいるのですか?」
「あー、なるほど」
それを聞いて、私と彼の認識にズレがあるのに気付く。
なので、私はひとまず手を止めて考えを口にした。
「だって、わたしのかんがえ、ちゃんとつたわっているかわからないから。それに、いまがどうなってるかしりたいので!」
我ながら舌足らずだと思いつつ、必死にそう伝える。
するとクリスさんはしばし考えてから、こうまとめてくれた。
「つまり、過去の自身の思惑と現行法に齟齬がないか。また、それに関して自分なりの意見や考えを再認識しよう、というわけですか?」
「そう! そうです!!」
彼の言葉は、私の考えそのものズバリ。
思わず嬉しくなって、大きな声を上げてしまった。そして、その後になって少しだけ恥ずかしくなる。私は苦笑いをしながら、再び書物へと視線を落とすのだった。
すると、ふいにクリスさんが立ち上がって私の傍にやってくる。
そしてページをめくる手伝いをしながら、こう言った。
「それでは、当時のことを交えながら解説した方が良いでしょう。貴方は眠っていましたが、こちらは当事者でしたので」
ややぶっきら棒なその口調は、しかしとても親切なもので。
私は彼の綺麗な顔を見て答えるのだった。
「はい! ぜひ!!」
そうして、二人での勉強会が始まって……。
◆
……数時間後。
私は一通りの書物に目を通し終えていた。
現行法についての理解も深められたし、課題も見つけることができた。それもこれも、クリスさんが解説をしてくれたからだろう。
彼には感謝しなければならない。
そう思って、向かいの席に戻ったクリスさんを見ると……。
「くりすさん……?」
「…………」
彼は、とても心地よさそうに眠っていた。
自分の腕を枕にして、ちらりと覗く横顔は普段の何倍も幼く見える。
そんなクリスさんの顔を見ていると、やはりどこか面影を感じるのだが、どうにも思い出すことはできなかった。
ただ、とりあえず起こさなければ。
そう思って私が声をかけようとした、その時だった。
「……アリシア、さま……」
「ん……?」
クリスさんが、寝言で私の名前を呼んだのは。
それに思わず言葉が詰まって、声をかけることができなかった。
「まぁ、おつかれなんだよね。きっと」
そして、どこか気が抜けてしまう。
なので私は西日の差し込む窓の外を眺めながら、彼が目を覚ますのを待つのだった。
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