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どうにも、私は愛されているらしいです。

ちょっと早いけど、投稿します。

明日も頑張ります!









 どうにも、私は愛されているらしいです。






「アリシア様のお目覚めを祝ってー!!」

「バンザーイ!」

「バンザーイ!!」




 翌日、屋敷の門の外にはすごい数の人が押し寄せていた。

 部屋の窓から見えるだけでも、数百人以上。いいや、もしかしたらそれ以上の人がいるのかもしれない。私は驚きに何度も瞬きを繰り返して、夢だと思い込もうとした。

 それでも幾度となく聞こえてくる万歳の声に、現実だと理解させられる。



「どうしました? お嬢様」

「え、っとー……いかなきゃ、だめ?」



 衝撃の光景から目を逸らしつつ、私はリアにそう訊ねた。

 すると彼女は、にっこり笑顔でこう答える。




「だめです」




 有無も言わさずに、車椅子で移動させられる私。

 それを押すリアはとても楽しげで、しかしこちらとしては困惑しかないのだ。だって10年前の私といえば、口うるさく提言ばかりするので邪険に扱われていたのだから。

 いきなり『国民の皆様に感謝されています、会いに行きましょう』となっても、信じられないのが本心だった。




「うぅ、おなかいたい」




 結果として、ストレス性の腹痛までやってくる。

 それでも車椅子は止まることなく、ついに玄関の扉前に到着してしまった。




「さぁ、行きますよ。アリシア様?」

「うぅ……うん、わかった」



 しかしながら、ここまできてしまっては覚悟を決めるしかない。

 私はそう思い直して、できる限りの深呼吸を繰り返す。

 二回、三回……五回やって、ようやく整った。




「いこう、リア……!」





 そうして、目の前の扉は開かれたのだ。













 ――その直後に、先ほどの比ではない歓声が沸き上がる。



「す、ごい……」




 私の名前が、一斉に呼ばれていた。

 拍手が起こって、門のところまで行くとよく分かる。私の姿を見て涙を流す人がいて、祈りを捧げる人までいて、そして……。



「どうですか、アリシア様。これが、貴女を慕う人々です」

「………………」




 リアの言葉に、答えることができない。

 感情が溢れ出して、いまにもこぼれてしまいそうだった。



「貴女はずっと、好かれていたのですよ。みんな、アリシア様の味方です」

「みか、た……?」

「……はい!」




 そう語るリア。

 私が答えると彼女も、少し感極まったように声を潤ませる。



「(そう、だったんだ……)」




 10年前の私は、ずっと誰からも相手にされないと思っていた。

 味方なんていなくて、だけど誰かの力にはなりたい。そう願い続けて、無我夢中になって色々な行動を起こした。その結果で嫌な顔をされて、暴言だって吐かれたこともある。

 アーニャに毒を盛られたのも、その報いだと思った。

 嫌われ者には、相応しい最期だって。




「ありしあさまー!」

「……え?」




 そう思っていたけど。

 私はふと、門を挟んだ先の最前列にいる女の子を見つけた。

 そばかすが愛らしくもあるその女の子は、小さな花を手にして手を振っている。リアに目配せをして、その子のところへ近づくと、彼女は目一杯に手を伸ばしてきた。




「おめでとう、ありしあさま!」




 私はその少女から、しっかりと花を受け取って。

 そして、こう答えたのだった。







「うん……ありがとう!」







 前までは、こんな気持ち知らなかった。

 信じることもできなかった。





 だけど、どうやら私はみんなに愛されているらしいです。





 



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