どうにも、私は愛されているらしいです。
ちょっと早いけど、投稿します。
明日も頑張ります!
どうにも、私は愛されているらしいです。
「アリシア様のお目覚めを祝ってー!!」
「バンザーイ!」
「バンザーイ!!」
翌日、屋敷の門の外にはすごい数の人が押し寄せていた。
部屋の窓から見えるだけでも、数百人以上。いいや、もしかしたらそれ以上の人がいるのかもしれない。私は驚きに何度も瞬きを繰り返して、夢だと思い込もうとした。
それでも幾度となく聞こえてくる万歳の声に、現実だと理解させられる。
「どうしました? お嬢様」
「え、っとー……いかなきゃ、だめ?」
衝撃の光景から目を逸らしつつ、私はリアにそう訊ねた。
すると彼女は、にっこり笑顔でこう答える。
「だめです」
有無も言わさずに、車椅子で移動させられる私。
それを押すリアはとても楽しげで、しかしこちらとしては困惑しかないのだ。だって10年前の私といえば、口うるさく提言ばかりするので邪険に扱われていたのだから。
いきなり『国民の皆様に感謝されています、会いに行きましょう』となっても、信じられないのが本心だった。
「うぅ、おなかいたい」
結果として、ストレス性の腹痛までやってくる。
それでも車椅子は止まることなく、ついに玄関の扉前に到着してしまった。
「さぁ、行きますよ。アリシア様?」
「うぅ……うん、わかった」
しかしながら、ここまできてしまっては覚悟を決めるしかない。
私はそう思い直して、できる限りの深呼吸を繰り返す。
二回、三回……五回やって、ようやく整った。
「いこう、リア……!」
そうして、目の前の扉は開かれたのだ。
◆
――その直後に、先ほどの比ではない歓声が沸き上がる。
「す、ごい……」
私の名前が、一斉に呼ばれていた。
拍手が起こって、門のところまで行くとよく分かる。私の姿を見て涙を流す人がいて、祈りを捧げる人までいて、そして……。
「どうですか、アリシア様。これが、貴女を慕う人々です」
「………………」
リアの言葉に、答えることができない。
感情が溢れ出して、いまにもこぼれてしまいそうだった。
「貴女はずっと、好かれていたのですよ。みんな、アリシア様の味方です」
「みか、た……?」
「……はい!」
そう語るリア。
私が答えると彼女も、少し感極まったように声を潤ませる。
「(そう、だったんだ……)」
10年前の私は、ずっと誰からも相手にされないと思っていた。
味方なんていなくて、だけど誰かの力にはなりたい。そう願い続けて、無我夢中になって色々な行動を起こした。その結果で嫌な顔をされて、暴言だって吐かれたこともある。
アーニャに毒を盛られたのも、その報いだと思った。
嫌われ者には、相応しい最期だって。
「ありしあさまー!」
「……え?」
そう思っていたけど。
私はふと、門を挟んだ先の最前列にいる女の子を見つけた。
そばかすが愛らしくもあるその女の子は、小さな花を手にして手を振っている。リアに目配せをして、その子のところへ近づくと、彼女は目一杯に手を伸ばしてきた。
「おめでとう、ありしあさま!」
私はその少女から、しっかりと花を受け取って。
そして、こう答えたのだった。
「うん……ありがとう!」
前までは、こんな気持ち知らなかった。
信じることもできなかった。
だけど、どうやら私はみんなに愛されているらしいです。