これから、リハビリが始まるようです。
これから、リハビリが始まるようです。
国王陛下の御見舞いから数日して、私の本格的なリハビリが始まった。
基本的には治癒術師の人たちが回復魔法をかけるのだが、根本となる筋力がないと効果は薄いらしい。だから最初は強めのマッサージから始めて、次に物を握る練習。
そんな毎日を続けていると、日々はあっという間に過ぎ去って春になる。
その頃にはリハビリの甲斐もあって、私は車椅子に乗って出かけられるようになっていた。もちろん隣には必ずリアがいて、彼女が車椅子を押してくれる。
「どうですか、お嬢様? 中庭の花が、今年も咲きました」
「あら、ほんとね。……きれい」
彼女の言葉に対して、必死ながらも舌足らずに応える私。
穏やかな日差しに照らされて、今日も一日が平和に流れていた。そうしていると、ふいに視界の端に誰かが見えた気がする。
首を傾げてその方向に目を向けると、そこにいたのは先日の男性騎士だ。
短い金の髪に、蒼の瞳。凛とした顔立ちをした青年は、真っすぐに前を見て屋敷の中へと向かって歩いていく。
「どうされました、お嬢様?」
「いまの、ひとは?」
「え? あぁ、クリスさんのことですか」
どこか気になると思いながら、リアに訊ねた。
すると返ってきたのは、その男性の名前。そして、こう言った。
「うふふ。お嬢様は、彼に感謝しないといけませんね」
なにか含みのある言い方をするリア。
彼女の少し意地悪なところが出ているように思い、頬を膨らせて抗議した。するとリアは軽く謝罪をしながら、このように説明してくれる。
「クリスさん、なのですよ。お嬢様の無実を証明して下さったのは」
「え……?」
その話を聞いて私は首を傾げた。
どうしてだろう。どうして、あの男性は私のことを助けてくれたのか、と。
しかしリアの様子を見ていると、クリスさんが私にしてくれたことは一つではない、という様子だった。しばし待つと、彼女は私に話してくれる。
「たしかクリスさんは、貧困街出身で初の騎士様、でしたね」
「すごい、のね……?」
それは、本当にすごいことだった。
私が16歳の頃、国民に平等な教育の機会が与えられるよう動いていたけど。貧困街出身者が騎士になるなんて、当時ではまず考えられない快挙だった。
そう思っているとまた、リアはくすくすと口元を隠して笑う。
「…………ん?」
その理由が分からない。
なので、どうして笑うのかを視線で訊ねてみた。
するとリアは、ゆっくりと車椅子を押しながらこう言う。
「すべてお嬢様のしてきたこと、ですよ? 私だって、お嬢様の働きかけがあったからこそ、王都立学園に入学することができたのです」
「あなた、が……?」
「はい、そうです。だから私、お嬢様のことが大好きです」
恥ずかしげもなく語る彼女の言葉に、こっちが恥ずかしくなった。
そう思っていると、話はクリスさんのことに戻る。
「きっと、それはクリスさんも同じですよ」
……と、リアはそう語った。
私が10年前に提言したから、色々なことが変わった、と。
だから多くの人が私の目覚めを待っていて、喜んでくれたのだ、と。
「あり、がとう……」
そう聞いて、私は胸が温かくなるのを感じた。
みんなの笑顔がとにかく、嬉しくて仕方なかったんだ。
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