どうやら、第二王子は追放されていたようです。
思ったより長くなるかも……。
どうやら、第二王子は追放されていたようです。
国王陛下は、とても苦しそうに話して下さった。
彼曰く、最初はミハエル王子の言う通り、私が裏で悪事を働いていると思っていたらしい。例えば王都立学園に通う平民出身の学生に対し、私が身分差を嘲るようなイジメを行っていたとか。その他には国庫の金貨を盗み出し、街で豪遊をしていたとか。
おそらくはアーニャの入れ知恵だろう、とのことだった。
「しかし話を聞くところ、キミはむしろ貧困街の衛生問題や公共の福祉について、積極的にミハエルに提言していたそうではないか。ミハエルはすべて自身の手柄にしていたが、そのことが発覚するのを恐れていたようだ」
なるほど、と思う。
あの時――私にとっては数日前だけど――に突然、彼から婚約破棄を言い渡されたのは、そういうことだったのか。おそらく、すでにアーニャが何かを吹き込んでおり、二人で私を陥れる算段だったのだろう。そして、最後の最後に私が消えれば完全犯罪だった、と。
「へい、か……?」
「あぁ、なんだい。アリシアさん」
そこでふと、私は気になったことを訊ねた。
「ふた、りは……そのあと?」
それは、追放されたといえど。
親友だと思っていた少女、そして婚約者だった王子のその後だった。
私は騙されていたとはいえど、二人にはどうしても思うところがある。だから国王陛下ならきっと、彼らのその後について知っていると考えたのだ。
すると、陛下はその意図を汲んでこう応えてくれる。
「あぁ、二人とも国外追放になったが。少なくとも、生きてはいるそうだ」
「……そ、うですか」
申し訳なさそうな国王陛下。
そんな彼に対して、私は自然とこんな言葉を向けていた。
「よか、った……」
それは、二人が国外追放になったことではない。
素直に『生きていること』への喜び、という方が近かった。仮に自分に害を及ぼした相手だとしても、殺そうとした相手でも、命が尊いことに変わりはないのだから。
そして陛下は、やはり聡明な方だった。
「あぁ……あぁ、キミは本当に優しいな……」
私の言葉の意味を悟ったのだと思う。
何度も、何度もそう繰り返して、大粒の涙を流していた。
それはきっと、今までずっと罪の意識を感じ続けていたから。国王陛下は自分のことのように、ミハエル第二王子の罪を背負って過ごしてきたのだ、と分かった。
「ありがとう。本当に、すまなかった……!」
陛下はそう言って、優しく私の手を握っている。
そんな時だった。
「陛下、そろそろお時間です」
「……そう、か」
一人の騎士が、そう口にしたのは。
私はふと、その騎士を見て思うことがあった。
「あ、れ……?」
いまの騎士の方のこと、私は知っている。
ただ、それがどこでの記憶なのか、すぐには結び付かなかった。