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どうやら、問題は山積みのようです。

じ、十数話で片付くかな……。

末永くお付き合いください……!


応援よろしくお願いします!









 どうやら、問題は山積みのようです。





 そう思ったのは、ライネル様からの課題について考えていた時だった。

 国民全員の医療費をまかないながら、財政難にならない方法。それはどう考えても、均等に成り立つものではないように思えた。天秤だとすれば、必ずどちらか一方に偏るような。

 そんなわけで、私は今日も書斎にこもって勉強に勤しんでいた。



「うーん……?」



 だけど、過去の草案を漁ってみても妙案は浮かんでこない。

 それもそのはずだ。貧困街の福祉については、どれも国庫の財源を削って絞り出しているのだから。しかしそういった公共事業については、まだ余裕があるからできた話。

 そうなってくると、答えは過去の中にはないような気がした。




「今日も難しそうな顔をしていますね。アリシア様」

「え、あ……クリスさん」




 そんな折に、書斎へ顔を出したのは騎士さん。

 彼は相も変わらず淡々とした口調で、表情も特に変えず会釈した。



「何やら、ライネル様から課題を仰せつかったとか」

「……いいえ。これは、私が勝手に悩んでいるだけだから」



 そして、こちらの読んでいる書物を覗き込んでくる。

 私はそんな彼の言葉に苦笑しながら、そう答えた。するとクリスさんは、首を左右に振って言うのだ。




「そのように、抱え込まないでください」

「……え?」

「アリシア様は、自分だけで考え込みすぎだと思います」




 それは少し意外な言葉で。

 私は思わず黙って、彼の言葉の続きに耳を傾けた。




「私の生まれ育った貧困街では、誰もが協力して生活をしていました。余裕がある者が余裕のない者に手を差し伸べ、時には争いましたが、一致団結して生活していたのです」

「一致団結……?」

「えぇ、そうです」




 …………あれ?

 私はそのクリスさんの話を聞いて、どこか引っ掛かりを覚えた。

 いいや、それだけではない。彼の私に対する姿勢というか、そもそも現在の状況とか、そのあたりが妙に噛み合っているように感じた。

 どういうことだろう。

 それを考えて、私はしばし黙り込む。




「……あの、アリシア様?」

「………………」

「………………」




 そうして、沈黙が続くこと数分。









「あぁ、そうだわ! これなら、解決できる!!」








 私はそう声を上げて、クリスさんの手を取った。

 彼は驚いて顔を赤らめていたが、そんなことは関係ない。




「クリスさん、貴方のお陰よ! 本当にありがとう!!」

「ど、どういたしまして……?」





 こちらの言葉に、彼は確実に困惑していた。

 だけど、それを気にしているほど私は冷静ではない。




 この時ほどの高揚感。

 10年前だって、経験したことがなかったのだから。




 


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