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「なんで思い通りにいかないのよ!ゲームのイベントの通りにしてるって言うのに意味わかんないっ!
そもそもサポートキャラのマーリンがなんでヒロインである私に情報渡さないわけ?!この世界バグだらけって可笑しくない?!!」
人気のない通路に響き渡る甲高いその声の持ち主は、嫌に甘ったるい香りを放ちながらイライラとしていた。
その人物はこの国の第二王子でありリーリアのお菓子仲間である彼や将来有望な高位子息達にしつこくまとわり付きお菓子らしい物体を無理やり押し付けている子である。
彼女は自らのことをヒロインと呼ぶ。
曰く、この世界とは全く違う文明の発達した世界で暮らしていた人間だったとか。
この世界はなんと前の…前世の己がやっていた乙女ゲームの世界で、自分はヒロインなのだとか。
けれど、ゲームのようにステータス画面は出てこないし。
覚えている限りのイベントをこなしても攻略対象の好感度はあまり上がっている気がしない。
ゲームのサポートキャラであったマーリンはこちらとの接触を拒んでいるのか全く会うことが出来ず、有用な情報もアイテムを取得することができず彼女は苛立っていた。
特に本命である第二王子の彼が全くと言っていいほど振り向いてくれないのだ。
彼はゲームの中ではメインキャラクターであり、攻略も1番難しかった。
けれど、1度でも彼の心を開くこと後出来ればそれこそお菓子のようにドロドロに甘く溺愛される未来が待っているのだ!
推しに溺愛される未来…なんて甘美で心地よい事だろう。
だからこそ!絶対に攻略したい!!
…が、現状全くもって脈ナシである。
寧ろ嫌われている気がする。
それは日頃の行いの所為であることにちっとも彼女は気づいていないが…。
「そういえばマーリンといえばなーんか足りない気がするんだよねぇ …バグの原因はそれ?なんだったっけ?確か…黒い」
ふと窓の外に視線をやれば、丁度木々の間に黒猫の姿を見つけた。
「うわ、学園内に猫なんているの?私猫きら、い…ん?猫?思い出した!!そうだよ!ゲームのマーリンの傍には何故かいつも黒猫がいたじゃんっ!もしかしてあれがそうなのかな?そうかも。そうだよね!なら捕まえなくちゃっ!!」
勢い任せに猫の姿を追って中庭に飛び出すも、既にそこに猫の姿はなく。
「は?あいつどこ行ったのよ!!私が態々来てあげたんだからその場で待ってるのが普通でしょ?!だから猫は嫌いなのよ!…ん?この声…王子の声だっ!うそ、どこにいるの?!」
一瞬で猫の存在を忘れ去った彼女は声のする方へとかけて行った。
すると、そこには愛しの王子様が!!
しかし、そこにいた彼はいつもの美しい彫像のような冷たくも美しい顏を綻ばせて笑ってた。
あまりの美しさにホゥ…と息が盛れる。
どれほどの時間、眺めていたのか。
彼のそばに何かいることに気付いた。
彼の視線の先には…先程見かけた黒猫の姿。
彼は猫になにか語りかけると、手に持っていた菓子をそっと差し出していた。
猫はそれは嬉しそうに彼の持つ菓子にかじりつくと夢中になって食べだした。
そんな姿を彼は愛おしいものを見るようにじっと見つめているのだ。
ジワジワと怒りが湧いてきた。
まさか、まさか…!
「嘘でしょ?まさか…私があげたお菓子猫の餌になってたの?!通りで王子が私になびかないわけだわ!!あの猫!許せないっ!!絶対に始末してやる!!」
そう言って彼女は鼻息荒くその場をあとにした。