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夢見る作家と太宰日誌帳  作者: 渡晴
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プロローグ

 _芥川賞受賞おめでとうございます_


 _ありがとうございます_


 テレビの画面を凝視しているのは、埼玉県立秩父北高校の古典部学生だ。

 左から順に、斎藤空。高校2年。

 渡部幸太郎。高校1年。

 七海香菜。高校2年。

 古典部にはもう一人いる。

 彼の名は、


 _太宰修先生は現役高校生作家なんですよね_


 太宰修。

 修は芥川賞に応募して見事受賞した。受賞したときは暫く放心状態が続いていた。


 _はい、そうです_


 修は授賞式のインタビューは顔を隠してすると決めたため、修の身近にいる人しか分からないだろう。顔を世間に晒したら、学校で注目を浴びると思ったから修は、そう判断した。


 _太宰修先生は元々ネット小説家だったんですよね_


 _まあ、はい。でも今も投稿していますけどね_


 _そうだったのですね。では最後に読者の人たちに一言お願いします_


 予めに考えてきたのか修は、迷わずに言葉を発する。


 _はい分かりました。僕が今回執筆した作品は、僕と同じ年代くらいでも楽しめると思いますし、成人した人たちにもおすすめできるような物語です。....過去の輝き。明日の希望。をテーマにして描きました。明日に不安がある人や、明日に希望しかない人、その両方にスポットを当てた少し変わっている作品だと思います。ぜひ書店で手に取ってほしいです_


 _太宰修先生、ありがとうございました_


 _ありがとうございました_


 カメラは修の足元しか映していないが、修は深く礼をしているのだと、ここにいる古典部員は思った。


 「すげえな、太宰先輩」


 体格は学年一レベルなのに、何故か古典部に入った渡部幸太郎はそう修を評価した。


 「ああ、あの冷静さは修らしいな」


 メガネ男の斎藤空は、メガネをくいっと上げながら言った。


 「太宰君は文学の天才ですもん」


 銀髪ショートの七海香菜は修執筆した小説は全て読んでいるという、太宰修の熱血読者の一人である。実は香菜は修の小説は、修がネットに小説を上げていた時から読んでいた。そのことは、まだ修は知らない。


 「それにしても修は何で今日に知らせたんだ?もっと前から言えばよかったのに」


 「公表したら駄目ですもん」


 香菜は本のことなら、何でも知っているかと思うくらい詳しい。


 「へえー。色々と大変そうだな太宰先輩」


 「渡部君の言う通りです。ですが、太宰君はこれからもっと忙しくなるでしょう。私たちは太宰君の迷惑にならないようにしましょう。それと学校に太宰君が芥川賞を受賞したことは、絶対に隠しましょう。......特に渡部君、あなたが一番口が軽そうなので気をつけてくださいね」


 幸太郎に細い目で視線を送る香菜。 


 「それにしても驚きだな。まさかあの修が芥川賞というビッグタイトルを受賞したなんて......」


 ここにいる中では一番修と関係が深い空は、まだ実感が湧いてこない。修とは小学校から一緒に過ごすことが多かった空は、手に届かにところに修は行ってしまうのだろうと心の中で思っている。


 「斉藤君。プロレスみたいに「ビッグタイトル」と言わないでください」


 空は香菜から指摘をされた。


 「あっ、はい。すいません」


 「「......」」


 古典部の教室の中は、静寂に包まれた。


  ***


 夜の8時過ぎに修は、帰路についた。家から一番近い最寄りの駅を出て、長い一本道が続く。その道路に沿って歩く。

 3月の下旬だがここは秩父のため、一枚何かを羽織ないと体が冷える。

 修はコートを着て、コートに付いているポケットに手を突っ込んで歩いている。


(夢みたいな一日だったな)


 修は声に出しそうな感じでそう囁いた。

 帰路はなんとも静かだった。まだ8時なのに店はしまっているところが多く、街灯だけが目立っていた。

 駅から10分くらい歩いたら、修は家に着いた。

 修の家は築40年の木造建築のため、ガラガラ式のドアだ。修はドアを横に引いた。


 「ただいま」


 玄関に最初に顔を出したのは、修の母親だった。


 「おかえり修。東京遠かったでしょ」


 「遠かったけど、乗り換えは1回で済んだから楽だったよ」


 埼玉県は東京の隣だが、秩父市からは東京はかなり遠い。


 「なら良かったわ。....じゃあ今から夕飯準備するから、部屋で着替えてきなさい」


 「ああ、分かった」


 修は自分の部屋がある2階へと登っていく。築がかなり経っているため、階段を踏むとギシッと軋む音がする。部屋の中に入り、まずリュックを置いた。そして、母親から言われた通りに、部屋着に着替えた。


 (......よし、今日も書くか)


 夕飯まで少し時間があると思った修は「日誌帳」を手に取った。そして、昨日放り投げていたペンを取り、毎日の日課である日記を書くことにした。


 ____


 「日誌帳」


 僕にとって今日は、特別な日だった。

 まさか僕なんかが芥川賞を受賞してしまうなんて......。

 きっと死ぬまでこのことは忘れないだろう。

 そう、僕は念願の作家デビューした。

 でも、スタート地点に立っただけだ。

 僕の夢は全国の人に認められる物語を描くことだ。

 その第一歩を踏んだだけに過ぎないのだ。

 やっと僕のプロローグが来たのだ。

  

はじめまして渡晴と申します。「太宰日誌帳」という作品を最高な物語にしていきます。

ブックマーク等、よろしくお願いします。

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