新しい始まり
携帯のアラームが鳴り響く。そして、カーテンから射し込む日光で私は起きた。
「さっきのは夢か?」
寝ぼけてる私は鳴っているアラームを止め身体起こした。
すると、「ご飯出来たよ」という声が聞こえてきた。同時にいい匂いもして私は急いで身支度を整え、匂いのする居間へ向かった。
居間に来ると2人の女性が作った料理を運んでいる。
「母さん」と「姉さん」だ。
「おはよう、母さん、姉さん」
「おはよう 大地」「…」
テーブルに座り朝食を食べた。
今日の朝食はベーコンエッグのようだ。
「あれ?蒼空は?」
「蒼空なら部活の何かで早めに行ったわよ」
「そうなんだ、アイツ野球頑張ってるんだな…」
ベーコンエッグを食べながら言った。
「どっかの誰かさんは、すぐ辞めたけど蒼空なんかエースだもんね~どっかの誰かさんと違いすごいよね」
いつも野球の話題が出ると姉さんは、煽ってくる。声には、出さないがやめて欲しいと常々思っている。
その姉さんは、今練習しているヴァイオリンの曲を聴きリズムを取りながら、弁当箱に料理を詰め言っている。何個の事を同時にやっているんだ?数えてみると4つだった。
「器用だな」
と思った。
そして、蒼空をすごいと言っているが一番すごいのは姉さんの方だ。
クラシックの曲を聴く機会があってそれから姉さんがヴァイオリンを趣味で始めて、半年ぐらいしか練習してないのに学校で一番上手くなっている。今、通っている学校にもヴァイオリンをしている人がいるのにだ。たまに、演奏の練習を聴く時があるが、どの曲も凄い綺麗だ。
ただ、充分上手いはずだが
本人曰く
「曲の通りに弾いてるだけ」
これが才能ある者の言葉か…
「どうせ私には姉さんや蒼空みたいに活躍出来ないんだ。」
心の中で思った。
まぁ否定はしない、
すごいのは蒼空もだから
蒼空とは、父さんに連れられ一緒の時期に野球を始めた。
私は人並みほど出来たがそれまでだった。蒼空の方は、小学生の時から、すぐに頭角を現していった。蒼空は、すぐにレギュラーになったが、私は補欠だ。蒼空は、すぐに野球が上手くなったが私は…
数年後、父さんと母さんが離婚して、父さんが出ていった。
私は、同じ頃に野球を辞めた。
野球を辞めた理由を父さんのせいにするためだ。そうすれば蒼空と比べられる前に辞められると思ったからだ。
蒼空には、凄い言われた。
「なんで、辞めちゃうの?どうして?」
蒼空とはそれ以来仲がいいとは言えない。
蒼空は、野球を続け今では、
エースだ。
それからというもの、何か溝のようなものも感じている。
勉学においても私は姉さんと蒼空に比べられていった。
2人は100点を普通に取っていくが私はできて60点前半ぐらいだ。
母さんには
「なんでお姉ちゃんと弟は出来てるのに大地は出来ないの?」とぶたれた事もある。
先生からは
「お前の姉はヴァイオリンと勉強がすごくて弟は野球と勉強がすごいのに真ん中の君はな…」と罵られた。
周りからは
「これ、お前のお姉さんに渡しておいて」
「これ、弟君に…」
「お前みたいな平凡が俺達の役に立てるんだからありがたく思え!」
よく姉さんと蒼空への手紙やらプレゼントを渡してくれと頼まれる始末
それからだろう、私があの2人から距離を置いたのは、
憧れか、妬みか、それとも別の何かか…
そんな事を思っていると
「はい、喧嘩しないで急いでご飯食べる、今日から新しい中学生や外部生が入って来るんでしょ?」
母さんに声を掛けられ
「ハッ」と気がついた。
そういえば、今日から高校1年か、同じ学校だから実感ないな。
今、通っている学校は中学から大学まで通える一貫校のためエスカレーターなのだ。
中学から大学まで通えるのは特殊だと思うが気にする必要はない。
私は、時計を見て少し急いだ。
「じゃあ、行ってくる、母さんも仕事」
「はい、弁当忘れてる」
姉さんに渡された
危ない、飯を忘れるところだった。
軽いお礼言い、玄関の扉を開け学校へ向かった 。
「行ってらっしゃい」
母さんの声が玄関の奥から聞こえた
姉さんは、重そうなヴァイオリンを担ぎながら
私は、自分の荷物だけを持ちながら