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第1話

 西暦一六〇〇年、美濃の国。

 関ヶ原と呼ばれた地で、毛利輝元を盟主とした西軍と、徳川家康を中心とした東軍による、天下分け目の大決戦が始まろうとしていた。

 

 この国の新たな覇者と未来を決める、歴史を動かした大事件。この合戦が起きていれば、後世の歴史書にはそう記されていたに違いない。


「が、実際はそうはならなかった訳じゃ。戦いの火蓋が斬って落とされんとした、まさにその時!」


 鬼束の名調子が、がらんとした教室に響き渡る。


「突如戦場の上空に、全長数キロにも及ぶ大穴が開いた。後に〈逢魔ヶ洞(おうまがほら)〉と呼ばれる巨大なワームホールより襲来したのが、このわしと、わしの率いる魔王軍だったのじゃ」


 予想外の、しかも人知を超えた怪物たちの攻撃で、その場にいた有力大名と配下の武将たちの大半が討ち死にすることとなる。


 異世界の侵略者たちによる、新たなる混沌の時代の幕開け。

 天下統一の機運が再び高まるのは、〈関ヶ原の災厄〉からおよそ百年後。後の〈風魔幕府〉の創始者である、風魔小太郎の登場を待たなくてはならなかった――。


「こりゃっ!」

「あたっ⁉」


 鬼束が投げたチョークが、カン、という乾いた音を立てて壱号の額に命中した。


「わしの授業を居眠りとは、いい度胸しておるのう」

「す、すまん」

「すまん、ではないじゃろ?」

「あ、えーと。す、すいませんでした」

「やれやれ……」


 壱号が茜や鬼束と出会った日から、ちょうど一週間が経とうとしていた。長き眠りより目覚めた魔導人形は、現代社会に溶け込むための猛特訓中であった。


 今受けている日本史の授業も、その一環である。鬼束は『異世界の魔王』本人であるわけだし、歴史の当事者から直接話を聞けるというのは、とてつもなく貴重な経験ではある。


 記憶を失っているとはいえ、壱号の学習能力に問題はない。が、短期間で色んな知識を詰め込なくてはならないのは、中々にしんどいものがあった。


「頑張って、壱号君。あともう少しだよ」


 付き添い役の茜が、隣の席から声をかける。

「ああ。早く授業終わんないかな。ふぁーあ……」

「……もう慣れたけど、壱号君って本当人間みたいだね」


 壱号の大あくびを見て、茜は楽しそうに微笑んだ。


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