表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/46

#004:迷惑だな!(あるいは、滞り進行/いま正に構築されし世界)


「わ、わかりましたね今のでッ!? これ以上まだ狼藉を働くのでしたら、この『熱線』をいま以上に一点に放ち続けることで貫通せしめることだって出来るんですからね私はッ!!」


 熱による激痛で、足元に無尽蔵げに展開するピンク雲の上をのたうち回らされることになった俺は、これ、夢じゃねえな……でも現実味もほとほと無えっつうのはどういうことなんだよ一体……みたいな思いを浮かばせながら、謎の熱線がたっぷり2秒は照射させられた喉元を必死で擦る。


 こいつぁガチだ。信じたくはねえがガチだよちくしょう……目の前のか弱い女然とした奴は、目から、熱線を、放つ。超能力か、何らかの装置によるものかは分からねえ。だがとにかく、目の前の、女は、目から、熱線を、放つ。


 にわかには理解しがたいことを、それでも生存本能と協議して何とか大脳らへんに理解させ、肝に銘じさせる。ひとまずは、反抗的な態度は禁物だ。従順であるということを、明確に示さないといかん。右鎖骨付近、着ていた「令和」と大書されたお気に入りの黄色いTシャツにはどこにも穴ひとつ開いてはなかったが、その下の皮膚は……と、酷く凄惨に水ぶくれとかになってんだろうな……と未だひりつくその箇所を襟元から覗き込んでみる。が、


「……!?」


 不思議なことに無傷だった。じゃああの衝撃とか、焦げ臭は何だったんだ……? やっぱりこれは「夢」か? それとも「全能」とかいう摩訶不思議なパワーとでもいうのか? と、


「……ようやく理解されたようですね。そうです、いま貴方は全能なる神の御前にいるのです……言動行動には充分注意なさりますように……」


 上位に立ったと認めた途端、その猫耳女は丁寧ながらも尊大な態度を取り始めてきやがったわけで。むかついてまたその素っ首を締め上げたくなったものの、何とかなけなしの学習能力をもってしてそれを押し留める。「一点集中」とか言ってた奴を喰らったら、まじでただでは済まなさそうだったし。深呼吸して、俺は切り出していく。


「……わかったよ。いきなりまるごとは無理かも知れねえが、うまく咀嚼して呑み込むことにするぜ。あんたは『神』。ってことで話を進めるでいいんだよな?」


 精一杯の俺の譲歩にも、そう……でも「あんた」じゃなくて「ネコル様」と呼ぶのです……、みたいなまたも逆鱗を撫でられるかのような余裕げな口調で言われたが、渾身の平常心を発揮して表面上は穏やかに進行をすることに俺は専心する。


「……俺は死んで、甦った。だが、甦る場所はさっきまでいたとこじゃない。『何とか』っつー異なる世界に飛ばされた、いや飛ばされるってわけか? そんでもってそこで何らかを成し遂げろっつー……そんな話でいいのか? ざっくりまとめると」


 いきなり御しやすくなった俺の様子を見て、そうですそうですっ、と途端に上機嫌になった猫耳女……「ネコル様」はそう顔を輝かせて頷きを連発するが。くそっ……何つうかこの顔は、俺の好みど真ん中だな……間違った「猫耳」さえなければ、相当俺の琴線を揺さぶってきやがる佇まいだ。そしてその下の薄地のセーラーの下で、身体を動かすたびに無軌道に弾み跳ねまわる双球……くそ、そいつも俺の嗜好を絡めとらんばかりの逸品と来てやがるが、その無秩序な運動……まさか、その下、着けてねえとか? き、気になって話に集中できねえぞ……野郎、それも仕組まれているのかもしれねえが。


「『世界を救う』ってゆー……かなり浮世離れした言葉(ワード)が聞き取れたような気がしたが」


 何とか己を平常心に引きずり戻す。頭の出来があまりよろしくない俺は、ひとつひとつ段階を踏まないと物事の理解ってやつがおぼつかねえ。というわけで、手探りで順序だてて質問していくことにする。……だが、そんな俺の殊勝な努力をも、嘲笑うかのような突拍子もない言葉だと改めて思ってしまうわけで。言っててまたこっちが恥ずかしくなるっつうの。しかし、猫耳女のしたり顔での返答は本当にこちらの思考を読んでるかくらいのレベルの速度で返ってくる。


「……おっしゃる通りですにゃん♪ あなたはその宿りし『資質』を最大限に利用して、その『世界』に災厄をもたらす邪悪な存在を討ち滅ぼすのですわっ」


 思い出したかのようなその語尾に脱力しつつも、まあ、どんどん正気から遠ざかっていくかのような言葉をぼんぼこ投げつけてくるな……こいつ、ほんと手の込んだサイコパスだったらほんと許さねえぞ……と湧き上がる激情をなんとか宥めながら、その「資質」っていうのは何なんですかい? みたいな、こちらもままならない語尾を繰り出してしまうのだが。


「ええ、先ほどから申し上げていますが、『ケレン味』ということになります。諸々色々な『ルール』がある世界ではあるのですが、それらを根本から凌駕する、してしまうのがその『ケレン味』ということなのです……だにゃん♪」


 うーんうーん、俺がアホだからか? 言っている意味が毛ほども分からんのだ↑が→。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ