表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とある研究所での一幕

とある研究所での一幕3

作者: 土井留ポウ

私は受話器を取るとプッシュボタンを押した。

プルル……プルル……プルル……

「へい!こちら到雲楼です!出前迅速!仕事は丁寧!サービス満点!お届けですか!」

「うん。頼む」

「何をお持ち致しましょう!」

「そうだな。まず担々麺大盛り。それに半ライス。あと唐揚げだな。唐揚げを五個。まだあるぞ。餃子だ、餃子。餃子は六個。それに杏仁豆腐も頼む。あと担々麺は辛くしてくれよ、頼むぞ。以上だ」

「へい!承知しました!」

「何分掛かる?」

「三十分あればお伺いできますよ!」

「分かった。急いでくれよ」

「へい!」

私は受話器を置いた。

「本当、この世は極楽だな。羨ましい限りだ」

博士が頬杖をついて目を細めて私を見上げた。

「食べたいものを食べたいだけ食べるんだな」

博士はそう言って腕を組み、天井を仰いで首を振った。

私は席に戻ってスマートフォンを横に向けてゲームアプリを開き、デイリークエストに勤しんだ。

「おや?空が曇ってきたな…」

博士は窓を向いて呟いた。

瞬く間に大雨が降り始めた。強烈な雨だ。外で大きな衝突音が聞こえた。大雨の音に交じって悲鳴がこだました。

「何だ。外が騒がしいぞ」

博士が立ち上がり窓の外を見下ろした。

「事故か。雨でスリップしたんだな。あ。まただ。大変だなこれは」

すると、建物が大きく揺れた。

「地震か?うわ!危ねえ!」

窓の外を戦闘機が通り過ぎた。建物のすぐ真上だ。窓ガラスがびりびりと震えている。

「ソニックブームだ!」

遠くのビルが火に包まれている。何か首の長い巨大な生物が向こうで暴れ回っていた。

「ゴジラだ!」

『地球市民に告ぐ!この星はわれわれモンキー星雲連合軍が占拠した!おとなしく随うならそれでよし、刃向かうならば殺すまで、二つに一つ!今すぐ選択しろ!』

空に無数のUFOの編隊が押し寄せていた。拡声器から流暢な地球言語でこのような宣告を下している。

「宇宙人だ!」

その時UFOの編隊に向かって何か煌めくものが飛び立った。虹色の五つの人影はUFOと戦っている。大雨の中から、「地球はあなたたちのものじゃないわ!そんなこと、このサイキックレンジャーが絶対にさせない!」、という声が微かに聞こえた。

「エスパーだ!」

『……このわしを永い眠りから呼び覚ますは誰じゃ……十兵衛……十兵衛……』

何処からか不気味な身の毛もよだつ声がわき上がる。UFOやサイキックレンジャーの浮かぶ空を覆う黒い霧、それは大きな顔のようにわだかまった。

「怨霊だ!」


そして世界は破壊された。廃墟のビル群。あらゆる破壊兵器と魔法、超能力で地表は厚い雲に覆い尽くされ、凍える風が吹きすさぶ。

その時、雲の中から一筋の光が降ろされた。

「なんだあれは?」

光の筋をゆっくりと降ってくる人物。白いコック服を着て頭にはコック帽。岡持を片手に持っている。

私の目から涙がこぼれた。

「毎度!到雲楼です!担々麺大盛り半ライス付き、単品で唐揚げと餃子、杏仁豆腐お持ちしました!」

ジャスト三十分であった。

かなり時間をオーバーして傷つきながら最後に残った半ライスだけを届ける、というオチを予定していたのに全く真逆になってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ