物語の魔女と、美しき獣
*ティア視点です
『ミスティア、あの子を頼む。私は、あの子の傍に居る事は出来ないから』
先代の魔女は、そう言って静かに目を閉じた。
「はぁ...」
昔の約束を思い出した。
まぁ、約束と言っても一方的に押し付けられただけだが。でも短く無い時をあの人と過ごしたのだ、あの人最後の望みを叶えてあげるほどの時を、それを今更どうこう言うつもりは無い。
だが今思う事は、あの人が最後まで気にかけていた彼女の事だ。
(一体この思いは、何なのだろう...)
最近、自分がおかしい、歴代の魔女達と一緒に居たときはこんなことは無かったのに。
誰かに聞こうにもこの場所には、彼女と自分しか居ない。彼女に相談するのは、何故か躊躇うというか言い難いというかとにかく彼女だけには、言ってはいけない気がする。しかし他にある方法といえば沢山ある本で探すしかないだろう。だが人に聞くのと、本で調べるでは全然違う、それも今回は自分の感情だ、いくら本が沢山あると言っても己の感情を詳しく書かれた本は少ないだろう、それに本に書かれた内容で自分の感情が分かると思えない。
「どうにか知る事は、出来ないだろうか...」
だが今直ぐ知りたい訳ではない、どうせ自分達には有り余る程の時間があるのだから。だけど彼女と過ごす時間がずっと続けば良いと思う、それは心からの願いだーーー
そうして長い時が過ぎた。
ある日、彼女と本の整理をしていると、この大図書館に何者かが侵入した事に気づく。
「!?」
(そんなっ!ありえないっこの場所には自分が許した者しか入れないのに!)
そして彼女も侵入者に気づいた様だ。
「ティアっ!」
焦った声で私を呼んだ。その声ではっとする、そうだこの図書館を護る事が自分達の役目だ、とにかく急がなくては、侵入者は今はまだ外に居る様だ
「はい!ユリっ急ぎましょうっ!」
私達は、急いで侵入者が居る場所に向かった。
「ティア、どういう事だ!」
どうしてと、彼女が言う。
「わかりません。ですが結界が、破られた様ではないようです。しかしどうやって結界をすり抜けたのか」
わからないと、彼女に告げる。
「しかしどうも悪意は、無いようです」
そう先程から侵入者はその場を動かない、何か理由あるのか。
「ですが油断は、出来ません」
「ああ、危険が無い事を祈ろう」
そうですねという言葉は声に出すことは無かった
侵入者が居る場所に向かうと、その場に居たのは二人の子供だった。
一人は、茶色の髪を腰まで伸ばした少女。もう一人は、青みがかった黒い髪を持つ少年だった。しかし二人が身に付けている者は質が良く品が良い物だ、おそらく貴族の子供だと分かった。
「君達、どうやってこの場所に入った?」
少し警戒して聞く、いくら子供とはいえこの場所に侵入出来たのだ、警戒した方が良いだろう。
すると少女が
「あ、あの勝手に入ってすみません...実は、森で迷っていたら此処に着きまして...」
少女は少し困惑しながら告げた、恐らくこんな森の奥に、人が住んで居るとは思わなかったのだろう。
しかし森で迷った者は魔術で帰れる様にしている筈なのだが、少女も嘘をついている様には見えない恐らく本当の事なのだろう。
しかしどうしたものかと考える。
するとユリが、少年を見ながら
「君、怪我をしているのかい?」
良く見ると少年は腕に擦った様な怪我をしていた。
「あ、いえ迷っていた時に出来た様でたいしたことは...」
「しかし血が出ている、仕方ないから中に入れ手当する」
彼女はぶっきらぼうに言ったが本当は心配で仕方ないのだろう
とりあえず二人を中に連れていく
手当をして二人に話を聞く
「私は、ミスティア彼女はユリだよ、君達の名前は?」
「あ、私はマリアローズ・アディンセルと申します」
「私は、ルーカス・ディア・ランドローグです」
何と二人はこの国の上級貴族だった。しかもルーカスはこの国の王子だ、どうして二人はこんな森に来たのだろう。
「君達はどうしてこんな森に、来たんだい?」
「狩りでこの森に来たんです。ですがその、護衛達とはぐれてしまいまして...」
「そうでしたか、それは大変でしたね」
「はい、此処を見つける事が出来て良かったです」
本当に良かったという様に語った。するとマリアが
「そういえば、どうしてお二方はこんな場所に住んでいるのですか?」
とても不思議だという様に、聞いて来た。
しかしこの質問は、どう答えたものだろうと、少し悩むそしてある考えに至る。
「教えても良いけれど余り他言しない様に、余り多くの人に知られるのは都合が悪いんだよ」
まあいくら秘密と言っても彼、ルーカスの父親の国王には知られるだろうが、そちらの方が都合が良い何故ならこの図書館には禁書や世界中の書物が集まっているその存在が公になれば利用しようと考える輩が出て来るだろう、いくら自分が魔術で護っているとはいえこの二人の様に侵入する事が、出来る者がいるかも知れない。それは国にとっても都合が悪い、だったらいっそのこと国の保護下に入れば良い、そうすればこちらとしても都合が良いからだ。
「ここにはね、世界中の本があるんだ。その中には、禁書も既に失われた書物もあるんだ、その本を私達が、護っているんだよ」
「護っている...ですか?」
「そう、だからこんな森の奥にあるんだ」
二人は納得という顔をする
まあ全ては、話していないが話す必要は、無いだろう
「あの、私達はどうやって帰れば良いでしょうか?」
「ああ、それは大丈夫だティアがちゃんと送り届けるよ」
「いいのですか?」
「うん、それに君達二人じゃあ帰れないでしょう?」
「あ、ああはい、ありがとうございます...すみません...」
申し訳なさそうに、二人は謝った
「良いって別に...」
「...それに護衛が今探しているし...」
ボソッとユリが、呟いた。そう先程から森の中を走りまわる気配がある恐らく二人の護衛だろう、ならば早く送り届けた方が良いだろう。
「それじゃあ行くよ?」
「はい」
そう言って歩き出した
二人の護衛達は、直ぐに見つかった
「マリア様っ!」
「ルーカス様!」
やはり貴族の護衛だからかなり腕は立つのだろう
身のこなし方からして強いと分かる
「ご怪我は、ございませんか?」
「怪我をしたけど、この方達が、助けてくださったんです」
「そうでしたか、有難う御座います」
頭を下げて御礼を言われたのでユリは、眼を丸くした。
そして少し焦った様に声を上げた
「べ、別に大した事じゃない!困っている様だったから助けただけだ!」
「しかし...」
「だからこの話しは、終わりだ!」
顔を赤く染めてふんっ!と顔を逸らす様は、とても可愛らしいそしてその姿を見た護衛達は、顔を赤くして彼女を見つめる。なんだか面白く無い、心がモヤモヤしながら彼等と別れた
「それじゃあね」
「はい、それではありがとうございました」
「本当にありがとうございました」
「ユリ、どうしました?」
「ん?いや何でも無い...」
「...そうですか」
ユリは、何か考えている様だった。
まあ無理に聞き出そうとしても答え無いだろう
「にしても、久しぶりだったな...ティア以外と話したの」
ぽつりと、ユリが呟いた。
そう彼女は、異世界からこの世界に来たため先代の魔女と、私しか交遊が無かったそれも随分昔の話しだ、先代の魔女が亡くなってから、話し相手が私しか居なくなった。
「...寂しいですか?」
声は、何故か震えていた。
「ん?いや寂しくは無いよ、ただその昔の事を思いだしてね...」
少し寂しさを滲ませた声だった。
それは当たり前だ彼女はたった一人でこの世界に放り出されたのだそれもまだ若い時に、友達だって家族もいただろう寂しくて当たり前だ。
だけど帰る事は出来ないそれはどんな思いなのだろう。
「でも今は、ティアが居てくれるから、寂しくはないよ」
その言葉は強がりだったのだろう。だけど何故か心がときめいた。
「?」
「どうした?」
「い、いえ何でも無いです」
一体どうしたのだろう。今までこんなことは無かったのに。
「まあやっぱり、あの子達と話せたのは楽しかったよ」
とても嬉しそうにニコッと笑った。
その笑顔で胸が締め付けられた。
「っ!」
ーーーやっとこの気持ちが分かった。何で分からなかったのだろう。こんな簡単な事だったのに。
(ああ...どうして分からなかったのだろう。私はいつも彼女の事ばかり考えていたのに...)
だけどやっと気づけた、気づく事が出来た。
あのままじゃ気づく事すら出来なかった。
(良かった気づく事が出来て...)
「?」
ユリは、そんな私を見て不思議そうに首を傾げた。
そんな彼女を見て
「...逃す気は無いですからね」
ボソッと呟く
「えっ??えっ?」
困惑する彼女を見ながら
(ぜったいに逃しませんよ)
と、心に決めたーーー
読んでいただき有難う御座います。




