序章【登場人物】
人物集・所属別
(※序章の結末までを含んだ内容あり!)
◇外套一派◇
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◆リンリ【『某』統導巫】
肩の辺りで切り揃えた銀髪に、琥珀を思わせる金の虹彩をした銀髪金眼の女性ないし少女。
人ならざる特徴を身体に持ち。髪と同じ銀色の狐のような獣の耳、背部を覆う毛皮、同じく狐のようなフサフサとした尻尾を蓄える。
見かけの齢は十代の後半といったところ。少女とも大人の女性とも言い表せるものであるが、純真な振る舞いや、大人の艶やかさよりも少女的な可憐さの方が上回る為にどちらかというと若く幼く見える。
長い睫毛と切れ長の瞳は端麗さと共にたおやかな高貴さをも感じさせ、思慮深く聡明そうな印象。彼女と対面した者は先ず、彼女に対し、犯し難い存在への重圧感や、不用意に接するのを憚ってしまうような敬いの感情が働いてしまう。
感情を昂らせた彼女が獣の如き瞳孔を細めて視線を鋭くすると、より相手に畏敬の念を抱かせ、そのまま屈服させうる威圧感があるのだが、彼女自身は敬われたりするのを好んではおらず。平常時では慈愛に満ちていて、玲瓏に儚げで、どこか遠い彼土に思い馳せているような朧げな視線を振りまく。
彼女の気質はその大層な容貌からは想像できぬ程に親しみ易く、気安く、人懐こい。良い意味での『世俗的』かつ『通俗的』であり。面倒見がよく、子供が好きで、困っている者を見過ごせず、一度縁が出来た相手には寄り添って付き合ってくれる。
馬車や古びた宿など。特に珍しくもない物、妙な物にも目を輝かせて興味を持つ愛嬌がある。
通して穏やかで友好的な和御魂。度を越した理不尽や不条理や暴力を目撃したり、強い悪意や敵意さえ向けられやしなければ寛大。その精神性が荒御魂へと豹変してしまうような事は無いであろう。
身に纏った羽衣や携えた小刀といった特徴から何かしらの統巫であることは確実であり。
統巫として何かしらの使命を帯びて、遠方へと向かう途中にチィカバの町に訪れたらしい。
その正体は、異成り立ちをした世、彼土のいたって平凡であった不器用で優しい青年。
彼は此土に迷い込み、保護され。系統導巫の領域で暫しの日常を過ごした折、迫った厄災に巻き込まれてしまい。自分自身の意思で世話になった場所を『守ろう』と行動し、厄災【凡世覆軍の鼠】と対峙。末に人間としての命を落としかけた。
生死の境、辛うじて意識を取り戻した際に、系統導巫との間に『ある契り』を交わし番う。
しかし何の因果か。不可解に酷く歪で絡まった形で結ばれてしまった契約は彼を平凡な人間の青年から一変させ、その姿のみならず存在までを神性を持った少女のものに変容させてしまったのだった。
統巫であって、その番でもある特異な存在。
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◆『 』【系統導巫】
金と銀の髪と眼をした、美しくも人ならざる身体的特徴を持つ、無垢であどけない可憐な少女。
リンリを保護し、絆を深め。予期せぬ悲劇に見舞われた彼との今生の際に、それを否定する為、自分自身の“全てを委ねる”契りを交わした。
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◆サシギ
リンリの従者。系統導巫の眷属、使従の一人。
長めの髪を頭の片側で結び、身体の前へと流した髪型をし。背丈は女性にしてはやや高め。体格は痩せ引き締まっているが、胸の辺りは豊満。固そうな性格を想像させる線の整った凛とした顔の女性。
特徴的な紅い髪をしており。主のように徒人とは異なる存在である。肩から下の手首までが形こそ人間の物だが美しい紅い鳥の羽毛で包まれた腕、鳥類の鱗の生えた掌を持っている。
身体を鳥の姿に寄せる力を持ち、鳥人の姿に化身すれば人間一人を掴んで短時間だが飛翔できる程の膂力を出す事ができる。
また身体から抜いた羽根は、水気で湿らさなければ僅かな火種でも焔硝の如く激しい燃焼反応を起こし、その気になれば周囲一帯を火の海にする。
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◆シルシ
リンリの従者。系統導巫の眷属、使従の一人。
薄蒼い左右に結った髪に、珊瑚のような形をした掌大の角を側頭部から二対生やし。尖った耳、頬に爬虫類の鱗、眼鏡を掛けた碧玉の眼、鱗に覆われた太尾を持つ、小柄で凹凸の少ない身体の年頃の少女である。丸い眼鏡と垂れ目から、内向的な気質や性格をしていそうな雰囲気を与える。身なりを整えてやれば愛々しい容姿なのだが、本人が化粧や身を着飾る類いの行為をあまりしたがらない。
齢不相応な年寄りじみた喋り方をするが、実の祖父のしていた喋り方を本人が気に入って真似ているだけであり。そこに深い意味は無い。
元はチィカバの町の技師として名を馳せた名家の一人娘であったが、両親は実家と訣別し、より将来性のある商家として独立。技師の家柄という伝手を利用し、土地境のたたらの町と、山間奥地の鉄山を所有する村との仲介を執り行う商業形態を整えた。
苦節数年。商家としての事業が軌道に乗るが、程なくして彼女の両親は街道の水害を所以とする不自然な事故で亡くなり、商家も欲深い者に奪われてしまう。そうして一人だけ残った彼女は、技師を続けていた家元の祖父に引き取られた。
彼女は祖父にとても良く懐いたものの。彼女の祖父は『技師』という立場や矜持から町の急激で無茶な改革に異を唱えてしまい。厄介者の老体として町から干され、彼女共々追い立てられてしまった。
その後は山々を越えて、系統導巫に仕える一族の住む集落に匿われ。彼女は心身ともに疲弊した祖父を看取る。その際に、土地に何かを『願ってしまい』現在の人外の身へと変化してしまう。
変わり果てた身体に困惑し、恐れを抱き。彼女は一人集落を抜け出して、故郷のチィカバに引き返してしまうが。そこで心無い言葉を浴びせられ、人間不信に陥り、再び集落へと引き返した。そんな経緯があり、現在の立場に落ち着いたという。
彼女にも思うところは有ったが、彼女自身の在り方を問うリンリの説得に根負けしてしまい。使従としての矜持を示すため、何より彼女自身の過去に見切りを付けるため、チィカバの町を水害から救う際の立て役者となると決める。
途中で出逢った祖父の昔馴染みの技師より、ある昔話を聞かされ。今更ながら亡き祖父の真意を悟ってしまい、また、浴びせられた心無い言葉が『自分を守る為の』裏腹なものだった感付いてしまい。涙を流しながら深い水の底に沈んでゆく。
◇チィカバの町◇
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◆ニエ
リンリが選んだボロ宿【雨宿里】で受付をしていた素朴な印象の少女。じつは宿の若女将。
宿を『個人的な好み』と見定め、暖簾をくぐり訪問してきたリンリを出迎えた事で縁が結ばれた。
宿の理念に理解を示し、身分を明かして律儀に宿泊を決めてくれたリンリ達四人。かような稀人の御客達を彼女なりに丁重に饗す。
失礼な『申し出』だと認識しつつ、リンリ達に『町の外の話』を語って欲しいと頼み。その席で自身の悩みを打ち明け聞いてもらう。
リンリから返された諭すような言ノ葉は、彼女の心に僅かながら変化をもたらす事となる。
夜の嵐の後、決壊寸前に迫った貯水場に彼女はリンリ達を心配して追って現れ。なんと、会話から得た情報で、自分の身を【ヒトバシラ】として犠牲にし貯水場の決壊を防ぐ策を提案する。
当然にリンリから拒否され、バカな考えを『改めるよう』にと何度も繰り返し叱責と確認をされるが、それでも彼女の意思は頑なであり、思い留まったりすることはなかった。最終的にリンリは彼女の意思を尊重すると選択。小刀を突き刺されて術を施された彼女は楔身となり、長く永い眠りに就いた。
人知れず贄となり、人柱として町を救ったニエ。町の人間は誰一人として知らずとも。まるで彼女を讃えるように、その場だけは蔦から伸びた小さくも美しい花々が咲き誇っていた。
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◆ニウラヌ【擁統導巫】
過去の約定から町への不干渉を貫いていた。
だがリンリ達の水害への奮闘に心を打たれ。これはこの町への干渉ではなくて『頑張る少女達を応援するだけ』と建前から、気が付かれない程度に“ほんの少しだけ”力添えを決め。陰ながら助力する。
◇その他◇
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◆ヒノアサメ【託統導巫】
此土の『恒久的存続』を理念とする集団に属する統巫の一柱。放置すれば世の奉平を脅かしかねない危うき存在や事象を始末して廻っている。
厄災【凡世覆軍の鼠】の一件で、系統導巫と協力関係を結び。大規模な策をもって対処にあたるが、強引で多少の犠牲を顧みない彼女のやり方は、厄災の後に多くの不要な軋轢を生んでしまった。
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