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戦うのは怖いので、黒猫《クロ》と一緒に薬師ヒーラーとしてスローライフを謳歌しますっ!  作者: 烏羽 楓


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第8話「夜明けのポーション」

 最近の私は、薬を作るのがますます楽しくなっていた。

 回復薬、解毒薬、魔力回復薬。どれも冒険者の日常に欠かせないし、作るたびに少しずつ上達を実感できる。

 でも――今日は、少し違う挑戦をしてみたくなった。


「活力ポーション……スタミナを回復する薬、か」


 調合書の隅に小さく書かれていた“未完成レシピ”の文字。

 正式な作り方は載っていないけど、材料だけがいくつか記されている。

 つまり、これを完成させるのは“薬師の腕”次第ということだ。


 初めての開発に、胸が少し高鳴った。

 けれど、現実は甘くない。

 何度試しても、出来上がるのは泡立つ茶色の液体ばかり。


「うーん……やっぱりダメかぁ」


 瓶の中で、失敗作の液体がどろりと沈む。

 成分がうまく結合していない。たぶん素材の配分が悪いんだ。


「もう少し、強い素材が必要かも」


 そう呟いて、私は買い物袋を手にギルドへ向かった。


 

 ◆


 

「あれ、今日はずいぶん珍しい素材を買われますね?」


 受付で購入申請書に目を通していたサキさんが、少し驚いたように笑った。

 そこには、《ブルーム草》《モンスターの爪》、そして《ダンジョン産蜂蜜》の文字。


「ちょっと試したいことがあって。上手くいったら、持ってきますね」


「ふふ、ミオさんなら大丈夫ですよ。頑張ってくださいね」


「はいっ!」


 私は素材を受け取ると、家路を急いだ。

 クロが玄関で出迎えると、まるで「実験だね!」と言いたげに尻尾を揺らす。


 

 ◆


 

 夜が深まるころ、私は机いっぱいに器具を並べた。

 火加減を調整し、薬草液を混ぜ合わせ、モンスターの爪をすり潰す。

 何パターンかの調合を試してみるが――やっぱり上手くいかない。


「はぁ……難しいなぁ。理論上は合ってるはずなのに、なにが違うんだろ」


 肩を落とし、ソファに座り込む。

 クロが膝の上に乗ってきて、まるくなった。

 その温かさに、少しだけ気持ちがほぐれる。


「ねぇ、クロ。どうしたら、もっと元気が出る薬が作れると思う?」


「にゃっ」


 気の抜けた返事に笑ってしまう。

 けれど、次の瞬間――机の上のルミナフラワーが目に入った。


「あ……そうだ。これ、使ってみる?」


 あの光る花。ハイポーションの材料になる薬草なら、もしかしたらエネルギーを高める要素にもなるかもしれない。


「やってみよう!」


 私はランプを明るく灯し、調合を再開した。

 ルミナフラワーの花弁をすり潰し、丁寧に効能液を抽出する。

 そのエキスを薬草液と混ぜ、砕いたモンスターの爪と蜂蜜を加える。

 さらに、自分の“ヒール”の魔法を流し込みながら、ゆっくりと攪拌(かくはん)した。


 すると、淡い緑色だった液体が――ゆっくりと、薄い黄色に変わっていった。


「……色が、変わった!」


 光の粒が液面で揺れ、かすかに魔力の波動が走る。

 私は慌てて、ろ過器を通して不純物を取り除き、火にかけて水分を飛ばした。

 濃縮されていく液体が、やがて深い黄色へと変わっていく。


「きれい……」


 瓶に注ぎ、栓をして、そっと光にかざす。

 光が透け、煌めく薬の色が部屋の中に反射した。


「……できた!」


 思わず声を上げた瞬間、窓の外がうっすらと明るくなっていることに気づいた。

 夜が明けかけている。

 机の隅に座るクロが、大きなあくびをした。


「……もう朝かぁ」


 私は笑って、ベッドに向かう。

 クロを抱き上げると、布団に潜り込んだ。


「起きたら、ギルドに持っていこうね……」


 まぶたをゆっくりと閉じる。

 部屋の中に、ルミナフラワーの香りがゆっくりと満ちていく。

 その柔らかさに包まれながら、私は静かに眠りについた。

 


 ◆

 


 夕方、目を覚ますと窓の外はすっかりオレンジ色に染まっていた。

 私は完成したポーションを丁寧に布で包み、クロを連れてギルドへ向かった。


「サキさん、これ……ちょっと試してもらえませんか?」


「新作ですか?」


「はい、活力ポーションって名前にしました。タケルさんたちに使ってもらえたら嬉しくて」


 サキは驚いたように目を丸くしたあと、優しく微笑んだ。


「もちろんです。責任を持ってお渡ししますね」


「ありがとうございます!」


 瓶を預けると、どっと疲れが押し寄せた。

 けれど、それは心地よい疲れだった。


「タケルさんたちの役に立つといいなぁ」


 小さく呟くと、クロが「にゃー」と返事をした。


「もう、クロのおやつの話じゃないからね?」


「……にゃーん」


 少しだけ悲しそうに鳴くその声に、思わず笑ってしまう。


「ふふ、ご褒美はあとでね」


 クロが尻尾を揺らし、満足そうに喉を鳴らす。

 私はその姿に微笑みながら、家路についた。


 今日もまた、新しい一歩を踏み出せた気がする。

 ――薬師として、そして“誰かを救いたい”自分として。

あとがき


見て下さりありがとうございます!

手探りながら、自分の好きと読者様の好きが重なるそんな境界線上の物語を目指してます!


続きが気になると思ったら、

評価、ブックマーク、リアクション等

よろしくお願いします!


――誰かの心に刺さる、そんな物語を貴方に――

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