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戦うのは怖いので、黒猫《クロ》と一緒に薬師ヒーラーとしてスローライフを謳歌しますっ!  作者: 烏羽 楓


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番外編①「ミオ不在のギルド事情」

 ――とある日のギルド。


 昼下がりの酒場スペースは、いつもより少し静かだった。

 笑い声はある。酒も出ている。依頼の話も飛び交っている。


 だが――どこか締まりがない。


「でさぁ、運悪くゴブリンキングが出てきてよ」


 俺はジョッキを傾けながら、ため息交じりに話を続けた。


「ポーションもほとんどねぇし、撤退するしかなかったんだよなぁ」


「その階層でゴブリンキングは、流石に私でも逃げるだろうな」


 向かいに座るリナが腕を組みながら頷く。


「命あってこその冒険者だしな」


「だろ? いやマジで、あと二本でも猫ポあったら押し切れてたんだがな……」


 そう言って、空になったジョッキをテーブルに置く。


 ここ最近――ミオが不在らしい。


 詳しい理由は聞いていない。

 帰省だとか、私用だとか、そんな噂は耳にしたが真偽は不明だ。


 ただ一つ確かなのは。


 猫ポの入荷が止まっている。


 これがデカい。


 今、どこのパーティーも他のポーションを使っている。

 効能だけ見れば、悪くないものもある。


 だがなぁ。


「やっぱ、違うんだよな……」


「味?」


「味もだな」


 思わず苦笑する。


 猫ポは飲みやすい。

 いや、飲みやすすぎる。


 他のポーションが薬臭い水だとしたら、猫ポは果実ドリンクに近い。

 戦闘中に喉を通る感覚が全然違う。


 それに加えて回復速度、持続、体力の戻り方。

 微妙な安心感があるんだよな。


「クエスト成功率、落ちてるらしいぞ。全体的に」


 リナがぽつりと言う。


「やっぱりな……」


 俺も実感している。


 猫ポがある前提で組んでた戦術が、全部崩れてる。

 押せる場面で引く。

 耐えられる場面で逃げる。


 結果、クエストの成功率が微妙に下がる。


 それだけ――猫ポは浸透していた。


 今じゃ冒険者の間で


 ポーション=猫ポ


 って認識になりつつある。


「そう考えると、ミオってやっぱスゲーなぁって思うわ」


 俺が言うと、リナも小さく笑った。


「だね」


 そして、何かを思い出したように指を鳴らす。


「あ、そうそう。タケル聞いた?」


「ん?」


「ミオちゃんが出てたコンテスト襲撃した黒服いたじゃん?」


「ああ、いたな」


 あの騒動は、まだ記憶に新しい。

 

 ミオがユウトと手を組んで、万が一に備えて薬の効果を打ち消す薬?っつう、非売品の妙な薬作ってたっけ。

 あいつら、やけに必死こいて製作に当たってたもんなぁ。

 

「壊滅したらしいよ」


「は!?」


 思わず身を乗り出した。


「壊滅!? どうやって! てか誰がやったんだ」


 ギルマス連中がこぞって使った拘束魔法を、あっさり解除した連中だぞ?

 それを壊滅って……。


 見つけた経緯も気になるが、もっと気になるのは――。


 誰がやったかだ。


「……あ、勇者パーティーか」


「っそ」


 リナはあっさり頷いた。


「やっぱ凄いよ。あの人たち」


 グラスを揺らしながら続ける。


「冒険者になったのもここ数年って話なのに、めきめきとランク上げちゃってさ」


「聞いた聞いた。今アメリカの大迷宮ダンジョン、96層だろ?」


「そうそう。Sランクのレイドでも60層到達が最近の話なのにね」


 あいつらは――別格だ。


 俺らが冒険者になって数年経った頃、突如現れた。


 勇者。

 剣聖。

 賢者。

 聖女。

 重戦士。


 五人全員が“特殊な固有スキル持ち”の化け物パーティー。


 その快進撃は、噂じゃなく伝説レベルで広がった。


「ありゃ、別格っていうか、むしろ別次元の存在だろ」


「まぁね~」


 リナは苦笑する。


「それで言えば、ミオちゃんも別格だけどね」


「違いないな」


 俺も即答した。


「冒険者でこそないけど、薬師としては最強だよな」


 回復魔法と調合、両方出来る固有スキル。

 鑑定持ち。

 それでいて、努力家。


 成長速度がえげつない。


 まるで――


 誰かを助けるために生まれてきたような存在。


 そんな言葉が、妙にしっくりくる。


「今じゃ猫ポも、ギルド通して世界中に供給されてるらしいし」


「らしいな」


「ミオが作った薬の恩恵受けた奴、数知れねぇだろ」


「……よっぽど聖女様だよねぇ」


 思わず笑う。


 本職の聖女より聖女してんじゃねぇかって話だ。


 するとリナが、面白そうに身を乗り出した。


「ねぇ、もしさ」


「ん?」


「ミオちゃんが勇者パーティーの専属薬師になったらどうなるんだろうね」


 俺は少し考えて――すぐ首を振った。


「さぁな。でも、ミオは断るだろうな」


「え? なんで?」


 リナが目を丸くする。


「ミオは世界を変えるとか、地位や名誉とか、微塵も興味ねぇから」


 あいつを見てりゃ分かる。


「勇者パーティー助けるより、一人でも多くの人を、自分の手で助けたいって考えそうだろ?」


「……ああ、確かにミオちゃんなら、そうするわ」


 リナが納得したように笑う。


「だろ?」


 今頃、あいつはどこで何やってんだろうな。


 研究か。

 家族と過ごしてんのか。

 それとも、また誰かを助けてんのか。


 どれでも、あいつらしい。


 だが一つだけ、確かなのは――。


「早く帰ってこねーかなぁ」


 俺は椅子に背を預け、天井を見上げた。


「皆、お前とお前の作るポーション待ってるぜ」


 猫ポも。

 笑顔も。

 あいつの「お疲れ様です」って声もな。


 ギルドは今日も回ってる。

 依頼も来るし、魔物も湧く。


 だが――どこか物足りねぇ。


 まるで、回復役が抜けたパーティーみてぇだ。


 俺は空のジョッキを見つめ、苦笑した。


「……ったく」


 ミオ。

 帰ってきたら、まずは猫ポ補充だ。


 そのあと――。


 皆で、盛大に労ってやるからよ。


 だから安心して、用事済ませてこい。


 お前の居場所は、ちゃんと残してある。


 このギルドにも――俺たちの隣にもな。

あとがき


見て下さりありがとうございます!

手探りながら、自分の好きと読者様の好きが重なるそんな境界線上の物語を目指してます!


続きが気になると思ったら、

評価、ブックマーク、リアクション等

よろしくお願いします!


――誰かの心に刺さる、そんな物語を貴方に――

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