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戦うのは怖いので、黒猫《クロ》と一緒に薬師ヒーラーとしてスローライフを謳歌しますっ!  作者: 烏羽 楓


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第35話「重なる声は仲良しの証」

 ギルドの扉を開けた瞬間、耳に飛び込んできたのは、やけに張りのある声だった。


「だーかーら! 俺が連れていくって言ってんだろ!?」

「何度言わせるんだ! あそこは、タケルのパーティーでは相性が悪いと言っているだろう!」


 思わず、足が止まる。


 声の主は、すぐに分かった。

 タケルさんと、リナさんだ。


「……え?」


 受付の近くで、二人が向かい合って言い争っている。

 どちらも一歩も引く気はなさそうで、腕を組んだり指を突きつけたりと、なかなかの迫力だ。


 周囲の冒険者たちはというと、もう慣れたものなのか、遠巻きに眺めつつ各自の用事を続けている。

 誰も止めに入らないあたり、これが日常風景なのだろう。


「……何を揉めてるんだろう」


 小さく首をかしげながら、私はクロを見下ろした。


「にゃ?」


 クロは意味も分からず、きょろきょろとギルド内を見回している。

 今日は人が多いからか、少し落ち着かない様子だ。


「あとで聞こうね」


 そう言って肩に乗せると、私はそのまま受付へ向かった。


「こんにちは、サキさん。本日分の納品です」


 カウンターにポーション箱を置くと、サキさんがいつものように柔らかく微笑む。


「ミオさん、こんにちは。いつもありがとうございます」

「こちらこそ。今日は少し多めです」


「助かります。最近は、回復ポーションの消費が早くて」


 そう言いながら、サキさんは手慣れた様子で本数を確認していく。

 その間も、背後からは相変わらずの声が飛んでくる。


「俺のパーティーなら、前衛を厚くできる!」

「だからこそ無駄に被弾する可能性が高いと言っている!」


「……」


 私はちらりと視線を向けてから、サキさんに小声で尋ねた。


「サキさん、あの二人……何を言い争ってるんですか?」


 サキさんは一瞬、苦笑してから、小さくため息をついた。


「それが、実は……」


 説明が始まろうとした、その時。


「ミオ! 聞いてくれよ!」

「ミオちゃん! ちょっと聞いて!」


 ほぼ同時に、後ろから声が飛んできた。


「えっ?」


 振り返ると、タケルさんとリナさんが、ぴたりと動きを止めてこちらを見ている。

 さっきまでの剣幕はどこへやら、どこか期待に満ちた目だ。


「……えっと」

「いいところに来た!」

「あなたなら、分かってくれるはずだ」


 二人に挟まれる形になり、私は自然と一歩後ずさる。


「ちょ、ちょっと落ち着いてください」

「にゃ」


 クロが間に入るように鳴き、私の肩で尻尾を揺らした。


「で、どうしたんですか?」


 そう聞くと、二人は同時に口を開き――そして、同時に止まった。


「……先にどうぞ」

「いや、そっちから」


 微妙な沈黙。


 結局、リナさんが一歩前に出た。


「以前会っただろう? 兄妹の冒険者、マサトとアカネ」

 

「あ、はい。覚えてます」


 確か、まだ若いのにしっかりしていて、少し緊張気味だった二人だ。


「次の依頼で、あの子たちがDランクダンジョンに向かうことになったんだけど」

 

「その引率を誰がやるかって話だ!」


 タケルさんが、勢いよく続ける。


「今回向かうのは、岩窟系のダンジョンなんだ」

 

「物理耐性の高い魔物が多い場所ですね」


 自然と、知識が口をつく。


「そうだ。だからこそ――」

「魔法で削った方が安全だ、と私は言っている」


 タケルさんの言葉を遮り、リナさんが腕を組みながら答える。


「タケルのパーティーは、戦士寄りだ。正面から殴り合えば時間がかかる」

 

「時間がかかっても、守りきれるのが俺たちの強みだろ!」


「その“時間”が、初心者には負担になると言っているのだ!」


 二人の主張は、どちらも一理ある。


 横で聞いていたサキさんが、補足する。


「ギルドとしては、難易度自体はそれほど高くないですし、どちらのパーティーが引率しても、問題はないとは思うんですが……」

 

「だったら尚更――」

「後輩のためを思うなら、最善を選ぶべきだ」


 二人の視線が、再び火花を散らす。


「……」


 私は少しだけ考え込んだ。


 二人とも、怒っているわけじゃない。

 ただ、心配しているだけなんだ。


 だからこそ、視野が狭くなっている。


「……あの」


 二人の間に、小さく声を挟む。


「二人で行けばいいんじゃないですか?」


「「……は?」」


 声が、見事に重なった。


「引率って、一パーティーじゃなきゃいけない決まり、ありませんよね?」

 

「それは……ないな」

 

「確かに、規定は……ない」


 予想外の意見に二人は、なんだか複雑そうな表情を浮かべている。

 嫌というわけではないけど、変にヒートアップしたせいで落としどころを見失っているような感じに見えた。


「戦士特化と魔法特化なら、ちょうど補えますし。マサトくんたちも、勉強になると思いますよ?」


 しばしの沈黙。


「……そう、だな」

「……なぜ、今まで思いつかなかったんだ」


 二人とも、同時に納得した顔になる。


「ミオ! ありがとう!」

「すまない、助かったよ。本当に」


「いえ、私はただ……」


「にゃにゃ」


 クロが誇らしげに鳴く。

 その様子に、二人が思わず笑った。


「はは……結局、意地になってたな」

 

「まったくだ。後輩の前で、格好悪いところを見せるところだった」


「でも、ちゃんと考えてるのは伝わりますよ」

 

「……そう言ってもらえると、救われる」


 話がまとまり、二人は引率の詳細をサキさんと相談し始めた。

 私は一歩引いて、その様子を眺める。


「にゃ?」


「うん。解決してよかったね」


 ギルドを後にすると、外の空気は少しだけ暖かかった。


「あの二人……仲いいのか悪いのか、よく分かんないね」

「にゃ」


 二人の関係性に少し微笑ましさを感じながら問いかけるとクロが肯定するように鳴き、私の肩で丸くなる。

 

 私がギルドに来る前から冒険者をしていて、普段は頼りがいがあってカッコイイ二人だけど、時折私より年下に見える時がある。

 それって、ああいう仕事柄、身体も命も張って戦っているからこそ、安全な場所では、いつもより幼くなるのかな?

 

 事件の影は、まだ街に残っている。

 それでも、こうして誰かが誰かを気にかけて、言い争って、笑って。

 世界は、ちゃんと日常を続けている。

 

 この穏やかな時間がいつまでも続いて欲しいな。

 誰もが安心できるような、そんな日々を私も守れるように明日からも頑張らないとね。

あとがき


見て下さりありがとうございます!

手探りながら、自分の好きと読者様の好きが重なるそんな境界線上の物語を目指してます!


続きが気になると思ったら、

評価、ブックマーク、リアクション等

よろしくお願いします!


――誰かの心に刺さる、そんな物語を貴方に――

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