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戦うのは怖いので、黒猫《クロ》と一緒に薬師ヒーラーとしてスローライフを謳歌しますっ!  作者: 烏羽 楓


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第19話「鑑定スキル」

 ――《鑑定》を手に入れてから、数日が経った。


 この数日、私は暇さえあればいろんなものを鑑定して過ごしていた。

 薬草、ポーション、食材、リナさんにもらったお菓子の包み紙まで――。

 とにかく手当たり次第に。


 そして分かったことがある。

 《鑑定》は、ただ“名前”を表示するだけじゃない。

 集中すれば、【品質】【希少度】【魔力反応】【相性素材】といった項目まで見えるということ。

 まるで、世界そのものの“裏側”を覗いているような感覚だった。


「改めて思うけど、スキルって奥が深いなぁ」


 ポーションを一本手に取って鑑定する。


【中級治癒ポーション・改】

【品質:良】

【効能:骨や皮膚組織の再生・中級外傷治癒・疲労回復】

【使用素材:マルベール草・ブルーネ液・清らかな水・シャコラの実】

【素材相性:中】


「……やっぱり、素材の組み合わせや配合具合、相性値でも結構変わるんだ」


 ノートには、びっしりと細かな数値と感想が並んでいる。

 まるで理科の実験ノートみたいだ。

 “感覚”で作っていた頃の曖昧さが、こうして数値で見えるようになると、世界が一段階クリアになった気がする。


 ふと手を止め、湯気の立つマグカップに口をつけた。

 窓の外では、冬の風が木々を揺らしている。

 思い返せばここ数日の日常は、本当に目まぐるしい。

 でも、不思議と疲れはなかった。むしろ毎日が新鮮な気分。


「そういえばクロって、鑑定したらどうなるんだろ」


 ふとした好奇心で、足元にいたクロに視線を向ける。

 クロは日向で丸くなりながら、気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 その胸が上下するたびに、柔らかな毛並みが光を反射する。


「――鑑定」


 私はそっと手をかざし、《鑑定》を発動する。


 瞬間、青い光がクロを包み込み――視界に文字が浮かび上がる。


【名 前:��Ƙ��(クロ)】

【種 族:???】

【魔力反応:超高濃度/安定】

【危険度:――】


「……え?」


 思わず息を呑む。

 文字化け――? いや、そんなはずは。

 これまで鑑定したどんな対象でも、きちんと名前が出たのに。


「なにこれ……どうして“読めない”の……?」


 表示された“(クロ)”の横の黒塗りのような文字列。

 まるで誰かが意図的に“隠している”みたいだった。


 しかも、【種族:???】という表示。

 猫じゃ……ない?


 心臓が、どくんと鳴る。

 部屋の静寂がやけに重たく感じた。

 ……まさかとは思うけど、クロって、本当にただの猫なんだよね?


 手を引っ込めた瞬間、クロがのびをしながら目を開けた。


「にゃー?」


「あっ……ううん、なんでもない!」


 慌てて笑って取り繕うと、クロはあくびをして尻尾を揺らしながら私の膝に乗ってくる。

 クロの温かくて、柔らかい感触が伝わってくると、さっきまでの不安がまるで嘘みたいに溶けていった。


「よっし、今日は鑑定を使いながら調合してみよっか!」


「にゃにゃっ!」


 気持ちを切り替えるように話しかけるとクロが元気よく返事をして、机の上の瓶を軽く叩いた。

 どうやら今日も一緒に実験モードらしい。


 私は笑いながら、メモ帳を広げる。


 今日のテーマは、“鑑定スキルを使った調合実験”。

 これまでの感覚頼りの調合に、数値的な裏づけが加わるのだ。


 素材棚から薬草を取り出し、一つひとつに手をかざして鑑定する。

 光が淡く灯り、それぞれの特性が文字となって浮かぶ。


【ヒールミント】

【品質:高】

【香気値:24】

【相性素材:精霊水】


「ふむふむ、香気値が高い方が、揮発魔力の安定性が良くなるのね」


 こうして“数値で理解”できると、ひとつひとつの素材がまるで会話してくれているようで楽しい。

 私が問いかけるたび、素材たちは文字で答えてくれる。

 今の私には世界が少し、優しくなった気がしていた。


 そして、調合の時間。


「マルベール草が60%、ブルーネ液が30%、そして……清らかな水を10%」


 混ぜ合わせた瞬間、液体が淡く光を放つ。

 その光はいつもより長く、鮮やかに続いた。


【品質:極上】

【効能:中級外傷治癒】

【安定率:92%】


「……っ! できた! 中級クラスのポーションが、初級素材で……!」


 思わず声を上げる。

 これまで感覚では“良い出来”だったものが、今は数字で証明できる。

 胸の奥がじんわりと熱くなった。


「これで、もっと安定した品質のポーションが作れる!」


 クロが机の上に飛び乗り、私の手をちょんちょんと突く。


「にゃっ」


「ふふ、ありがとクロ。あなたのおかげだよ」


 クロは満足そうに目を細め、ポーションの瓶の横に丸まった。

 その姿を見ているだけで、不思議と安心する。


 けれど――その背中を見ながら、ふとさっきの鑑定結果が頭をよぎった。

 “読めない名前”と、“???”の種族。


 あれは、なんだったんだろう。

 隠された情報……それとも、まだスキルレベルが足りないだけ?


 私は青いウィンドウを閉じ、深呼吸する。


「うん……きっと、そのうち分かるよね」


 クロが静かに喉を鳴らす。

 その音が、なぜだか少し安心させてくれた。


 私は完成したポーションを光に透かしながら、“鑑定”という新しい力が、これからどんな世界を見せてくれるのか――。

 少しだけ、胸を高鳴らせていた。

あとがき


見て下さりありがとうございます!

手探りながら、自分の好きと読者様の好きが重なるそんな境界線上の物語を目指してます!


続きが気になると思ったら、

評価、ブックマーク、リアクション等

よろしくお願いします!


――誰かの心に刺さる、そんな物語を貴方に――

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