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中二病剣士、スパイスに敗れる

――闇も光もスパイスの前では平伏す。――



ギルドで初ザマァを決めた翌日、

俺は街はずれの訓練場でチリパウダーを撒き散らしながら自主練していた。


「ふっ……カレーの香りが風に乗る……。

 今日も世界は平和だ」


「いや平和ぶっ壊してるのあなたですからね!」


 ミナ(受付嬢)がツッコむ。

 だが俺は胸を張った。


「インドの平和はスパイスから始まるんだよ」


「意味がわかりません!」


 そんな時――


 空気が急に冷え込んだ。



「……聞こえるか。愚かな者どもよ」


 訓練場の中央に、黒い影が立っていた。


 黒衣。漆黒のマント。銀色の長髪。

 そして大きな片眼帯。


 完璧な“中二病キャラ”である。


「私は《虚無を喰らう剣姫》ニコル……

 闇に選ばれし者だ」


「名前めっちゃかわいいな!?」


「(ギルド来るの間違えてない?)」


 ミナの突っ込みを無視して、ニコルは剣を構えた。


「昨日、スパイスで街を救ったと聞いた……

 だが、それは偽りの力!

 真の強者とは、“闇”を背負う者……!!」


「そっかそっか。はいはい、テンプレ中二病ね」


「テンプレ……!?」


「なろうでよく見るよ。

 カタカナ技名、黒いマント、片眼帯はガチャSSR級の中二病セット」


「やめろ! 私だって……!

 好きでこうしてるわけじゃないんだから!!」


「え、そうなの!?」



ミナが耳打ちしてくる。


「ラージュさん、この子ね……

 本当はただの冒険者なんだけど、

 “厨二こじらせすぎて友達がいない”って噂の……」


「あー、なるほどね。つまり――」


「な、何を話している!」


「(かまってほしいタイプだ)」


「黙れぇぇぇぇぇ!!!」


 ニコルが剣を向けてきた。


「勇者ラージュよ!!

 貴様の“スパイスの力”……試させてもらう!!」


「オッケー。インド式模擬戦ね?」


「違う! 闇の決闘だ!!」


「はいはい」



◆決闘開始


 黒い風が吹き、落ち葉が舞い上がる。


「来いッ! 闇を裂く剣、《アビス・ブリンガー》!!」


 ニコルの剣が黒い軌跡を描いた。


 ……エフェクトだけはめちゃくちゃカッコいい。


「すごい……! あれ本物の闇魔法……?」


「いや、ただの煙玉だよ」


「やっぱり!?」


 俺はスッと手を前に出した。


「《スパイス創造》ッ!」


 現れたのは――

 まばゆい黄金色の粉。


「なっ……その光は……何だ……?」


「ターメリックだ」


「カレーの粉ーッ!?」


「これが俺の闇……じゃなくて、スパイスだ!」



「くらえ!!

 インド式目潰し、《ターメリック・ジャッジメント》!!」


「やめ……やめろおおおおおお!!?」


 ニコルは目を押さえその場で転げ回る。


「ぐああああああああ!!

 眩しいッ!!! いや、痛いッ!!

 あとなんかカレーっぽい匂いするぅぅぅ!!」


 地面でもがきながら、涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。


「ミナ、止めなくていいの?」


「いや……なんか、ちょっと笑っちゃって……」


「それな」



数分後。


「……私の、負けだ」


 片膝をついたニコルは、

 完全に敗北した中二病キャラのそれだった。


「くっ……認めたくはない……

 だが……貴様のスパイス……

 闇を超える……!!」


「そこまで言われると嬉しいな」


「くそぉ……ッ

 負けたのに……なんか……カレー食べたくなってきた……」


「あ、デレ期入った?」


「入ってない!!」


「はい入ったー」


「入ってないって言ってるだろ!!(赤面)」



ミナがニコルの肩にそっと手を置く。


「ニコルちゃん……

 友達ほしかったら、ラージュさんのパーティに入れば?」


「は? やだ!!」


「やだ(加入フラグ)」


 俺は笑って手を差し伸べた。


「来いよ、ニコル。

 闇を抱えてようが中二病だろうが、

 インドのスパイスは全部受け止める」


「……っ

 ……ば、馬鹿じゃないの……?

 でも……まあ……その……」


 銀髪が揺れ、長いまつげが震える。


「……一応、仲間になってあげてもいい……」


「はい加入確定!!」


「うるさい!!!」



こうして――

俺のパーティに新たなヒロインが加わった。


黒衣の中二病剣士、

《虚無を喰らう剣姫》ニコル。


闇の力は弱いが、

ツッコミどころは世界最強だった。


 そして俺は思う。


――この世界、スパイスでだいたいなんとかなるな。


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