ドラゴンを見たい男 1
ピンクデューンというのがこの惑星の通称だった。
その名の通りかつてはピンクに輝く美しい惑星だったというが、第三危機を経て荒廃したE32星系の星々の例に漏れず、この辺境の星はピンクというより薄汚れた砂色の僻地、何もない未開の地。
ただ僕にとっては違う。
ここにはまだ野生の黒ドラゴンが生息する奇跡の星。
僕はドラゴンに魅せられていた。
動物の映像作家でもあった僕は野生のドラゴンが生息するというこの地への訪問申請をだしていたが、なかなか認められずこの星に来るまでは想像以上の苦労があった。
ピンクデューンに降り立ったときは興奮した。
今まで訪れたどの空港よりも入星が原始的であちこちで不備があったことすら気にならなかった。
というかその原始的システムに僕は助けられたのだ。
この星は僕の星と星交が結ばれておらず違法ルートで証明書を買ってきたので、杜撰そのものでなければどうなっていたことか。
ホッとしていた僕をけばけばしい色合いのぱっとしないドラゴンの看板が迎えたが、観光業者がいかに売り込もうとこの星の政府はよそ者が訪れることを嫌い入国申請が通らないのだから、観光開発なんてうまくいかないだろう。
それに僕はこの星の観光客向けドラゴンバレーなんてところでお茶を濁す気はなかった。
ぼくの目的は、説滅危惧種の野生のオニキスドラゴンを見ること。
そのためにはこの星の西湖水地方に向かうしかない。
コーディネーターに何度問い合わせても難しいの一点張りだった。
このピンクデューンはゆるい部族制がしかれており西湖水地方は特に閉鎖的なキリ部族の支配下にあるらしい。
とはいえ、ここまで来たからには、なんとかして竜の巣穴のある湖を訪れてみたかった。