大都市の魔法使い
幅広い都市の面積に数多くの高層ビル、忙しなく行き来を繰り返す人間の数々と乗り物が本来の気温よりも少し上がっていた。
ロングの赤毛を揺らしながら堂々と歩く、白いワンピースの20代前半の女性はメモ帳を見ながら場所を探す。
「まだ遠いな。お腹空いたしそろそろお昼にしようか」
そう呟いてその辺にあったベンチに腰掛け太ももの上で弁当の包みを開く。
3分の1食べ終わる。昨日女性の弟から貰った生ぬるい炭酸飲料を飲み、一息ついて残りを食べる。
片手間に携帯機でニュースをチェック。
『大都市に謎の緑色の電光現る!』
という見出しで突如現れた巨大なドラゴンをものの数秒で消滅させた内容だ。
記事のコメントには「神が現れたんだ!」「逆だよ、この世の終わり」など一喜一憂の意見が寄せられる。
「頑張ってるんだね。雷太君」
全て食べ終わった頃合いに微かに女性を呼ぶ女性の声がした。
「……様ー! 風音様ー! わたくしです! ツクモですよー!」
凄い勢いで近づいてて段々声が大きくなる。
無視して弁当を包み直す。わざとらしく「あー! 疲れたから帰ろうかな!」と負けない大声で体ごとベンチに対して横に向く。
会話可能な距離にまで近づいて、横を向いて不機嫌そうな風音と呼ばれる女性の顔を見て笑顔で小刻みに飛び跳ねた。
「いきましょーよー! あの猩々緋風音様が事件に関わると必ず解決すると噂! まさに『謎解かない少女』ですわ!」
古くからある通り名に余計に頭を悩ませる。用事があるのに現状一番会いたくない厄災が来たとも言う。
説明すると謎解かない少女とは、謎が謎にならないから謎解かないと呼ばれ風音が少女の時代からあったあだ名なのでそのまま引っ付いてる状態である。
本人はそろそろ少女と呼ばれたくない年だが。
「あのね、本当に用事あるから今日は無理。一人でやってきてよ」
ツクモが腕をクロス、片腕だけ高く上げる俗に言う厨二病が取りそうなポーズで「ふっふっふ」と二次元みたいな笑い方をする。
それを苦虫を噛み潰したような表情で視線を逸らした。
腕を伸ばし人差し指を風音の方に真っ直ぐ向ける。
「ズバリ、迷子の子供ドラゴンのお世話、なのですわ!」
「……あ? むりむり、パス。じゃあね」
目を点にしたツクモを横目に風音は表情を真顔に戻し、再び目的地へと歩き始めた。




