筆の魔女と緑色の雷電
大きな筆を持った魔女の背後には大きな門がある。門の先は山の祭壇へ続く道がありその場所は『星の祭壇』と呼ばれていた。
魔女の蒼い瞳には門を破って突き進もうとするサングラスにスーツをした数名の男達が拳銃を持って魔女の方へ銃口を見せる。
「私に対してのあの時の恨み? 覚えはあるけど逆恨みだよね。自分が被害を受けない内に帰った方がいいよ」
強気な言葉とは裏腹に冷や汗を垂らし歯を強く噛む。
「ここで終わりだ、ドロシー フォード。我が上司の恨み晴らさせてもらう!」
弾丸が一発放たれる。が一瞬にして直線をえがく人を殺めようとした塊は消え、真横から緑色の電流が走った。
銃を撃ったわずかな間合いを置いて撃った本人の腹部に命中した。死を覚悟したドロシーは瞳を閉じていたが、ゆっくりと再び開く。
残ったサングラスの二人が動揺して辺りを見渡す。少し冷静になって慌てて銃を構える。
凄まじいスピードで男の横に緑色の髪をした男子高校生が鬼の形相で姿を現し、緑色の電気を走らせた腕で、拳で一人殴り飛ばし5メートルほど飛ばす。
また姿が見えなくなるほどのスピードで移動し、今度はドロシーの少し斜め前に立った。
背を向けたまま護る対象を確認すると逃げまとう最後に残った男を逃がすまいと、一瞬で目の前に立って胸倉を掴んだ。
「言え! 何故1年後の今になって妹の友人を狙った!」
「分からない。少なくとも自分から言えるのは、あのお方の指示だからだ!」
そのままの姿勢で静止した。考えた結果、電気の能力を使う彼は一つの答えを導き出す。
「あの職業をしてた妹と違うからな、命を奪い取る事はしねぇ。だがよ、その上司に言っておけ。二度と悪行を働くなとな」
雑に前に投げ出すと、そそくさと男は逃げていく。
空は暗雲が立ち込めぽつぽつと小雨が肌を冷やす。
「貴方は、誰?」
「俺か? 名前は緑埜雷太。家族が世話になったと聞いたからな、挨拶しようと思ったら丁度ピンチだったんで助けた。ところで、」
「は、はい」
ドロシーに向かって手を前に突き出す。迷いも無く柔らかい脂肪の塊を掴む。
あまりにもナチュラルに掴まれたものだから時が止まったが、再び動き出す時には氷の魔法で雷太を氷漬けにする大惨事が起きてしまった。
「変態! 警察に連れてい行く!」
氷を越した遠い声で必死に意思疎通を図るが、ぷりぷり怒って携帯を取り出して通報したものの、人が凍ってるだの人が意識不明だの亡くなってるだので大騒ぎになったとさ。