ヲタッキーズ106 不統一教会の掟
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第106話"不統一教会の掟"。さて、今回は新興宗教の後継者を自負する神父が爆殺されますw
背後に巨額の教会資産を狙う陰謀が渦巻く中、ヲタッキーズは秋葉原を揺るがす大事件へと巻き込まれていきます。
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 消された教祖
「非ニュートン流体?」
「YES。負荷応力で粘性が変わる液体のコトょ」
「え?何?」
僕は、モニターの中の超天才を睨む。
「つまり!叩くと固体で、つつけば液体なの。コレは転移システム解析の実験ょ」
「あれ?整数論じゃなかったっけ?」
「だから!リーマンゼータ関数が…何妙法蓮華」
もうルイナが何を喋っても(馬の耳にw)念仏状態だ。僕達は今、秋葉原UDXのペデストリアンデッキに泥?を貯めたビニールプールを広げ"世紀の大実験"に挑むトコロだ。
因みに、秋が深まる中、僕は海水パンツ。寒いょー←
「コレで準備完了ょ!テリィたん、GO!」
「まかせとけ!神田明神ょ照覧あれ!」
「きゃー!テリィたんが…沈む!」
全体重をかけて泥の海に踏み出した僕は、そのママ沈むw
足元の泥の海は打てど叩けど"固体"になる気配もナイ←
たちまち沈む僕←
「助けてぇ!ミユリさーん!」
「姉様、テリィたんが呼んでるみたいだけど」
「もう少し様子を見ましょう」←
超天才ルイナの頼みをホイホイ受けて海水パンツになった僕をミユリさんは快く思ってない。結構ヤキモチ焼きナンだ←
「いつもメイドに泥レスさせてるバツょ。タマには御主人様も泥に塗れなきゃ」
「あら?姉様、テリィたんに泥レスとかやらされてるの?」
「え。あ、いや、ソレは…コーヒーでも飲みに逝く?」
泥の海に溺れる僕を尻目にお茶に出掛けるヲタッキーズw
地下のラボでは、ルイナが実験ノートの記載に余念ナイ。
「あと10単位、澱粉質を増量しなきゃ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田亀住町の"不統一教会"のヲタク寺院。
"日曜礼拝"が終わり老若男女が出て来る。
「みなさん、良く来てくれました。本日お集まりの選バレシ者達に神田明神の祝福あらんコトを…」
「ロシアのウクライダ侵攻により、黙示録の7つの封印が解かれ、フーチンが痴女の悪魔を秋葉原に放ったのです…」
「愛と性欲とコロナ。そして"痴女の悪魔"が私達ヲタクを蝕む。では、ヲタクを滅ぼす"痴女の悪魔"とは何か…みなさん、コーヒーでも如何です?」
ヲタク寺院の外で、信徒に無料コーヒーが振る舞われる。
穏やかな日差し。信徒同士の談笑。心地よい神父の説教。
「ダーリン?大丈夫?…キャー!私のレイグがっ!」
猿顔のイケメンが倒れ、恋人?の女子が悲鳴を上げる!
見ると中庭のアチコチでも信徒が次々倒れ苦しみだすw
「誰か!助けて!神田明神ょお助けあれ!」
絶望してヲタ芸を打ち始める信徒達←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「もっと"大閃光"は短く持って、コンパクトに打つ。地下の現場は狭いからね」
「そっか。短くコンパクトなのね」
「そーゆーコト」
失敗?したUDXの実験を終え、僕は裏アキバの芳林パークでミクスにヲタ芸を教えてる。"パンダースネイク"とか…
「ミクス、楽しんでる?」
「楽しいに決まってる!天気は良いし、テリィたんを独り占め…でも、泥んこの臭いがスル。ミユリ姉様に泥レスさせてるって噂、ホントだったのね?好きなの泥レス?」
「な、な、なんのコトかな」←
絶句。しかし、ミクスの秀逸な返しw
「まるで"おぉブラザー"ね」
「社会派映画"サリバンの旅"か?僕のお気に入りだ」
「知ってる…あら、役所から電話だわ」
ベンチに置いたポシェットからアニソンが流れる。
「はい、ミクス。え?新興宗教の寺院で集団中毒?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び神田亀住町の"不統一教会"のヲタク寺院。
パトカーや救急車が駆けつけてゴッタ返してる。
「新興宗教って…まさか世界洪水教?」
「いいえ。不統一教会ょ。洪水教より危険なカルト。集団中毒みたいナンだけど、神だけが治癒出来ると信じてて、神田消防の救急車の入場を拒んでる…ってかミクス、何でテリィたんと一緒なの?ソレにテリィたんの髪、ビショ塗れでメッチャ怪しい」
「妬かないで、ラギィ。次長検事の特権ょ…でも、救急の要請があったンでしょ?早く救助すれば?」
現場を仕切る万世橋警察署のラギィ警部は教会を指差す。
正門の鉄柵はピタリと閉じられ、鎖と鍵でガンジガラメw
「信仰の自由を犯すな!警察は帰れ!」
「教義により治療は受けられない。治せるのは神のみ!」
「不法侵入を許さない。我等は信仰により治癒される」
鉄柵越しに口々に叫ぶ信徒。早くもラギィはウンザリ顔だ。
「ウチは、既に3件の訴訟を起こされてる。今回だって通報者は匿名だし…」
「でも、あの中にいるコトは確かでしょ。入って」
「はいはい、次長検事様。そこまで言うなら令状ぐらい出してょ…おーい踏み込むわょー!誰か!バール!」
制服警官が大型バールを持ち出すと信徒から悲鳴が上がる。
真正面に仁王立ちスル髪がオレンジ色の女信徒が絶叫スル。
「ヤメて!寺院に入らないで!私達には憲法で保障された信仰の自由がある!」
「下がって!万世橋警察署です!彼等は、神田消防。私達は、要請を受け、アソコで倒れている人達を救助に来ました!通してください!」
「みなさん、この人達をお通しスルのだ。下がって!みんな、下がって!コレは神のお告げだ!」
信徒はモチロン、警察と消防も耳を疑う。
不統一教会の神父が警官隊を招き入れる?
「神父様!寺院に異教徒の侵入を許すのですか?!」
「罪深き我々には神の国が見えていない。どうか落ち着いて!ココは落ち着くのだ!」
「救急車を呼んだのは私ょ!私の大事なレイグを助けて!コッチょ!おまわりさん!」
絶望してヲタ芸を打ち始める信徒達←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「警部!不統一教会は1978年に創設。93年にNRM入りしてます」
「NRM?」
「新宗教運動です。黙示録の封印がウクライダ侵攻により解かれたと信じている。フーチンが解き放した"サタン"が人類を滅ぼそうとしているとの教義です」
報告を聞き溜め息しか出ないラギィ警部。
「普通、カルトって自分だけが真っ先に救われると信じてるょね?真っ先に自分達だけ天国に行くと思ってルンじゃナイの?」
「ブブー。聖書って良く読むと144,000人のユダヤ人は、既に選ばれて神の国に受け入れられてる。後に残った私達は、地上に留まり、天国の座をかけて(痴女のw)悪魔と戦わねばならないそーです。不統一教会は、ある意味、聖書を文字通り解釈してるに過ぎない」
「何がブブーょ。失礼ね。じゃ教団が現代医療を拒む理由は?」
上司と争っても得はナイので下手に出る若い刑事←
「警部にワカラないコトは、私にもワカリマセン。多分アレコレ混ぜこぜにして第2の教義"2nd聖書"をでっち上げたからでしょう…」
「警部!現場で無料で振る舞われたコーヒーからヒ素が検出されました。現時点で死者2名、重体3名。他26名が被害に遭ってます。地下水も調べましたが数値は正常。土壌から残留毒物などは検出されません」
「昔、カルト教団の集団自殺もあったわね。人民寺院だっけ?あの時は、ジュースにシアン化合物だった」
1978年、南米ガイアナで信者918人が死亡した事件だ。
「無料コーヒーを淹れたのは神父ですが、淹れたらキッチンに置きっ放し。誰でも出入り自由でした」
「ヒ素の入所先は?」
「昔から農薬として使われてます。入手ルートを特定スルのは困難です」
ラギィは、別の観点を示す。
「差別、憎悪、造反の可能性はナイかしら。腹を立てた近隣住民や、教会に恨みを持つ元信者、子息を教会に奪われた信者の親とか…」
「教会は厳重に施錠され、門には有刺鉄線、監視カメラもドッサリ配備」
「さすが被害妄想の神の国ね。確かに防犯には有効カモ」
「コレはもう宗教要塞です」
ますます出るのは溜め息ばかりw
「せっかくの非番の日曜だったのに…よぉしヲタッキーズにも手伝わせよっと」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヲタッキーズは、僕の推しミユリさんが変身したムーンライトセレナーダーが率いるスーパーヒロインの集団だ。
民間軍事会社の形態を取り"リアルの裂け目"からアキバを守る南秋葉原条約機構の傘下にアル。一応僕がCEO。
「またラギィのトコロから出撃要請が来たけど…コレって"リアルの裂け目"と関係ナイんじゃナイかな」
「だったら断ってょテリィたん。コレ、恐らく内部の者の犯行だと思う。エアリ、カルトの信者数は?」
「1000人はくだらないわ、マリレ」
エアリは、ヲタッキーズの妖精担当。マリレは、ロケットガールだ。2人共、普段はメイドなので今もメイド服を着用。
ミユリさんも変身スル前は"潜り酒場"のメイド長だからメイド服だ。ヲタッキーズは全員メイド服。萌え萌え眼福←
このメイド軍団の横でホワイトボードに数式を殴り描いてるゴスロリの車椅子は超天才のルイナ。
その隣のジャージは、相棒のスピア。彼女はストリート育ちのハッカーでジャージの下はスク水w
「科学の進歩には喜んで身を捧げる覚悟だけど、次は実験の考案者自身が神の試練に立ち向かうべきだな」
「大丈夫。次は必ず成功スルわ」
「科学者自らが御身を捧げ、初めて勤勉といえるのでは?」
僕は、史上最年少で首相官邸のアドバイザーになった超天才をからかう。彼女は"非ニュートン流体"実験の考案者だ。
「ちょっと、テリィたん。私は勤勉よ?こうやって今も濃度と温度の係数を計算してるし」
「おいおい。集中してくれょ。今朝、カルト教団が起こした大量殺人狙いの集団毒殺未遂を分析してくれてルンじゃナイの?」
「何ソレ?」
車椅子の上でキョトンとした顔のルイナ。
「ヒ素だょヒ素。同時多発テロ対策で東京メトロの末広町ステーションに大量の備蓄解毒剤があって助かった」
「ジメルカプロールね?」
「(何だソレ?)教会は、最初は治療を拒んだンだ」
ルイナは理解出来ズ、苦悶の表情w
「ソレが"信仰治療"と呼ばれる…」
「YES」
「わかった。でも、精神障害者の集団でない限り、毒殺者の動機と行動は、社会力学で簡単に推測できるわ。社会ネットワーク分析でカルト教団の隠れた力学構造を示せるけど」
おぉ何を逝ってるのか良くわからないが役に立ちそうだ←
「ダメょルイナ。コイツら精神障害者の集団そのモノじゃん。どれだけいかれたクソ野郎なの?」
「クソ野郎?…どーしたんだょスピア?」
「テリィたん、あのね。科学の恩恵を拒むコトは、神の恵みを拒むコトに他ならないの。創造主の啓示は、その創造物の中にある。ソレを否定するコトは、神の知性を否定するコトに他ならないわ。わかる?」
ワカラナイ。頭をヒネる内にスピアはラボを出て逝くw
「世界洪水教のシスターと上手く逝ってナイのかな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"は、アキバに野菜市場があった頃からの老舗病院がリニューアルしたモノ。今も昔もアキバの中核病院。
ミクス次長検事とミユリさんは、急性ヒ素中毒で担ぎ込まれた信者の事情聴取でゴッタ返すERの廊下を病室へと急ぐw
「ねぇミユリ。テリィたんの好きな洋画、知ってる?」
「"カルフォルニアドールズ"でしょ?ヒロイン達が泥レスやるし」
「え。テリィたんって泥レスが好きなの?意外…ってか、ミユリ、何でソンなコトを知ってるの?」
言葉に詰まるミユリさん。病室から響く怒声に救われるw
「オヤジ!ソレはヒドいだろ!」
「レイグ!お前こそ自業自得だ。こうなったのも、お前が性的に堕落したからだぞ!悔い改めょ」
「お断り。もう18才だ。勝手だろ!」
親子喧嘩?慌てて止めに入るミクスとミユリさん。
「ミユリ。病人をよろしく。私はコチラと…」
父親?を外に連れ出すミクス次長検事。
「オヤジは、いつだって俺を支配出来ると思ってる。もうウンザリだ…ってか貴女、メイドさん?」
「そうょ。で、何かあったの?御主人様」
「俺はドリィを愛してる。だから、共に1晩過ごした。もうコソコソしたくナイんだ!」
涙ながらに絶叫するイケメンは、猿顔←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方ミクスが連れ出した父親は…やゃ?教会にいた神父だw
「首相官邸からどう思われようと、我々は教会であり、カルトではありません。コレは明らかな宗教差別です。私達は、信仰ゆえに狙われたのです」
「で、信者は神父の言いなり?」
「サタンの時代を生きる我々は、法を隠れ蓑にしたサタンのヲタク補完計画と戦わねばなりません。信者達は、導きを求めているのです」
ムダに能弁だ。さすが、新興宗教の神父w
「ところで、神田消防の救急車を受け入れた神父の判断は、信者の多くには不評でしたね」
「残念ながら不統一教会には、信仰治療の概念に聖書の誤った解釈がアル。私は、ソレを改めるべく、評議会と話し合っているトコロです」
「私は、最高検察庁 次長検事のミクスと申します。教団の過去の資料を拝見出来ますか?拒むなら手続きを取りますが」
何気にプレッシャーをかけるミクス。神父は涼しい顔だ。
「スザンに必要な書類をお見せするよう、話しておきます」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「スゴいわ。門を入ってから、もう4代目の監視カメラょ。宗教的心情がイジけている上に、被害妄想も強烈だわ」
「スピア、その位にして…ミクス、押収した監視カメラの画像には何か写ってたの?」
「何もw部外者の出入りナシ。コーヒーサーバーの置き場所はカメラに写らないよう、良く考えられてた。つまり、内部の者の犯行かな」
神父が約束した過去の書類を"拝見"しに教会を訪問スルのは、ミクス、ミユリさん、ルイナの代理で相棒のスピア。
「信者は何を恐れてるのかしら」
「異教徒ね。信者は、自分達だけが人が守るべき教義を理解してると思ってる。そして"評議会"は、教会内外で異を唱える者全てを悪魔的と見做す…スザンさん?ミクス検事です。コチラはミユリさんとスピアさん」
「みなさんの力になりたくて参りました。過去の資料を見せてください」
げ。スザンは、鉄柵越しに押し問答したオレンジ髪の女だw
「既に貴女方は、私達の魂を危うくしてるw貴女達の汚れた薬が流れるカラダでは、神田明神に顔向けが出来ナイわ?!」
「でも、その汚れた薬がなければ、死者は何10人にも及んだわ!狂信的ゆえ、ソレすらもワカラナイの?」
「汝、ジャージの女子ょ。貴女も科学を盲信した過去の独裁者達と同類ね。例えば、フーチン、ジーシンピン、偉大なる半島の明星にして暁のBigbang…」
スピアは1歩も引かナイw
「3大独裁者と比べるとは神も呆れるわ」
「ジャージ娘!神の名を無駄に語るな!」
「ソレ、アンタでしょ!何よりムダなのは、貴女に自制を求めるコトね!」
さすがにミユリさんが止めに入るw
「スピア。少し外して」
「わかったわ、姉様。じゃバイバイ」
「私達は、信仰の自由を尊重します。過去の資料を見たいだけで、中立的な立場です」
ミクスの言葉にうなずきながらもブツブツ口走るスザン。
「人は、善意のつもりでも地獄への道を転がり落ちて逝くモノなの…」
「ミユリ、一緒に来る?」
「ううん。スピアと話してくるわ」
背後で監視カメラを睨みつけてるスピアを振り向く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「教会の記録書類は、娘のドリィが用意します」
紹介されたドリィは猿顔イケメンの彼女だw
オレンジ髪のママの指図で耐火金庫を開放。
「おおお。こりゃまたスゴい大金が…しかも現金で!」
「サタンの手下に預けるより安全です」
「ママ、落ち着いて…この不統一教会は、父のリチド・ドランが創設しました。以来、教会の財務の記録は、私達母娘が管理しているのです」
オレンジ髪のママは吐き捨てるように言う。
「でも、近々エズラ神父と、あのロクでもナイ息子に乗っ取られるでしょうけどね!」
「ヤメて!ママ、レイグは良き人ょ」
「ドリィ、貴女はダマされてるの。サタンに」
ママに比べればマトモに見えるドリィはミクスに話す。
「去年の夏に父が亡くなって。不統一教会は今、過渡期にあります」
「お気の毒に。お父様の死因は?」
「心臓発作でした」
ミクスは腕組みして思案顔。
「で、エズラ神父が教会の後継者に?」
「YES。息子のレイグを連れて3年前に入信しました」
「…ドリィ。お父様は心臓発作だと聞いたけど、ヒ素中毒は心不全を引き起こすの。お父様の毛髪とか残ってナイかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視室。
「教会の中庭には、四半世紀後に掘り起こすコトになってたタイムカプセルが埋められてた。その中に教祖リチド・ドランの遺髪が収められており、遺族のドリィがタイムカプセルの発掘に同意した。ただし、教会の尊厳を守るため、自分の立ち会いが条件」
「自分も様子を知りたいワケね」
「…みんな揃った?タイムカプセルを開封スルわょ」
いつもは無口に死体を解剖スル検視官が、ピンセットでフタを開けタイムカプセルを開封。中から遺髪を1本抜き取る。
「はい。コレでお終い」
「え。どーゆーコト?」
「あのね。もともと人間の体内には、ヒ素や水銀がアルんだけど、毛髪検査でその量を確認するワケ」
ラギィは、馴染みの検視官に気安く話しかける。
「マジ?死んで何年も経つのょ?」
「ナポレオンの遺体からだって検出出来た。原子吸光分析法っていうの。この機械で高電流を流し、試料を自由原子化してヒ素濃度を測定するワケ。通常の測定値は10から20ppb程度」
「毒殺だったら?」
単刀直入なラギィの質問。
「致死量は1万以上」
「貴女達!私の夫にナンてコトを!」
「ママ。私はパパの死の真相を知りたくて…」
地下にある検視室に乱入するオレンジ髪のママw
「頼んでないわ!彼は私の夫。私だけの夫ょ!教会のみならズ、夫のカラダまで冒涜スルなんて!」
「落ち着いて!」
「ビービービー…」
その時、検査終了のブザーが鳴り画面に数字が並んで逝く。
「…7, 4, 5, 6, 2」
「コ、コレは…いったい何なの?」
「奥さん。御主人は毒殺されました」
第2章 爆発する教会
万世橋の取調室。
「教祖ドラン神父は毒殺され、その後アナタが不統一教会を引き継いだワケね?」
「YES。ただし、私は教祖が亡くなった日には、宣教のためクアラルンプールにいて、葬儀のため急遽帰国しました」
「貴方は、教祖の妻スザンと対立していますね?」
窓のない取調室で対峙スルのはエズラ神父とラギィ警部。
「スザンは、過去に固執している。津軽のアップル農園で信者が11人で暮らしていた30年前とは状況が違う」
「ソレで入信3年目の貴方が永世教祖に名乗り出た?」
「教会への差別を評議会は懸念している。差別の根源にある首相官邸によるカルトのレッテルを取り去り、教会の伝統を守るのが私に与えられた使命です」
取り調べを受ける身なのに胸を張るエズラ神父w
「不統一教会の伝統とは…」
「痴女の悪魔と戦う伝統のコト?」
「YES。警部も日々戦っている。この取り調べもそのためのモノでしょう?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。パーツ通りの地下に秘密裡に作られたSATO司令部に併設されているラボで、超天才のルイナと相棒のスピア。
「ルイナ。エズラ神父の情報流入率は?」
「ん?ソレ、発信でしょ?スピア、良く見て」
「あら、そーだった。アルゴリズムを描き直して再計算しなきゃヤバ」
このタイミングでラボに来る僕。
「うわぁ!マーカーペンの匂いで気絶しそうだ!」
「大袈裟ね!ラベンダーの香りょ?私は好きなのに」
「トイレの芳香剤みたいだ…ラギィがエズラ神父を取り調べた時の調書が出来たょ。どーやら、教会内で指導権争いの内部抗争があるらしい」
大陸の国の共産党大会みたいだ…
「有力情報だわ!裏の力学関係がわかれば、集団毒殺の動機が浮かび上がる。ソーシャルネットワーク分析では、表向きの組織構造と隠れた構造を調べる。例えば…マンションの基盤設備は、壁や床の裏にアルでしょ?配管、電気系統、電話回線。不動産価値が1番高いのは最上階だけど、マンションの神経中枢は地下にある。つながり、アクセス、情報の3つの変数から、教会の力学的な構造が浮かび上がるワケ」
「誰がカヤの外カモ?」
「スザン・ドランって、スピアが噛み付いたオレンジ髪のオバサンじゃなかった?」
アルゴリズム描き直し中のルイナが顔を上げる。
「別に噛み付いたワケじゃ…ただ心の狭さがタダゴトじゃナイと指摘しただけょ」
「いつも学ぶ気のない人には教えるな、って言ってるでしょ?全く、スピアは…」
「死んだ親父は、宗教の話は争いの種だからスルなと言ってたな」
お手上げと言う素振りで部屋を出て逝くスピア。
「テリィたんのパパさんの言う通りだわ」
相棒が出て逝っても平然と計算を続けるルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部のギャレーで、大好きなパーコレーターで淹れた薄いコーヒーを紙コップで飲む。コレが僕の大事な時間←
「テリィたん。新情報ょ」
ボンヤリ見てたスマホに鼻息洗いミクスの画像が割り込む!
「な、なんだょいきなりステーキ」
「神父のエズラは、教会への法的認可と引き換えに、7つの教義改正を約束してる。その内の1つに治療選択の自由が挙がってるわ」
「へぇ真っ当にナル気なのかな」
フフンと鼻で笑うミクス。
「金儲けのタメょ。教会が法人化されれば、固定資産税だけで年間1000万以上が浮く。信者は、人生収入の75%を寄付するキマリで、ソレをエズラが全額管理してる。法人化して非課税になれば、年間1000万が丸々エズラの懐に転がり込む計算ょ。立派な動機になるわ」
「でも、創設者の殺害時には、彼はKLにいたんだぜ?」
「でも、今回は現場にいた。そして、信者全員に一般の薬も悪くないと思わせるコトに成功した」
僕は、頭をヒネる。
「すると…犯人は2人?共犯がいるのかな」
「未だ何とも言えないわ。"先が読めない馬鹿げた旅"だモノ。ね?テリィたん」
「お?またまた社会派映画の"サリバンの旅"だね?見たのか?」
画面の中で、僕を指差し片目をつぶるミクス。
「テリィたんをしっかりリサーチしただけょ。己の敵を知れ。テリィたんも、私をリサーチして」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「えへん、えへん、えへん」
フト気づくとチャットルームに万世橋の捜査本部全員が入ってるwぎゃ全部聞かれた?赤面スル間もなくレクが始まる。
「では、リモート捜査会議を始めます。ルイナです。カルト教団の力学を調べてみました」
「えっと、エズラが法人化すればカルトでなくなるわ」
「YES。折り込み済みょミクス。随分と抜け駆けしてくれたわね」
微かに赤面したママ横を向くミクス次長検事。萌え←
「今回、隠れたソーシャルネットワークもまとめてみた。力関係、財力や婚姻の有無などから、不統一教会を力学的に分析してみたワケ。以前はスザン・ドランが組織のゲートキーパーだった。あらゆる階層のネットワーク情報を一元的に管理していたわ」
「そして、教会の資料を全て耐火金庫に仕舞い込んでいた」
「YES。そして30年にわたり、陰で教会の実権を握る力の源泉にしていた。だが、ココ数年でスザンの影響力は急速に薄れて来た。エズラ神父が教祖である夫と一緒に活動を始めてからね」
モニター画像には複雑な人脈図の線が太くなったり赤くなったり。そして、中には細くなって消えてしまう線もアル…
「スザンはエズラに地位を奪われた?」
「YES。孤立し、失脚した」
「ソレで夫を殺したの?」
ルイナの意見は異なる。
「ううん。ソレじゃ逆効果だわ」
「もしかしたら、エズラを背教者にするため、治療を求めるよう仕向けたのカモしれない」
「だとしたら、スザンの自宅にその痕跡があるハズね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査会議がリモートで白熱スル頃、僕はスピアとギャレーでお茶wいや、サボリーマンじゃなくスピアに呼び出されて…
「学生って楽しいだろーな。また、世界征服を夢見る25才に戻りたいょ」
「テリィたん。私は、とっくにソンな夢、捨てたわ。征服したって、手に入るのはタカが世界ょ?」
「スピア…何があった?」
紙コップに入ったコーヒーをハッカーに差し出す。
「不愉快なオレンジ髪の女が、全ての科学をフーチンと痴女の悪魔に結びつけた」
「変人をまともに相手しちゃダメだょ」
「そんなのわかってる。世界洪水教のシスターと闘ったし、瞑想もした。調和と思いやりと寛容を持とうとしてるけど、あのオレンジ色の髪の女が、私の心に激しい怒りを植え付けるの」
スピアは…誰かに話を聞いて欲しいのだ。多分。
「その女性も、答えを探しているんだ。きっと、自分なりの真理をね。ただスピアとアプローチが異なるだけだ」
「そんなコトじゃ正当化されない!私に毒を吐きかけようとしてる!」
「正当化ナンかしてナイ。ただ、誰もが大型加速器の中に神を探す知性と感情を持ち合わせてるワケじゃない。人は、それぞれの方法で、自分が理解出来る世界で、答えを探スンだ。必死であればあるほど、身近な答えにすがってしまう。ソレは確かに過ちカモしれないが、必ずしも悪とは限らない」
スピアは…目を見開く。
「…そうカモしれない。私は、コレまでずっと完璧なヲタクとの調和を探求してきた。ヲタクと精神性の2つは、互いに共存するのみならズ、補完し合う。あの女性の常軌を逸した言動や無知の中に、私は自分自身の滑稽な姿を見たンだわ。そうょ。私も彼女と同じく偏狂なんだわ。ソレに気づかせてくれて、ありがとう。テリィたん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スザン・ドランは吠えている。
「警察に神田明神の裁きが下るわ!」
「OK。受け入れるわ」
「何…不実なペテン師め!」
最後は礼拝堂に入って逝くエズラ神父を見てだ。
さらに、艦砲射撃のように罵詈雑言を浴びせるw
「教会を冒涜するなんて。逃げても無駄よ。天罰ょ下れ!」
万世橋による令状捜査。ラギィ警部がスザンら怒れる信徒らを食い止めている間に、鑑識は教会内を隈なく家宅捜査。
「警部。居住区の洗濯室からヒ素の痕跡が見つかりました。かなりの濃度です」
「決定的な数値?」
「YES。かなりの高濃度で、明らかに室内で容器から容器へ移し替えた後と思われます」
ソレを聞き驚愕するスザン。
「そんな…一体誰が?」
「発見状況からして、貴女の関与が疑われます」
「何ですって?私を疑ってるの?私は被害者ょ?」
呆然と立ち尽くすスザン。ラギィが後ろ手に手錠←
「スザン・ドラン。貴女を逮捕します」
「神田明神も照覧あれ!コレは試練なのですね?どうぞ私にお力を!」
「貴女には、弁護士を呼ぶ権利が…」
どっかーん!
次の瞬間、礼拝堂の全ての窓から爆炎が噴き出る!
ガラスが粉々に吹っ飛びメラメラと真っ赤な焔が…
「キャー!」
「生存者を救助!早く!」
「消防を呼べ!」
ラギィが礼拝堂に飛び込むと内部は火の海。噴煙が立ち込め息が出来ない。地獄絵図の中で泣き叫ぶ声、のたうつ信者w
「助けてぇ!」
「コッチょ!今、助ける!下がって!」
「未だ父が焔の中に…」
救出され中庭に寝かせられた信者の中には、神父の息子レイグやオレンジ髪のスザンの娘の姿もアルが黒く煤けているw
「ドリィ!ドリィ!大丈夫?」
連行されるスザンが呼ぶが、帰って来るのは冷たい視線。
娘のドリィは、同じく被災した恋人のレイグと抱き合う。
レイグはラギィに尋ねる。
「炎の中に…炎の中に未だ父がいました!」
「落ち着いて、レイグ君」
「父を!父を助けなくては!」
ラギィは悲しげに首を振る。
「エズラ神父は…助けられなかったわ」
第3章 神父は2度死ぬ
やがて、パトカー、消防車、救急車が続々駆けつけ、中庭は警官、消防士、ヲタッキーズでゴッタ返して大混乱となる。
「死亡者は?」
「1名。エズラ神父のみです、ラギィ警部」
「神父の御子息レイグ・エズラ君と教祖ご令嬢ドリィ・ドランさんは、負傷スルも奇跡的に無事でした」
駆けつけたムーンライトセレナーダーが声をかける。
「ラギィは大丈夫?火の中に飛び込んだって聞いたけど」
「大丈夫ょ。若い連中が飛び込むモンで、私も仕方なく…」
「仕方なく、レイグ君やドリィさんを助け出した?ラギィ、貴女は火事場の英雄ね。で、爆発の原因は?」
駆けつけた鑑識が手短かに報告。
「不明ですが、礼拝堂のキッチンからヒ素の粉塵を検出」
「げ。ヒ素で炭鉱みたいな粉塵爆発?スザンは?」
「拘束してます…彼女の仕業でしょうか?」
その間も、周囲はホースを抱えた消防士、怪我人を乗せたストレッチャーを押す救命士、規制線を張る警官が右往左往w
「レイグとドリィは、何で礼拝堂にいたの?」
「レイグは、ドリィと一緒にエズラに会いに来たと言ってます…因みに、この2人のヒ素入りコーヒー事件におけるアリバイは、極めて弱い」
「うーんパパを殺し、ママは刑務所に入れて、自分達は結婚して不統一教会を乗っ取る気?でも、レイグもヒ素入りコーヒーを飲んで苦しんだり、礼拝堂で吹き飛ばされかけたりしたょね?」
ココまで話を聞いたラギィのまとめ。
「もし、犯人だとしたら、相当なバカか、よっぽど気合いが入ってるか、のどっちかね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたんの洞察のおかげで、モノゴトの本質が明らかになったわ。私の中の愚かな心に気づくコトが出来た。テリィたん、いつものコトだけど thank you」
「己の身勝手さにも気づいて欲しいな」←
「うふヒドい言い方だけど、テリィたんだから許す…対ショック・対閃光防御!」
波動砲の発射直前を真似て100均のゴーグルをかける僕達。
ペデストリアンデッキに今度はビニールハウスを建て実験w
「スピアのハウス退出を確認。実験バージョン17をスタート…反応なし」
「点火してみる?…で、リィたん。私、何処まで話したっけ?」
「え?あ、本質とか、愚かな身勝手とか…」
ビニールハウスから少し離れたテーブルにPCや観測機器、電源ターミナルやコードリールを載せて実験本部としてる。
「あ、テリィたん。スザンを身勝手に攻撃したのは、私自身に対する猜疑心の表れだったと思うの」
「(うわ面倒臭さそw)猜疑心?スピアは、何を疑ってるの?」
「私のヲタクへの疑問ょ。数々の萌えは、ヲタク心の表れなのか。それとも、ヲタク心の欠如なのかってね」
僕は首を傾げる。
「ソレって、その二者択一で整理しないとマズい?」
「え。だって、コレは重大な問題ょ。古今東西の宗教家は、みんな言うでしょ?"敵はいない。あるのは己の揺れ動く心だ"って…」
「ねぇお2人、実験に集中してね。礼拝堂爆発の原因は、高熱とヒ素ょ。昔、製糖工場で似たような粉塵爆発があったの」
地下のラボにいる超天才ルイナからお叱りw
「さっきからズッと礼拝堂のキッチンにあるモノを使ってヒ素の爆発再現テストをしてるけど…今のトコロ、何も爆発しないょルイナ」
「ルイナ!その製糖工場では、どうして"引火の目覚め"?」
「え。引火って寝たり起きたりスルの?」
違うょ"インカの目覚め"はお芋のブランドだw
「製糖工場の機械の火花が引火したの、ってかインカが目覚めたって言うか…」
「だろ?だから、礼拝堂の件も計画的な爆発だとすれば説明がつく。じゃ…イグニッション」
「わぉ」
ビニールハウスの中で小爆発が起きて焔が上がる←
「実験の結果、礼拝堂の爆発は事故じゃない可能性が高まった。ルイナ、今までやってくれたネットワーク分析との関係を整理してくれ」
「OK。今までのネットワーク分析が金槌だとしたら、今度はメスの出番ょ。アフィニティ分析が適用出来るわ」
「しまった…」
地上の僕とスピアは顔を見合わす。超天才ルイナの引き出しは無限だ。またまた止まらない絶好調トークのスタートだw
「古典的な例を話すわ!ビールとおむつの関係ょ(ドチラも縁がナイょw)。ある雑貨店で調べたら、おむつと一緒に良く売れるのはビールだと分かった。つまり、妻にオムツの購入を頼まれた夫は、ついでにビールも購入する傾向にあるワケね。で、2つを並べて陳列したら、どちらの売り上げも上がった」
うーん早くも半分ぐらいしかワカラナイ…
「以上の観点から、アフィニティ分析に相関ルール分析の視座を追加してアルゴリズムを描いた。その結果、この犯罪は共犯関係によってなされたと断定出来た。さらに、容疑者の関係性や行動を見直したトコロ…何度やっても結果は同じ。つまり、ドリィ・ドランに突き当たる」
ホ、ホントか?!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、最高検察庁のミクス次長検事のオフィスに、今週の御当地ランチパック持参で訪問。因みに新潟苺&ホイップだ。
「ルイナの言う通りだわ。捜査は洗い直しが必要ね。でも、ドリィ・ドランには動機がないわ」
「恋する彼氏とグルなんじゃナイか?愛の奴隷説」
「シバの女王?今どき流行らナイわ。あのオレンジ髪のママにマインドコントロールされてるとか?」
ソコへ眼鏡美人のアシスタントがファイルを渡しに入室。
僕を見て微笑むので"仕方なく"ランパを見せ愛想笑い←
「ありがとう、サユナ。ソレとテリィたん。私のアシスタントに何を聞いても無駄だから」
「え。サユナ、僕のコトを何かチクったか?」
「だって…私のボスなのょ?」
ココであろうコトか僕にウィンクするサユナ。
慌ててミクスに視線を戻したら…睨まれてるw
「ねぇ!私の何を聞き出そうとしたの?」
「秘密だ。ただし、調査は既に終了している」
「何かわかった?」
小首をかしげながら楽しそうだが、目が笑ってナイw
「まぁ概括的にね」
「ウソょ。収穫ゼロでしょ?」
「今、とりまとめ中だ」
口の中のイチゴが砂利の味に変わるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヲタッキーズ出撃。エアリとマリレが、ルイナの知見を基に不統一教会で死亡したエズラ神父の御子息レイグ君を訪問。
「レイグ。貴方もヒ素入りコーヒーを飲んだ口ょね?その時だけど、ドリィとはズッと一緒だったの?」
「ズッとじゃナイ。彼女は、お母さんと朝の祈りをスルって1時間ほど外して、その後、戻って来た」
「あら。毒を盛るには充分な時間だわね」
メイド2人の誘導尋問にアッサリ引っかかるレイグ。
「え。ドリィがコーヒーにヒ素を?そんな。前の晩にヤッたら、あんなに喜んでたのに!」
「イッたフリね。演技ょ。3つの事件で彼女だけアリバイが曖昧なの」
「3つの事件?」
ヒ素コーヒーに礼拝堂爆破…そして、教祖である父親の死←
「信じられない。ドリィが俺にヒ素入りのコーヒーを飲ませたのか?!」
「ソレ、事件の朝のコト?」
「あの朝、彼女は真っ先に俺に1杯差し出したんだ!」
メイド2人は首を傾げる。
「俺は、てっきり昨夜ヨカッタからかと…」
「彼女、自分はコーヒーを飲まなかったんでしょ?あのね。女の99.7%は、イッた演技をスル。ベットの中では、女はみんな女優なの」←
「ホントか?知らなかった!そー言えば爆発の直前に父さんと俺を礼拝堂に呼び出したのも彼女だった!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
レイグの"事情聴取"の模様は、万世橋でオレンジ髪のスザン・ドランを取り調べ中のラギィ警部にも耳打ちされる。
「お嬢さんだけど、3件の事件ともアリバイがナイそうね」
「おぉ神田明神も照覧あれ。ソンなモノ、必要ナイわ」
「でも、彼女がヒ素を盛った疑いが出て来たの」
ビックリ仰天するオレンジ髪のスザン・ドランw
「な…なんですって?」
「貴女の娘は、父親を殺し、母親の貴女をハメた疑いが出て来た。何もかも、レイグにそそのかされ、彼の共犯となったからナンだけど」
「まさか!」
絶句スル母親w
「ソレとも共犯相手は、貴女かしら?」
「おぉ神田明神ょ!わかっています。コレは全て私に課せられた試練なのですね!」
「ごまかすなw教会の居住区から検出されたヒ素は、全てドリィが用意したモノょね?どぉなの?YES?」
畳み掛けるラギィ。ココでスザンの態度が豹変w
「はい。私がやりました。娘は無実です」
「え?え?ちょっと待ってょ。貴女は何をしたの?」
「私は、夫のコーヒーに毒を盛り、夫を殺しました。全て、私がやりました。娘は、何も知りません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取り調べの常套手段で、少し揺らしただけのラギィも慌てたが、取り調べをラボでモニターしてたルイナも大ショックw
「待って!おかしいわ。彼女は犯人じゃない!」
「ルイナ、落ち着いて。でも、彼女はなぜ自白したの?」
「アルゴリズムと合致しない。レイグを取り調べる必要がアルわ。スピア、ラギィ警部に電話して」
超天才の慌てぶりに相棒のスピアは不安げだ。
「わかったけど…でも、この自供は重いわ」
「ソロモン王の裁きと同じょ」
「サイロン王?ギャラクティカの season 1 かしら」
ヲタク方面もシッカリ抑え、超天才に死角ナシ。
「season 1 のサイロンは皇帝。王様じゃナイわ。あのね。スザンは娘をかばって自分の身を差し出した。赤ん坊を半分に切られそうになり、自分を捨ててソレを止める…母は、どんな犠牲を払ってでも娘を守るの」
「でも、その娘が愛したレイグは娘を見捨てた。自身を2度も危険な目にさらして偽装しながら」
「でも、しぶとく生き残ってる。どーやら、コレまでの供述を基に、再度アフィニティ分析をやり直す必要がありそうね」
早速、再計算を始める超天才と相棒だが…
「おかしいわ。レイグとドリィの組み合わせ、レイグとスザンの組み合わせは、いずれも支持度が低いし。レイグ単独だと予測度が低くなる。最適パターンを見つけナイと」
「待ってょ。私達、何が欠けてるの?」
「前向きな人生の他に?」
このタイミングで、僕はブラっと顔を出す。
「亡くなったエズラ神父じゃナイかな?アビメレクの例がある。1族と王国を統治するために、邪魔な身内を殺した男ナンだけど」
「あら、テリィたん。じゃこの場合、身内って信者のコト?」
「アビメレクは神の裁きを受けた。でも、身内を殺した罪ではなくて、亡き父ギデオンを侮辱した罪でだ。既に死んでいたのにね」
実は口から出任せナンだが、超天才ルイナは感心してるw
「テリィたん、聖書の世界に詳しいのねw実は私、余り詳しくないの。エヴァを3回見た程度ょ」
「つまり、パパが息子に与える影響は大きいってコトさ。パパが息子を罪へと駆り立てるコトもアル。ママが娘を操るようにね(ってかエヴァにソロモンは出て来ないだろ?)」
「エズラ神父と息子のレイグ?ソレは意外な組み合わせね。アルゴリズムを回してみるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ナルホド。エズラ神父と息子のレイグょ!アンタ達もこの組み合わせにピンと来ないの(私も来ないけどw)」
捜査本部でラギィ警部が吠える!すると、本部のモニターに実直そうな男女の顔写真付き運転免許証の画像が並ぶ。
「警部!コレがジョセとエミリのエズラ夫妻です。2015年までは普通に暮らし、納税もしてます。でも、2016年から2019年までの存在記録がありません。クレジットカードの記録も納税記録もナシ」
「2019年?エズラ神父と子息のレイグが不統一教会に入信した頃じゃないか!」
「あぁ匂うわ、2019年。この年に何が起きたの?」
すると、モニターは焼け焦げた車輌の画像に切り替わる。
「警部!タイヘンだ、モノホンのエズラ夫妻は死亡したみたいです!」
「え。何なの?」
「交通事故です。遺体を激しく焼かれ、身元は判別不能。歯形も無理でした。当時は行旅死亡人として処理されてる。池袋で2019年。乙女ロードの追突事故です」
もはや、何が起きても誰も驚かない。
「まだ続きがあルンでしょ?」
「はい、警部。エズラ夫妻は、失踪する前に里子を預かってます。コレが里子の写真です」
「おぉCawaii」
無邪気な子供の笑顔に癒される捜査員。さらに、その横に現在?の写真がモニターに出ると、本部にドヨメキが起こるw
「あら?レイグじゃナイの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「レイグ!万世橋警察だ!」
不統一教会内にある信徒寮。玄関口で応対に出たドリィが階下から呼ぶ。ラギィ警部とヲタッキーズのエアリとマリレ。
「ドリィ、呼んだか?」
「こんにちわ、レイグ。ちょっと聞きたいコトがあるの」
「何で?」
途中まで階段を降りたレイグは、露骨に嫌な顔をスル。
「少し質問があるの」
「またドリィのコト?」
「え。私?」
名前を呼ばれたドリィは首を傾げる。
そのドリィを警部の方に突き飛ばすw
「待て!レイグ!」
階段を駆け上がるレイグ。ドリィの下敷きになったラギィを助け出し、ダッシュで追跡に入るメイド服のヲタッキーズ!
「マリレ!裏へ回って!」
「ROG!」
「レイグ!逃げ場はナイわょ!」
まるで迷路のような2階を駆け抜けて、外階段から地表へ飛び降りるレイグ。追うエアリ。裏の駐車場へ逃げたレイグは先回りしたマリレを轢く勢いで古いセダンを急発進させるw
「止まれ!乙女なのょ!」
「食らいやがれ!」
「げ。音波銃?ちくしょう!」
後部座席の下げたウィンドウにしがみついたマリレの顔面に情け容赦なくラッパ型の音波銃の銃口を突きつけるレイグw
振り落とされたマリレにラギィとエアリが駆け寄る。
「大丈夫?生きてる?」
「こちらラギィ警部!車両追跡を要請!秋葉原 せ 39-88!」
「あの野郎、秋葉原のメイドをナメちゃって」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「その後、レイグは車を乗り捨てたようだ。検問には全く引っかからない」
「ウリム・ブーン。山ほど前科がありました。小さな詐欺から大きな詐欺まで、蔵前橋(の重刑務所w)にも出たり入ったり。2015年から所在不明でした」
「ブーンとレイグはエズラ親子になりすまし、不統一教会での詐欺を計画」
「大掛かりね。ブーンの引退前最後の大仕事だったんでしょう」
ラギィ警部が考えられる手順を整理スル。
「先ず、手始めにレイグがドラン神父を殺害?」
「YES。次にブーンがコーヒーに毒を盛ってアリバイ工作」
「集団中毒の目的は、あくまで信者に治療を受けさせるコトだった。批判されている信仰治療の教義を廃止し、合わせ技で非課税となる教会の法人化を実現スル計画だった」
さらに、醜い人間模様も浮き彫りにナルw
「ところが、さらにブーンは欲を出し、レイグに毒を盛った」
「殺されかけたレイグはブーンを爆死させ、その疑惑の目をスザンに向けさせるコトにマンマと成功」
「だけど、レイグは3年越しの計画に失敗して今はスカンピンょ。きっと今頃、教会の耐火金庫に眠ってる大金を狙ってるわ」
ラギィが口を挟む。
「でも、自分自身もいつ教会から追われる身になるかワカラナイ。出来れば教会に戻らズに大金を持ち出せる方法はナイかと、必死に考えてるハズ」
「愛の奴隷にしたドリィを使うかしら?」
「逆に、彼女さえ同意すれば、囮捜査に使えますょ警部」
ラギィは即決。
「やって頂戴」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「私が同意しなければ、どーなるの?」
「レイグは逃げ切る。君のパパを殺し、ママを破滅させて」
「いやっ!あり得ない!」
万世橋の取調室。首を振るドリィ。
「ドリィ、良く考えて。レイグがした偽証は、貴女を死刑に出来るモノだった。ためらいもなく、貴女を警察に差し出した男なのょ?」
「怖かったからだわ!彼は、ソンな人じゃナイ!」
「じゃドンな人?貴女は殺されかけたのょ?」
動揺するドリィ。健気にラギィ警部に反論←
「だって…だって、私は愛されてる!」
「YES。貴女は愛されてる。でも、愛してる人はレイグじゃナイわ。見て」
「…ママ?」
ラギィがPCをドリィに向ける。スザンの自供画像が流れる。
"…ドリィがヒ素を用意したの?嘘ょ娘は無実…刑事さん、ごめんなさい。私がやりました。私がコーヒーに毒を盛り、夫を殺しました。あの子は無実です。関係ありません…"
大声でワッと泣き出すドリィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィがドリィを"落としてる"頃、SATOのギャレーでは100均のミルクフォーマー片手にルイナが途方に暮れてる。
「どーゆー風に使うのコレ?」
「ホラ、こうやるんだ」
「テリィたん?あぁ私のカプチーノは夢と消えたわ…」
僕は、傍らにあるパーコレーターのコーヒーを注ぐ。
「このコーヒーがウマいんだ…ところで、スザンの件は見事だったね」
「葛藤があったわ。ひたむきな信仰と醜い教義は紙一重で、論理的に分かち難かった…ねぇテリィたんには、いつも感心スルの。数々の酷い現実を、どうやって忘れるの?」
「(泥レスだ…じゃなかったw)御帰宅だ。ソレと、辛くても意義のある仕事だと思うようにしてるょ」
心にもナイ答えをスル僕←
「ミユリ姉様の御屋敷に御帰宅スルのね…ヲタクには、それぞれ拝むべき祭壇がアルってコト?」
「YES。僕にとって宗教は、とても良い警察だ。おかげで9割は正直。残りを万世橋が面倒を見る」
「ソレが宗教ね?ならば信仰とは?」
え。何でソンな質問が?どんどん話の辻褄が合わなくナルw
「昔からヘンリィ家は、信心深い家じゃない。僕自身、神田明神は実在スルと思うが、その程度さ(何を逝ってんのか自分でもワカラナイw)」
「そっか!パスカルの賭けね?!"神の存在を信じれば生きる喜びが増し、実在しなくても失うモノはない"ね?ナルホド!でも、ソレで虚無感は無いの?」
「だから(泥レスだ…じゃなかったw)御帰宅スルのさ」
車椅子の超天才は、ニッコリと微笑む。
「そっか!そうだったのね?」
恐らく、彼女は致命的な誤解をしてイル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「レイグ!ママが釈放されたの。でも、今度は私が逮捕されそうょ。助けて!」
「不統一教会は汚された。俺達で教会を立て直そう!」
「わかったわ!でも、どうやって?」
万世橋の捜査本部。ドリィのスマホが大河のように吐き出すコード類は、逆探知や音声分析の各種機器に接続されてるw
「ドリィ!教会の再建には、先ずお金が必要だ。耐火金庫にあるお金をアルだけ持って来るンだ」
「わかったわ!で、貴方とは何処で会う?私、寂しい。早くハグして温めて」
「1時間後にJR秋葉原駅の昭和通り口改札」
ドリィの横では、ラギィ警部がオッカナイ顔をして、画用紙に色々殴り描きしては、ドリィに細かく指示を出している。
今、画用紙には大きくハートまぁく←
「レイグ。私、愛してる(お金をw)」
「俺もさ、ドリィ(バカな女w)」
「私の方が愛してる(何だか虚しいw)」
恋人達の通話は切れる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「タンバリンを確認。ラギィ、捕まえる?」
「待って、ミユリ。タンバリンがアリスパックを受け取るのを確認してからょ」
「そのママ、ドリィを逃避行に連れて逝くカモょ?」
普段はビラ配りは皆無の昭和通り口だが、今日に限りヤタラと華やかだ。ズラリと並ぶメイドの内3人はヲタッキーズ。
「ドリィ」
「レイグ。来てくれたのね。寒いわ。ハグして温めて」
「嫌だ…金はいくら持って来た?」
(100均で売ってるオモチャのw)札束がギッシリ詰まり、ズッシリ重いアリスパックを肩から下ろしレイグに預ける。
「たくさん入ってるわ。ねぇ寒いンですけど」
「OK。教会に戻って次の指示を待て。俺を信じろ」
「ハグは?」
ハグを迫る教祖の娘を不審に思う矢先、ヲタッキーズのマリレと目が合うレイグ。その瞳に追い詰められた狂気が走るw
「このクソ女!」
アリスパックを投げ捨てて、雑踏の中、悲鳴と怒号を浴びながら駆け抜けて秋葉原公園へ駆け込んだら…追いつかれるw
ムーンライトセレナーダーの"雷キネシス"にw
「あぁ…姉様。また黒焦げですょ」
「貴女達が取り押さえナイからでしょ!未だ生きてる?」
「どーかしら?…ねぇ公園で寝ないで」←
真っ黒焦げだが意外に元気なレイグがパッチリ目を開く。
「メイドさん、助けて!僕は、彼女に踊らされただけナンです!」
「え。そーだったの?で、彼女ってドッチ?オレンジ髪の母親?ソレともシタタカ娘?」
「娘のドリィ・ドランです!全て彼女の計画です!」
エアリは、大きく溜め息をつく。
「マジ?母親のスザンに千円賭けてたのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その日の真夜中。最高検察庁 ミクス次長検事のオフィス。
「あ、忘れてた。コレを…」
「え。鹿児島出張のお土産?あの甘いお醤油とか、好きになれないのょ鹿児島」
僕は、ミクスの膝に頭を載せたママ、薄い箱を手渡す。
「まさか桜島大根サブレ?少しリサーチ力に欠けてルンじゃない?手抜きだわ」
「おやおや。開ける気もナイ?」
「OK。じゃ開けるわょ…」
次の瞬間、無人のオフィスに幸せな微笑が溢れ出す。
「"ブラックパンダー篤姫カスタマイズ"?!良く手に入ったわね!超レアなのに!」
「わっはっは。どうだ」
「でも、どうして?誰も知らないのに?」
さっきの100倍気前良く膝枕に応じてくれるミクス。
洋画のシーンをマネて僕の頭をクシャクシャにスル。
"…街からも離れられない。私は、貴方の50倍ぐらい世間も知ってるし、貴方は私に借りがある…"
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最後に…翌日の秋葉原UDXペデストリアンデッキ。
「緊急救出ツール、GO」
「乾燥装置、GO」
「オールシステムグリーン!OK?スタンバイ!」
何のコトはないエアリが網、マリレがタオルを持ってるw
ミユリさんは、地下のルイナとトランシーバーで交信中←
「非ニュートン流体。後は試すのみか…今度は大丈夫かな?今回はヤタラと見物人が多いけど」
「幸運をお祈りしてます、テリィ様。may the wotaku be with you!」
「もし失敗したら…ミユリさん、泥レスだぞ」
アッサリ聞き流して、僕を泥の海に突き飛ばすミユリさんw
わ…おぉ!ブヨブヨしてるけど固体?少なくとも沈まない!
「やりました!テリィ様、スゴーイ!」
「何だテリィたん、やれば出来るじゃん!気合いの問題?」
「秋葉原のヲタク、バンザーイ!」
泥が満ちたビニールプールを取り囲んだ野次馬から一斉に歓声が沸き起こり、拍手、口笛が鳴り止まない!
僕は僕で調子に乗って、叫び声をあげグリコの格好で泥の海の上を何度も往復。メディアの取材を受けるw
僕はミユリさんの耳元でささやく。
「見たかったなー、ミユリさんの泥レス」
「テリィ様のために、もう何度もリングに上がりましたが」
「ソレが…話の辻褄合わせに必要ナンだ。お願い」
ミユリさんは素敵に微笑む。
「絶対に嫌」←
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"新興宗教"をテーマに、新興宗教の教祖、その妻、娘、娘を籠絡する詐欺師、更にその上を行く前科者、行旅死亡人、詐欺師を追う超天才やハッカー、次長検事、敏腕警部、ヲタッキーズなどが登場しました。
さらに、実験に明け暮れるヲタッキーズの日常や検事との恋の駆け引きなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ5thワクチンの案内が出回る秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。