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81.エテェネル語の授業にて

王都に向けスレクトゥをあとにしたアルたちを見送り、丘の上で駆け回ったあの日から早くもひと月が経っていた。

 王都にいるアルテュールは丁度、クローヴィスによる三度目の誕生会予定の変更にキレている頃だろうか。


『昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ木を取りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました―――』


 現在、ラヨスたちはアルテュールの部下としてヴァンティエール家に迎えられた時から毎日のように行われているエテェネル語の授業を受けている。

 教室として使われているのはヴァンティエール家の屋敷にままある空き部屋の一つ。


 アルテュールが職人に依頼して作らせた椅子に座り、机の上にあるボロボロの紙の束を見ながら教師役の文官の話を聞く5人の表情は真剣そのものだった。


『では次の文章を……ラヨス君。読んで下さい』

『はい―――おばあさんが川で洗濯していると大きなククの実が流れてきました』

『よくできました。発音も素晴らしいですね。では次の文章をルイーサさん』

『はい―――『なんと大きなククの実だろう。家に持って帰ろう』』

『よくできました。発音も素晴らしいです。では次の文章を―――』


 教師役の文官、エメットが表紙にエテェネル語で『ククの実太郎』と書かれているボロ紙の束を見ながら、一文ずつ生徒である孤児院組にあてて読ませる。


 アルテュールたちが王都に向かう前まではアデリナが行っていたのだが、アルテュールたちが王都に向かってからはエメットが行うようになっていた。

 ここひと月はずっとエメットがラヨス達にエテェネル語を教えている。


『では次の文章をデール君』

『はい。―――ククの実から生まれたからククのみたろうというのはどうだろう』

『よくできました。ただ、『どうだろう』の部分に違和感があるかな』

『『どうだろう』……これであってますか?』

『うん、完璧だ』

『やったぜ!先生ありがと!』

『せんせ~、いわかんってなんですか~』

『いい質問ですねルイーサさん。違和感というのは何か変だな、とかいつもと違うなと感じることを言うんだよ』

『へぇ~、ありがとうございます、先生!』


 発音はしっかりしているか。変なところで途切れたりしていないかなどをチェックして良ければ褒めて次の文章へ。ダメな部分があれば立ち止まり出来るまでやらせる。


 エメットはひと月も教師役を毎日のように務めているのですでに慣れきってしまったが初めのころはそれはもう驚いたものだ。

 若様の部下にエテェネル語を教えてやってくれないかと執事長のロイファーに頼まれ来てみればすらすらと簡単な言葉だけではあるがエテェネル語でしっかりと意思疎通を交わすことのできるちびっこが5人もいた。

 そのうちの一人。ルウにいたっては自分よりも淀みのない綺麗なエテェネル語を話す始末。驚かないわけがない。


『では最後の文章をルウさん』

『はい―――こうしてククの実たろうはおじいさんとおばあさんの待つ家に帰り、みんなで幸せに暮らしました』

『ありがとうございます。完璧ですね』

『やったわっ』


 褒められて嬉しくなっているルウを横目にエメットはそろそろですかね、と授業を締める。


『―――本日はここまでにしましょう。明日明後日とエテェネル語の授業はありませんが勉強はするように。次は『アッフェ・クラッベ合戦』をやるので持ってくるように』

『『『『『『はい』』』』』


「それではまた」


 返事を聞いたエメットがアルトアイゼン語に喋り言葉を戻して退出しようとする。

 そんな教師エメット生徒ラヨスが呼び止めた。


「あ、少しいいですか先生」

「はい?なんです?」


 授業中で何かわからないことがあったのだろうか、と振り返りラヨスの方を向くエメット。


「エテェネル語とは全く関係のない話なのですが……」

「別に構いませんよ」

「ありがとうございます。」


 が、どうやら違うらしい。

 ならば何を聞きたいのだろう。自分が答えられる範囲であれば答えてあげたい。


 ここひと月で芽生えた教師としての気持ちがエメットの思考をそうさせる。


「―――今まで学んできたことを生かすことのできる場に心当たりはありませんか?先生」


 しかし、ラヨスからの質問はエメットにとって到底理解することができないものであった。


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