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儀式の報告




ウィリアムが去ったあとソファでそのまま休んでいると、あっという間に時間がたち王宮の侍女が着替えの手伝いに来た。


このあとは王達との晩餐なので、ぐっと気を引き締め準備をする。

…ベッドへのダイブはもう少しお預けだ。


衣装室に並ぶドレスを見せてもらうとサイズがぴったりなのはもちろんの事、胸元や裾などどこかしらに金の刺繍やリボンが入っていて、鏡に映る自分がウィリアムと対になる立場にあることを再認識し背筋が伸びると同時に照れくさくもある。


「とてもお美しいですわ。この部屋が完成してから、王太子殿下だけでなく王宮にいるすべての者がエルサ様が過ごされるのを待ち望んでおりました」

「ご要望があれば何なりとおっしゃってくださいませ」

「お手伝いできて嬉しいですわ」


憧れの視線をエルサに向けて話しかける侍女達と王宮の話などで盛り上がっていたら、ノックと同時にドアが開きウィリアムに後ろから抱きしめられた。


「リ、リアム様!?」

「ごめんね? 中から楽しそうな声がしたから、邪魔するつもりはなかったんだけどエルサの顔が見たくて」


「まぁ!」「お噂通り」「とても愛されていますのね!」


眩しい笑顔でキラキラ全開のウィリアムと、頬を赤らめながらも嬉しそうなエルサの表情に、侍女達は興奮しつつ静かに礼をして退席する。



「ゆっくり休めた? もう少しだけエルサに触れられる喜びを噛み締めさせて。エルサに会う前は人に触れたいなんて思ったこともなかったのに。今日のドレスも素敵だよ」

「ありがとうございます。私もリアム様がそばにいることが、う、嬉しいですわ」


そう言って、ウエストにある金の刺繍をなぞられれば、耳まで真っ赤になってしまう。


「ごほん。そろそろ向かいますよ」

側近のニースが慣れた様子で間に入り先を促す。


そう。侍女達は退室したが、ウィリアムの連れている側近や護衛はドア付近で気配を消しても立ち去るわけには行かない。


ウィリアムがエルサと婚約してから、側近達は甘々な二人に当てられて、それぞれの想う人の元へ急ぎたいと仕事の効率が上がっている。


エルサは王宮のワークライフバランス改革にも貢献しているのだ。




何度か来ている晩餐の部屋は、王族がリラックスして楽しめるよう広すぎず暖かな雰囲気で、最後に来る国王と王妃を待つ間、先に来ていたアランとウィリアム、エルサで近況報告などをしあっていた。

久しぶりの一人ではない食事にエルサの心が弾む。



失礼のないように気をつけはするけれど、ローズ様も王様も穏やかでお話が楽しいから楽しみだわ。

あら、アラン様は少し背が伸びたのかしら。

ローズ様似のリアム様とは違って王様に似ているけれど、雰囲気はさすが兄弟、似ているわね。

知的クールな王妃様とは対象的に、優しげな雰囲気のアラン様が成長されたら、女性たちがほうっておかなそう。


世話を焼きたがるしっかりした女性に囲まれたアランを想像して思わずニマニマしてしまう。



「エルサ? アランを見過ぎだよ」

優しく髪に触れながらエルサの視線を自分に戻すウィリアム。

アランは嫉妬心を隠しもしないウィリアム()に対し「家族なんですから問題ないでしょう」と、しれっと反論しつつエルサの味方をし、無邪気な弟としてまたエルサとの会話を楽しむのだった。


その後国王と王妃が席について晩餐が始まる。


食事をしながらウィリアムが儀式の様子を話す。

婚約の儀式は女性は毎回同じ内容だが、男性側は人によって違うらしい。ウィリアムの話を聞いて「滝行せずにすんでよかった…」と国王が呟いていた。

ウィリアムの弟のアランはまだ泉の中に入ったことはないので、泉の道の話になることはなかった。


と言っても泉の道での話を聞かれても、ひたすら愛を囁きあっていたのだから、報告のしようがない。


エルサも修行の内容や白の部屋での過ごし方を話した。


「白の部屋はとてもリラックスして過ごすことができましたわ」


本来は王族以外の人間は慣れるのに時間がかかるらしいのだが、ウィリアムの母ローズもかなり早い段階で、エルサに至っては最初から部屋の癒やしの効果を感じることができていたので「私達父子は見る目があるな」と、国王は上機嫌である。


その後しばらくは、それぞれのパートナーの惚気話で盛り上がっていたが、食後のお茶のタイミングで、使用人たちすべてを下がらせた。



「それで、エルサさんの力についてだが」

「父上エルサの力とは?」


エルサの刺繍を見ていないウィリアムは、自分の知らないエルサの話にすぐに興味を示す。


「これを見て。儀式中に白の部屋で刺した刺繍をもとに完成したら王宮で預かり、次の儀式までに私達王族が女神様の力を少しずつ込めていくものなのよ」

「そう、本来なら結婚式前の儀式で刺繍に力が満ちていれば、はれて祝福とともに王族の一員となる」


王妃は、エルサが儀式中に刺した刺繍を籠から取り出しみんなに見せる。


「でもこれ、すでに光ってますよね」

「あぁ。そう見えるな」


成人前でも王族として力を継承しているアランにもはっきりとその光が見え珍しそうに眺めるのに対し、ウィリアムは、エルサの後ろに女神の妄想が見えてある程度悟った。


「実は…」


どう話そうかとエルサが口を開いたタイミングで、部屋の中が眩しい光に包まれた。






お読みくださりありがとうございます。

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