儀式…その4
女神が現れた!
「ねぇ、私とお友達になって?」
…ん? いま、友達になってと聞こえたけど
どうしましょう。
跪いたまま少し顔をあげるとニッコニコの笑顔でエルサを見つめている。
▷畏れ多いと断る
▷喜んで受け入れる
「私でよろしければ喜んで」
「「え!?」」
エルサの返事に仲良く驚いたのはウィリアムと、女神の近くを飛んでいる妖精らしきモノ。
「エ、エルサ? 女神様と友達というのはさすがに…」
「まさかこんな提案を受け入れる人間がいるなんて。ぷぷぷ」
反応はそれぞれだ。
「え? だめでしたか? 女神様からのお声がけを断るのもどうかと思ったのですが」
「ま、まぁそうだが。いやしかし…」
「ぷ~ぷぷぷ」
「もう! そのとおりよ、エルサ。頭の固い者たちの言うことなんて放っておいていいわ。私はあなたと話してみたかったのよ」
眩しいほどの女神の笑顔、その声がうっすら記憶に残る声と重なる。
「女神様のお話相手になれるかわかりませんが、よろしくお願いいたします。白の部屋で私を呼んでくださっていたのは女神様ですね」
「そうよ。やっぱり気づいていたのね。あなたの周りは愛が溢れているから私毎日つやっつやで!」
「本当ですね。女神様のお肌が輝いています!」
「でしょ。家族からの愛、民からの愛、あなたから周りへの愛、そして婚約者からの重ーい愛」
「ぷぷぷ、重ーい愛だって」
いつの間にか自身の肩に座る妖精に笑われるウィリアム。
「あなたのおかげでたくさん祝福ができて、当分この国も安定するわ」
「祝福…ですか?」
国が安定するのはいいことだが、聞いたことのない単語に戸惑うエルサ。
「女神様、お聞きしてもよろしいでしょうか」
女性二人の会話に入りあぐねていたウィリアムが、国の安定という言葉に反応する。
「いいわよ。あなたの愛も癖は強いけど嫌いじゃないわ」
「癖…ありがとうございます。フレーメ国の女神様は愛を司るとこの国では伝えられていますが、エルサに纏わる愛が国の安定に関係しているのでしょうか」
癖が強いと言われ一瞬ひくりとなったものの、すぐに切り替えて王族としての顔になっている。
「そりゃあもちろん! この娘だけでなくこの国には素敵な愛がたくさんあるけれど。愛があふれると私が輝くでしょう? そうするとその光が国の空気をきれいにして疫病を抑え、気候を安定させて作物を育てて、動物たちの心を安定させて繁殖しやすくなって、人々の心も穏やか。そう! 愛に溢れた国はいいことづくめなのよ」
「ぷぷぷ。いつも思うけど、女神様のその説明で分かる人なんていませんよ」
肩に乗る妖精が小さく呟く呟いた言葉に心の中で同意するウィリアム。
しかし…
「まぁ! 素敵ですわ! 溢れた愛で女神様も輝いて国が安定するなんて」
手を胸の前に組みキラキラと目を輝かせるエルサ。
そんなエルサを引き寄せニヤリとしながらウィリアムを見る女神。
「ふふっ王子残念ね、ここでは力が使えないでしょう? この娘の頭の中とっても面白いことになってるわよ」
眩しいほどの女神の光を浴びて畑の植物や動物、人々が踊りだす妄想に女神は笑い出し、妖精は若干引き気味だ。
「力ですか?」
女神の話が読めないエルサは首を傾げる。
「っ!女神様、それは…」
「あら? 話してないの? まぁいいわ。そんなことより今日で儀式は一旦最後でしょう? 次にここに来るのが半年後なんて待てないから、先にあなたに力を授けるわね。だからまた会いに来てちょうだい」
ウィリアムにとってはかなりヒヤリとしたが、神の力で心が読める女神にはそんな些細な事は関心がない。
女神の関心はすぐにエルサに移り、エルサも女神からの魅力的な提案に再び目をキラキラさせた。
「まぁ、ありがとうございます! 喜んでお受けいたします。ところで女神様はお食事などされますか?」
「必要はないけど、フルーツの味は好きよ」
「でしたら次にお会いするときには私のおすすめのなかから…」
「あら! それは素敵だわ!」
あっという間に女子トークに花が咲く二人。
国の行く末について聞こうと思っていたウィリアムは、口を出して女神の反感を買うわけにもいかず、静かに見守るしかない。
「ぷぷぷ。諦めなよ、あの二人びっくりするほど相性がいいんだ」
「そのようだ」
女神から話を聞くことを諦めたウィリアムは、肩に乗る妖精に話を聞いた。
女神が現れた経緯を客観的に聞かされたときは流石に気恥ずかしかったが、愛を司る女神が国にもたらす祝福については理解できた。
エルサと愛を育むことで国が安定するのは喜ばしいが、国の安定のためにエルサを愛するわけではない、と自らを戒める。
「熱いねぇ〜」
と、横から妖精の声がした。
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