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王宮の夜会




春の花が咲き誇る王宮で、春の夜会が開催された。


国内の貴族達は、この夜会までを王都滞在の期間としていることが多く、年末の夜会と同じくほぼ全ての貴族が出席する。


昨年から天候が安定しており、経済も好調なので、集まった貴族達の表情も明るい。

そして、今日集まった貴族達がどことなくそわそわしている理由はひとつである。


ラッパが鳴り響き、王族が入場する。


盛装した国王に続き、王妃、ウィリアム、そして第二王子のアランが壇上に並んだ。

王族らしい整った顔立ちだけでなく、自然と頭を下げたくなる威厳もある。


()()



エルサは先ほど、夜会の始まる少し前に行われた顔合わせを思い出す。


ーー婚約発表の前に、正式に王家と婚約を結ぶため、王宮の一室で両家と神官立ち会いのもと書面が交わされたのだ。


神官の前で誓いの言葉をいい、お互いが誓約書にサインをする。


無事に認められ、ほっとしてウィリアムと顔を見合わせたのも束の間

「エルサさん、ウィリアムの気持ちを受け止めてくれてありがとう! やっと私に娘ができるのね。これからは王太子妃教育の時間も空いた時間も、たくさんお話ししましょうね」

「兄上、おめでとうございます。エルサ嬢、ふつつかな私ですが末永くよろしくお願いいたします」


「ちょ、ちょっと、母上! アラン!? エルサが結婚するのは私だからね?母上も、エルサの空き時間は渡しませんよ?」

「あらあら」

「あ、間違えました」

焦るウィリアムに対してマイペースな王妃様と弟のアランはとても似ていると思った。


「あー。エルサ嬢、私のことはおとうさ「うぉい! エルサの父は私だけだ! お前には王様という立派なあだ名があるだろう!」


「お、お父様! なんてことを。失礼すぎます!」

父の不敬な言葉に青くなるエルサ。

「おとうさまが王様なんて最高だろう、エルサ嬢。どれだけ言っても君が嫁いできたらこっちのもんだもーん」


にやにやとする国王と、ギリギリと奥歯を噛みしめ睨み付ける父。


唖然とするエルサに、母ソフィアが助け船を出す。

「まぁまぁ、2人の幸せのためですから。ね、エルサが困ってるからムキになるのはやめなさい」

王妃も呆れながらも横にいる国王を諌める。

「あなたもよ。ふざけないの」


この状況をそっと見守っていた弟のリヒトが祝福とともに

「姉上、困ったら頼ってね」

ぽん、と肩に手を乗せたかと思うと、横からウィリアムが腰に手を回し

「これからは一番に頼るのは私だろう?」と珍しく満面の笑みでリヒトをみている。


この状況はナンナノ?


こうして記念すべき婚約の儀式とともに、自分の家族と王家のキャラの強さを再確認したのだった。



ーーと。そんなことを思い出しつつ、前を向くと、ちょうど国王の挨拶に続き、王太子ウィリアムと侯爵令嬢エルサの婚約が、正式に発表された。



「ウィリアム・フレーメ、エルサ・プリマヴェラ」


ここからは先ほどの打ち合わせで教えてもらった通りだ。


名を呼ばれ、国王のすぐ下の段にウィリアムと二人で並ぶ。

今日のエルサは、ウィリアムの盛装に合わせた臙脂のドレスに、金のリボンが肩からウエスト、裾まで斜めに飾られている。

もちろん、ウィリアムから贈られたものだ。


ウィリアムがそっと手を差し出し跪く。

「エルサ・プリマヴェラ、私の妃となり民を導く光となり、心を寄り添い共に国を支える柱となる覚悟を。生涯私の唯一」


プリマヴェラ家の夜会でのプロポーズとは違い、公式の言葉となるが、最後の一文はウィリアムが付け足した。これは愛人も持つ気がないという、ウィリアムの意思の表れだ。


そんなウィリアムの手をとり、エルサも迷いなく答える。

「ウィリアム・フレーメ、あなたの覚悟を私も持ちます、民を癒す心となり、いかなる時もおそばに」

そのまま甲に口づけを受け、立ち上がったウィリアムと再度並ぶ。


「ふっ」

横のウィリアムの気配を感じ、ちらりと覗き見れば、今まで人前に立つときは隙のない氷のような表情が、少しだけ柔らかくなっているような気がする。


国王から祝福の言葉がかけられると会場中から拍手が起こった。


見回すと、家族や、オレリア、ドリスやイリスなど、エルサのことをよく知る人だけでなく、ほっとしたり、憧れだったり、驚きだったり、感情は様々ではあるが思った以上にこの婚約を受け入れてくれている雰囲気がありほっとする。



くいっと手を取られ、まるで自分だけを見てほしいというように顔を近づけ見つめられる。

「愛しい婚約者殿、私と踊っていただけますか?」

正式に婚約者となり、みたこともないほど表情豊かになり熱く優しくエルサを見つめる姿に、議会で顔を合わせる男性達は驚愕し、女性達は見惚れた。


たとえ婚約者ができても、その相手が自分より格上すぎて奪い取る隙がなくても、ウィリアムの外見が目の保養になるのは変わりないようだ。


「はい。喜んで」

そんな令嬢達の視線を受け流し、なんなら極上のウィリアムの笑顔も受け流し、エルサはウィリアムの手をとり柔らかく微笑む。



ー心地いいな


エルサの心が婚約発表後も凪いでいることにウィリアムは安堵する。


ウィリアムの地位を目当てにしていないと分かっていても、実際エルサの地位は先ほどの発表をもってさらに上がった。

それでもエルサの心は婚約発表がされたときから今まで、多少の緊張感はあれどずっと心地よいままだ。



優雅な音楽とともに二人がダンスホールへ進むと、「私たちも」と、国王夫妻、公爵夫妻そして4侯爵夫妻もペアを組んだ。



ー心地いいわね


リアム様の瞳は私をそのままでいいんだと伝えてくれる。外見や地位で見ることなく、令嬢としては少し行動力がありすぎる私ごと。

リアム様といると新しい発見も多くて妄想もはかどってしまうけど、うっかりのめり込む前に必ず私の手を引いて戻してくれるのよね。

ふふっ 不思議な人だけど心地よいわ。



しばらくはきらびやかなホールに魅入られていた人達も、率先してダンスを始め、春の夜会は大盛況となった。





ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。


次回ウィリアムサイドの話を載せたら一旦区切りとなります。

次は婚約者編を書いていきます。

もっと甘々にしたいです。

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