◯◯は見た…閑話
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本日は息抜き回です。
-某伯爵夫人-
先日の王宮の花火の話でしょう?
わたくしは、毎年ダーリンと二人で庭園で見る約束をしているんですけどね。
そうそう、今年は例年に増して席の予約が取りづらくて。でも、ダーリンが交渉してくれたのよ。ダーリンったらね…
ええ、分かっていますとも。
あの方達の話ですわね。
ダーリンと席についてお話ししていたの。今年は王族の方々の挨拶に、王太子殿下が加わるから多いのかしらねって。
そう、王太子殿下! 挨拶に立たれる姿を見ただけで、生きててよかった~って思ったわ。知的な雰囲気と明かりに照らされたご尊顔は、見るだけで10歳は若返っちゃいそうなくらい私ドキドキしたの。
もちろんダーリンが一番だけど、もしあの方に迫られたらって…失礼不敬でしたわね。
こほん。
それでいよいよ花火が始まるというときに、私たちの席よりずっと奥にあの方が現れたのよ。
もっと傍で見たかったけど、どの席も満席だったし、もう花火の前だから立ち上がるのも憚られて。
常識の範囲内でちらちらと見させてもらったわ。
花の妖精と名高いエルサ様に跪いて、っきゃ!
本当に舞台の一場面のようだったわ。
声までは聞こえなかったけど、あれは殿下の想いが強いわね。
お茶会で言われているような、侯爵家の計算だとかエルサ様が色を使ってとか、そんな雰囲気ではなかったわ。
そもそもプリマヴェラ侯爵様もいらっしゃられなかったし、アウトンノ侯爵令嬢のオレリア様まで笑顔で見守っていらしたんだもの。
むしろエルサ様は最初は戸惑っていらっしゃったよう。
でもね、途中に席をたたれて戻ってきたときにはエルサ様の瞳もとても可愛らしいものになっていたの。
もちろんいつも美しく可愛らしい方ですけど、なんていうか、今までにない魅力が追加されてたわね。
高貴なお方ですけど、お茶会では気さくに話しかけてくださるエルサ様に、想いあえる方ができたようで、私もつい幸せな気持ちになったし、ダーリンにもっと優しくしようって思ったわ。
-某近衛騎士-
王宮の花火の日、例年通りなら私は王族の方々の側に控えるか、庭園の警護という勤務で過ごすはずだった。
今年から責任者が王太子殿下になり、今までのやり方を引き継ぎつつ無駄を省いたり、伝統を守ったりと分かりやすい指示のもと準備が進められていて、その手法に優秀な方だと再認識したところだ。
しかし、準備の途中、私を含む何人かが隊長に呼ばれていった先で思わぬ依頼を受けた。
「ある席の周りを参加者として埋めてほしい」
そんなわけで依頼を受けた護衛はなぜか全員妻子持ちだったから、家族を伴い参加者としてテーブルについた。
そして私たちに囲まれるように座っていたのが侯爵家の有名なご姉弟、エルサ様とリヒト様、さらに同じく侯爵令嬢のオレリア様だった。
本来なら侯爵家以上をお守りするなら騎士の服を着て周りを固めてもいいくらいのご身分だが、堅苦しくしたくないとこのような私服警護となったのだろう。
会場をよくみるとこの一画ほどではないが、私服の騎士がちらほらいる。
なるほど、場の雰囲気を崩さないため、目につく制服の騎士と私服の騎士をうまく配備されているようだ。
おかげで、殿下の想い人の為にという発想から、今年の花火会場の雰囲気はとてもリラックスした空間となった。無駄な挨拶回りもなく、各自がパートナーや家族と思い思いに過ごせているようだ。
長年の経験から参加者に不審な気配も感じないし、私の家族も楽しそうだ。
毎年こうだといいなぁ。
途中席を立たれた際には、さりげなく近衛で周りを囲んだが、妻子持ちの自分ですら当てられるくらいに、微笑みあうお二人はまるで完成された美術画のようだった。
普段の王宮にいる殿下は、無表情で常に気を張っていて隙なんかなくて、しかも恐ろしく仕事ができるところとか、同じ人間なのかって思ってたけど…
あのエルサ様を見つめる蕩けた瞳は、とても大切にしていることが伝わってきて、一人でも殿下が気を許せる方がいると知れて、側で仕える者として安心したよ。
席をたっている間に二組ほど思うところがある貴族か殿下達のいたテーブル周りに近寄ろうとしていたが、それすらも殿下は予想していてそれなりの対応の準備をしていたので、なんの問題もなくご退場いただいた。
花火も大成功だったし、この国の未来も安泰だな。
今日も早く帰って家族と過ごそう。
-プリマヴェラ侯爵家侍女-
私はエルサ様の専属侍女ミーナと申します。
エルサ様が幼い頃から母について屋敷のことを学び、エルサ様が15の準成人の時に専属侍女となりました。あまり登場することはありませんが、実は屋敷内では常にお側に控えております。
美しさに定評のあるエルサ様ですが、屋敷内にいるときは、妄想の世界に飛び込んで、気の抜けた表情や、楽しそうににこにこしたりと、可愛らしい一面もあります。
そこに最近では大人っぽい憂いを帯びた表情をされることもあり、そのあとの微笑みとのギャップに、私たち女性の使用人でさえ心を奪われそうになりますわ。
王太子殿下と婚約が内定したときは、さすがエルサ様と嬉しい反面、寂しくも思いましたし、何よりその重責を思うととても心配しておりました。
しかし、以前殿下がいらした時に感じたエルサ様への気遣いや眼差しに、使用人一同いらぬ心配だったと安心したのでございます。
誰がどう見ても、エルサ様を大切にしてくださる方です。
お二人並んだお姿といったら。画家に描かせたら、きっとこの国の民全員が欲しがるでしょう。
数多の男性からの誉め言葉も軽く流してきたエルサ様ですが、皆様侯爵位より下位なうえに、エルサ様の功績を知って崇め称えるような方が多かったので、殿下のような引っ張っていく気概のある方に惹かれたのかもしれませんね。
エルサ様の殿下のことを考えているときの表情といったら。
まだ恥ずかしくて、お気持ちを言葉にしてお伝えできていないとおっしゃっておられましたが、きっと伝わってると思いますよ。
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閑話ってなんでこんなに筆がすすむのでしょうか
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