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新年の花火 その3

☆\(^_^) 砂糖追加投入~




「エルサ」

王族用の秘密の花壇に入り、改めて名前を呼ばれた。

自分の名前を呼ばれただけなのに、それはとても甘い響きのように聞こえた。


今まで普通に会話できていたのが信じられないくらい、一度意識するとドキドキする。

自分でも頬が熱いのがわかり、もしも昼間なら赤くなっているのがすぐに伝わってしまっただろう。


「はい、リアム様」

同じく名を呼ばれ、嬉しそうにウィリアムはそっと抱き締める。


「会いたかった」


リアム様って最初からスキンシップが多い方だったけど、ますます増えてきているような気がする…


「さっきは言えなかったけど、今日の装いはドレスがシンプルな分、エルサの魅力が全面にでている。力強い女神のようにも見えるし、儚げな妖精のようにも見える。これではどんな好みの人間も吸い寄せてしまうね。このリボンも、とてもよく似合ってるよ」


…甘い。めちゃくちゃ甘い。

しかも、耳許で話さないでーっ!!

ウィリアム様ってこんなに甘い方なの!?


「あ、ありがとうございます。私もお顔を見られて、その、嬉しいです。リボンは、侍女がつけてくれて。よく見ると綺麗な刺繍も入っていて気に入っているんです」

自分の気持ちを表すのがこんなに恥ずかしいなんてと、思わず口ごもってしまう。


エルサの緊張は伝わっていると思うが、ウィリアムは少しだけ体を離すと、なぜか少し気まずそうにしている。


「ごめん。もっと早くに言わなきゃと思ってたんだけど、このリボンは私がリヒトに託したんだ。エルサに似合うと思って」

「え!? でも。このリボンは夜会の時にはありましたよ?」

「そうだね。エルサのことを知ってすぐだったかな。王宮に商人が服を仕立てに来たときに見つけてね。なぜだか君に身に付けるものを贈りたくなったんだ」

リボンの編み込んでいる部分をそっと撫でる。

服越しに伝わるウィリアムの優しい手に動揺する。

「り、リヒトも侍女も何も」

「ごめんね。私が口止めしたんだ。ちゃんと話したこともないのに、渡されたら変に思うだろうし、あの時は本当にただ似合うだろうと思ってただけだったから。でも、今なら分かるよ。この色をつけたエルサは私とお揃いだ。君が私のものだと、他の者に知らしめたかったんだと。気に入ってくれたのなら嬉しい」


腰回りに編み込まれた金のリボン。

改めてみるとウィリアムの髪や瞳と同じだ。

まるでエルサがウィリアムに守られているようにも見える。



は、恥ずかしいっっ!


美しい顔に、今は小さな明かりのせいか艶のある色気まででて、今更ながらウィリアムにドキドキする。


思わずぎゅっと目を瞑ると、


「…っ! かわいい」


そんな言葉が聞こえ、同時に一瞬だけ額に何かが触れた。


思わず目を開けると、目の前にウィリアムの顔があった。

覗きこまれた瞳には、優しさと同時に燃えるような欲が見えた。


い、い、いま…


緊張と焦りで思わず目が潤んでしまう。


「ぐはっ…っ!」

腰に回されたウィリアムの手に僅かに力が入ったと思ったら、なにか呟いてばっと離れて横を向き、片手で顔を隠してしまった。


嫌がっているように思われたかしら


ちょっとだけ不安になるエルサ。


「リアム様、改めて素敵なリボンをありがとうございます。ずっと大切にいたします」


恥ずかしいけれど、嫌ではなかったと伝わるようにエルサは再度笑顔で返した。



そう、潤んだ瞳のまま。



「…くっ! はぁー」


溜めていたものをゆっくり吐き出すように呼吸しながら、ウィリアムはエルサに顔を見せずに上から抱き締めた。


ウィリアムは自身を落ち着けようと、しばらくエルサの頭を撫で続けた。


「あの、リアム様、お疲れではありませんか? 今日まで大変だったのでしょう」

熱くなった空気を落ち着けるため、おずおずと

腕から抜け出し話しかける。

まだ手は繋がれているが。


「まあね、前年と同じでもよかったんだけど、エルサにいいとこ見せたくて張り切ったから」

「会場の音楽も花火もとても素敵でしたわ」

「よかった。後半も期待してね。そういえばエルサも忙しくしているって手紙に書いてくれてたね」

「はい。社交もですが、他にもやりたいことを見つけてしまって」


先ほどまでの甘い空気ではないが、また別の、二人にとって心地よい空気へと変わる。

「エルサの興味は尽きないね。次はどんなことだろう」

「ふふ。もうすぐ形になるので、是非見てくださいね」

「あぁ。魔石の研究もこちらでも本格的に続けたいし、エルサとも色々なことに挑戦したい。勝ち負けではないが、エルサと出会ってから私も頑張らなければと思うようになったよ」

「どうか無理をなさらないでくださいね」

「ありがとう。エルサも困ったことがあったら私に相談してほしい」


そう言って、そっと繋いでいたエルサの手を自分の胸に当てた。


その後、少しだけカラの魔石についての話をして、戻ることにした。


通路に戻るとリヒトとオレリアが待ってくれていた。

テーブルに戻る道では、腕を組んで一緒にいるにもかかわらず、嬉しそうに何度もエルサを見つめるウィリアム。

その度にエルサはドキドキを収めるため、視線をそらしたり、道の花を見たりと忙しそうだ。


そんな二人の後ろを、リヒトとオレリアは温かい気持ちで歩いていた。


席に戻るとニースがウィリアムに耳打ちする。

ウィリアムがなにかを指示してニースは去っていった。


「殿下、行かれなくてよろしいのですか?」

「うん、大丈夫だよ。今のところ問題がないか確認していただけだから。行事は準備さえ万全にしていれば、よほどのことがない限りうまく行くんだ」



ひゅーるるる どどーん

ひゅーるるるる どどどーん


後半の花火は今年の加護祈願が主となり、明るく大量の花火が連続して打ち上がる。


花火が上がるたびに照らされる庭園を、エルサはそっと見る。


皆が上を向いて、希望に溢れた顔をしている。


今年も素敵な年になりますように


エルサはそっと祈った。



――――――


ウィリアムが、知的でクールなキャラ設定から遠ざかっている気がする…。


お読みいただきありがとうございます。

お気持ち程度に、評価ボタンを押していただけると嬉しいです。


お時間ありましたらこちらもどうぞ。

「婚約者が運命の恋を仕掛けてきます」

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