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狂騒と絶望

迷路での注意点とは?行き止まりを記憶することだ。

迷路での分岐点とは?選び方は路線を変える必要もある。

迷路での限界点とは?出口があるとは限らない。分かるな?

 フラットは赤い球体となったファーデンが

迷路を進むのを追いかけていた。

(離されるとプルファーに狙われるし、この血が途切れると

結構な量の血液を失ってしまう)

 球体からフラットに繋がっている血液が途切れた場合、

球体表面の血液も解除され、使用していた血液が飛び散るため

回収が困難になる。かといって表面の血液を解いた場合は再び

二対一となるためそれも避けたい。

(次はどっちに行くのか……)

 転がっている球体は奥にぶつかると、適当な方向に向きを変えて

進み直す。血液で覆われているため外が見えないためだ。

 来た道を戻る場合もあるため、時々轢かれそうになる。

「次はこっちだーーーっ!」

 ファーデンは最早楽しんでいるのか走り続けているようだ。

(止まりませんね……そろそろなんとかしないと)

 追撃に来ていたプルファーは何故か追いかけてこなかった。

 しかし一度補足されたので警戒はしなければならない。

(プルファーに集中するためにもひとまず動きを止めましょうか)

 球体を追い越し奥の壁の上まで血液で道を作る。

(重さに耐えられればいいですが……)

 血液の坂道を球体が登りだす。勢いがあったため最初は順調だったが

段々と動きが遅くなる。

(重さには耐えられましたが、傾斜があるせいで止まりそうです)

 球体の後ろに回りフラットが押し始める。壁を越えた先はまだ迷路だった。

(このままだと隣の道に落ちるだけですね)

 血液の道を先まで伸ばし、球体は壁の上を移動し始めた。

(よし、これで迷路から抜け出せます)

 迷路の位置は端まで少しだったため端まで行くと球体が落下する。

「うわーーー!落ちてるーーー!」

 上に登っているときは気にしていなかったが、落ちるとなると

吃驚したようだ。それなりの高さであったため、落ちた後に動きが止まる。

(ようやく止まってくれましたね)

 フラットも続いて球体の上に着地し、道にしていた血液は回収。

(さて……プルファーはどこから来ますか……)

 迷路の外側を背に周辺を警戒し始めた。

 

(ようやく止まったか。最後にすごい音がしたが)

 最終的に外に出てくるのを予想してプルファーは既に外にいた。

(出入り口まで来ると思ってたんだが、外したな)

 転がって外まで来ると思っていたので簡易的な地雷も仕掛けていた。

(色々と無駄になったが、音からして向こうか)

 角から少し覗くとフラットが球体の上にいた。

(あの位置で壁が無事なら上から落ちたな。まだ動きが止まってる

ところを見るとファーデンの奴、気絶したな)

 音がしてからファーデンの反応がないためそう判断した。

(じゃあ撃っても大丈夫だな)

 両手を発射状態にする。

(距離があるが……とりあえずあれから離すか)

 角から両手を突き出す。

(ガトリングだ)

 ダダダダッ

 腕が展開するといくつかの砲塔が装備されていた。

 射程距離、弾数共に以前よりも強化されている。

 撃ち始めると身を晒して向かっていく。

「喰らいやがれっ!」

 

 フラットが周辺を警戒していると銃撃音が聞こえてきた。

 球体の上部とフラットの下半身の範囲が撃たれている。

「ついに攻撃してきましたね!」

 まるで予想していたかのように言うが、球体の後ろに降りる際に

足が撃たれていた。そして球体も上半分が吹き飛ぶ。

「ファーデンに当たりますよ!」

「気絶してんだろ?運が悪くなきゃ当たらねぇよ」

 半分になった球体に隠れていたがプルファーは近づいてくる。

(不味いですね……今のうちにファーデンを殺しますか)

 球体を覗き込もうとすると弾が当たるため中の様子がわからない。

(このまま攻撃してみますか)

 球体の血液を解除し刃に変え、ファーデンを襲おうとする。

「はっ!やらせるかよ」

 刃はプルファーの弾丸により砕け散る。

(くっ……流石に妨害してきますか)

 プルファーがすぐ傍まで来ていた。

「さあ、逃げ場がないぞ?」

 その時、突然ファーデンが立ち上がった。

「うるさーーーい!!!」

「おいバカ!」

「ぐはっ!」

 立ち上がったファーデンをプルファーの弾丸が撃ち抜く。

 流石にプルファーも銃撃を止めた。

 ファーデンはそのまま球体の外側へ前のめりに倒れる。

(何が起こったんでしょうか……)

 フラットは球体の横から様子を確認する。

(急に起きたファーデンがプルファーの銃弾に撃たれたようですね)

「同士討ちですか」

「そうらしいな」

 プルファーは特に気にした様子でもない。

「ファーデンは?」

「どうかな。おい」

 プルファーがファーデンを足で蹴突く。

「ぶはっ」

 ファーデンが口から血を噴き出して立ち上がった。

「……わざとか」

「偶然だ。咄嗟に急所は外しただろ?」

 ファーデンの体は撃たれていくつか穴が開いていた。

「確かに動ける!」

「じゃあ問題ないな」

「納得いかないけど、許す!」

 ファーデンは体の調子を確認するように手足を動かす。

(あれだけ撃たれても問題ないのですか……どう殺しますかね)

「仕切り直しだ。糸玉は壁にならんぞ?」

(そうでしょうね。以前より威力も上がっている様ですし……)

 隠れていた球体の半分が突然分解した。

「もうやられないぞ!」

 ファーデンが能力を解除したようだ。

「どいてろ、次は俺がやる」

「えー」

「助けてやったろ」

「わかったよー……」

 無防備になったフラットをプルファーが狙い撃つ。

(とりあえず防ぐしかないですね)

 血の壁を展開し弾を防ごうとする。当たると壁が壊れるため、

常に新しい壁を生成する。

(以前と同じ消耗戦は無理です)

 迷路で血液を使いすぎたのであまり余裕がない。

 壁際に追い込まれないように迷路とは反対の右側へと横に走る。

「逃がさないよー」

 ファーデンがフラットの進む方向に糸を飛ばす。

(やはりふたりだと困りますね……この糸はどちらでしょうか)

 フラットは視界が白黒なこともあり、糸の種類が区別を

つけられなかった。飛ばした糸の先に建物があるため、そこまで届くと

糸が張り、攻撃型の場合は弾かれ、捕獲型の場合は捕まる。

(これも防御するのは厳しいですね)

 プルファーの銃撃に血の壁を壊されながら糸の高さを確認する。

「飛び越し禁止!」

 ファーデンはもう一方の手から糸をフラットの頭上に飛ばした。

「くっ」

 飛び越えようとしたのを邪魔され、フラットは糸の手前で足を止めた。

「初めて役に立ったな」

 プルファーが銃撃の勢いを上げる。

(逃げ場がない!)

 銃撃の勢いが増したことにより、血の壁を生成する頻度が上がった。

(これではもちません。あそこまで逃げられれば……)

 かろうじて退路として残っている後ろの建物を見ると

「あっ!気付かれた!」

 ファーデンが初めに飛ばした糸が建物に届く前に折り返してきていた。

(妨害のためではなかったのですか!)

 プルファーの攻撃に集中し、逃げ場もないため糸が後ろから襲う。

 シュパッ

 フラットの背後の糸は攻撃用と捕獲用が混同しており、

両足の膝の上と下を分割し、そこより上の糸は体に付着した。

 そのまま後ろに倒れていくが、血の壁は維持し続ける。

「危ねぇ!」

 プルファーにも糸が届きそうだったため、攻撃を中断して避けた。

「やったね!」

 フラットは後ろに倒れ、地面と接着された。

(不味いですね……)

 とりあえず切断部を血液で覆う。

「次は逃がさないぞ」

 近づいてきたファーデンがフラットの上に捕獲用の糸を被せる。

 体は糸で覆われ顔だけが出ている状態だ。

(軽く詰みましたね……)

「学習したな」

「えっへん!」

 ファーデンがこれ見よがしに胸を張るが、プルファーは未だに

警戒しているのか離れている。

「それでどうするんだ?」

「確かに。どうやって連れて行こうかな」

「マジだったのか……」

「そうだよ!そういえばホントにくっつくのかな?」

「あ?前に俺と戦った時は足がくっついてたぞ」

「試してみよう」

「おい、全部はやめとけよ。また逃げられる」

「わかってるよー」

 ファーデンは落ちていた足首を残し、膝をフラットに近づけた。

「どう?くっつく?」

「……どうですかね」

 そう答えつつもフラットは足を血液で補強する。

(ここまでの怪我の場合、自己修復はすぐにできないのですが……)

 すぐに治らないことが知れると殺される可能性があるため、

正確に答えるのは危険であった。

「あっ!くっついた?よくわかんないな……」

 ファーデンは接合部をまじまじと観察していた。

「能力的にくっつけただけなのか、治ったかわかんねぇな」

 プルファーが不意に思ったことを口にする。

「なるほどー。じゃあ、手を切ってから繋いで動くか試してみよう!」

「それならいつ治るかわかりそうだな」

(これはいよいよでしょうか)

「じゃあいっくよー!」

 ファーデンは右腕の拘束だけを解いた後、糸で切断した。

「ぐっ……」

「痛いのはあるんだねー」

「なんだかんだで生身だしな」

「さてどうなるかなー?」

(どうなってしまうのでしょう……)

 右腕の再生を待つ三人であった。

 

 一方その頃、マーク・リヒトとマーク・ゼークラフトことオージェは……

「次は近距離でのあなたを見たいですね」

「最初からそのつもりなんでしょ?やってやろうじゃない」

(と言っても私はそもそも攻撃タイプじゃないのよね……

遠距離ならかろうじて能力が使えるから良かったんだけど)

 狙撃に使用していた場所は遊戯都市ヴァルドゥング・ベーアにある

大時計塔の上であった。淵はあるが平坦な場所でありそれなりに広い。

 リヒトはその場に棒立ちして動こうとしない。

(私から攻撃しろってことよね)

 オージェは攻撃の構えを取り能力を発動する。

解析眼(アナライズ)

 通常時に能力を使用する右目が奪われたが、左目でも能力は使用可能だ。

 その場合通常の視界は完全に無くなるため、何かしら見落とさないように

注意しなければならない

(さっきと同じで装備が機械になってるわね。違うのは電気が

手足に集中しているくらいかしら)

 狙撃を避けられたことと、気付かぬ間に近づかれたこともあり

今から攻撃をしても当たる気がしない。

(こういう場合はあれよね)

「はっ!」

 リヒトに向かい突進する。

 殴りかかるが余裕で躱され、次に踵落としを繰り出すが当然避けられる。

「普通に体術ですか?」

「どうかしらね」

 踵を地面に叩きつけた時、爆発音と共に煙幕が拡がる。

(勝つ見込みがなければ逃げるだけよ)

 辺りが煙に覆われ、先ほどと同じように逃げようとする。

「ふー……」

 リヒトが息をつくと閃光が迸った。

(何なの!?)

 閃光が煙を吹き飛ばし辺りが晴れる。

 リヒトが片手を天に向け伸ばし放ったようだ。

「逃げるのは無しです」

(さっき逃がしたのはワザとってこと……)

 先刻の煙幕の時には使わなかったのに当てが外れた。

「もう一度チャンスをあげます」

「やるしかないようね……」

 オージェは戦闘する場合、武器を使用することを基本としている。

 素手で戦う場合、通常の人間よりは再生力や身体能力が高いうえに、

能力を発動すれば相手の筋肉の挙動が予測できたりするが、例え動きを

読めても目の前の相手には通用しそうにない。

(奥の手しかないか……通用するかわからないけど)

 懐から小さな容器をとりだす。

「これならどうかしらね!」

 容器を地面に投げつけようとしたが失敗する。

「あれ……?」

 いつの間にか容器はリヒトの手元にあった。

「ふむ……毒でしょうか?私に効くかはともかく。

もう戦う気はないようですね」

(やはり早い……気付いたら盗られていた)

 オージェは両手をあげた。

「降参よ」

「降参?もうあきらめるのですか」

「だって、あなたに当たる気がしないもの。それも盗られたし……」

「そうですか。ですが私はあなた方を殺すつもりなのですが」

「なんとか助けてもらえないかしら?」

「向こうにまだブルートもいますからね。人質として連れて行くなら

いいですよ」

「それでいいわ」

「では人質にします。まずはそこに四つん這いになってください」

「拘束でもするの?まあわかったわ」

(さっき簡単に右目を抉った割には普通なのね)

 オージェが四つん這いになるとリヒトはオージェの顎に手を置き、

顔を上に向けさせた。

(どうするつもりなの……ひっ!)

 オージェの口を開けさせると、奪われた右目を歯の間に挟んだ。

「今から動きを制限するため手足の関節を外します。その間に

目玉を噛み潰した場合は更に制限を課します」

(こいつ何言っているの……?)

「ではさっそく」

 ゴキッ

「いぎっ……!」

 ブチュッ

 リヒトが右腕の肩関節を外すと、痛みでオージェは自分の右目を

噛み砕いた。

「ゲホッ……ひどい……」

 オージェが左手で右手を抑えながらリヒトを睨みつける。

「駄目ですね。では物がなくなったので調達します」

「え……物って、まさか……」

 オージェの想像通り、リヒトがオージェの左目に指を触れる。

「いや……やめて……」

 ズチュ

「あがぁ……」

 視界が無くなった中、左手で左目を抑える。

「さあ、続きです。口を開けてください」

「もうやめて……」

「では死にますか?」

「そんな……」

 オージェは痛みに耐えながら口を開ける。

 オージェの左目を歯の間に挟んだ。歯が震えている。

(こんなことって……)

「では次です」

 ゴキッ

「っ……!」

 左肩の肩関節を外すと支えを失ったオージェは前に倒れる。

 咥えている目玉は何とか無事なようだ。

「大丈夫でしたか。では次です」

 ゴキッ

「っ……!」

 容赦なく両足の付け根の関節も外した。

 何とか目玉は噛み砕かなかったようだ。

「よくできました。これは記念に貰っておきましょう」

 オージェの口から目玉を引き抜くとポケットにしまう。

「あ……あ……」

 オージェは意識を失っていた。

「さてと、向こうの様子でも確認に行きますか」

 リヒトはオージェを物のように担ぎ、移動を開始した。

 

 三人が右腕の再生を待つこと数分。

「ねー、まだー?」

「おい、どうなんだ?」

(まだ治ってませんよ!)

 フラットの指は動かないままだった。

 血液の循環は戻ったため、手の血行は良い。

 骨と神経と筋肉はまだ繋がっていなかった。

「もしかして大分時間かかるんじゃないか?」

「そうかも!うーん、どうしようかなー」

「これだとお前の欲しいのじゃないのか?なら殺すか」

「でもなー、でもなー」

「はっきりしろ」

(こんな適当な議論で私の生死が決まろうとしている……)

 一応この状態でも血液を操作して攻撃することは可能である。

 だが仕留められなかった場合、確実に殺されそうなため動かない。

「もうちょっと待ってみる!」

「あと少しな」

 そうしているうちに誰かやってきた。

「おや、そちらも終わっていましたか」

「リヒトだー」

「そっちも終わったのか」

「ええ、拍子抜けでした」

 そう言うとオージェをフラットの近くに投げ出した。

「オージェさん?」

 返事はなかった。

「もう殺したんですか」

「いえ、まだ生きていますよ。人質用に持ってきたんですが

必要なかったですね」

「まあな、今はファーデンがこいつの再生能力を確認してるとこだ」

「なるほど。生かして捕えたいと」

「そう!でもなかなか治らないんだよねー」

「それは困りましたね」

「だからもう殺そうって言ってるんだが聞かなくてな」

「そうですね。では先にこっちを殺してから考えますか」

 リヒトが寝ているオージェの首を持ち上げる。

「起きてください」

 リヒトの掌から電撃が流れる。

 ジジジジ

「……いぎ!」

 オージェが叫んだので電撃を止めると頭から湯気が上る。

「起きましたか?」

「う……なに……?」

 オージェが首を振るが視界はもうない。

「オージェさん!?目が……」

「フラットなの……?」

「ええ、私も捕まりました。見えないのですか?」

「……両目とも抉られたわ」

「相変わらずえげつねぇ」

「リヒト君怖ーい」

「そうですか?他の人に比べれば私は優しいですよ」

「やべぇ奴らと比べるなよ……」

「まあそれはいいとして、どちらが殺しますか?これも

マーダーキラーですよ」

「ブルートを殺れないなら俺がやる」

「そうですか、では任せます」

 リヒトが手を離すとオージェは地面に顔面を打ち付けた。

「ぐはっ」

「オージェさん……手も動かないのですね」

「手足は使えなくしてあります」

「人質ってそんなだったか……」

「余計なことをしないようにです」

「確かに。さっき逃げられたのはこいつのせいだったな」

「それで?どう殺すのですか」

「そうだな……丁度抵抗もできないようだし」

 プルファーはオージェの顔を持ち上げ片手を口に突っ込む。

「あがっ……」

 目が見えないオージェは突然のことに為す術がなかった。

「火薬を中に入れて爆発で死ぬか試してみるか」

「なるほど。それなら内部の耐久力確認にもなりますね」

「耐久力確認か……それなら少しずつやってみるか」

「なにそれー、あたしも近くで見る!」

 オージェを三人が取り囲んだ。

(これは拷問ですね……このままオージェさんが死ぬのを

見守っていていいものか……)

 能力で一時的に邪魔をすることは可能であったが、その後が

どうにもできないため見守るしかなかった。

「まず一回目だ」

「……んーっ!」

 オージェの喉元を火薬が落ちていき、小さな爆発音と共に

オージェの口から煙があがる。

「ごほっ……」

 オージェが咳き込むがプルファーの手が塞いでいるため、

必要以上に苦しそうだ。

「まだ全然余裕そうだな」

「内臓も問題なさそうです」

「次行こう!次!」

(耐え続ける限り続くというのも恐ろしいことです)

 フラット程ではないが再生もそれなりにする。軽傷であれば徐々に

修復に取り掛かるだろうが、終わる前にまた傷付けられるだろう。

(そもそも私も捕まったら似たようなことをされるのでは……)

 オージェを自分に照らし合わせ戦慄するフラット。

「大分余裕があるな。次はさっきの五倍でいくぞ」

 宣言通り先ほどより長く火薬を投入する。

「どうなるのかな!」

「もうすぐだ」

「まだ内臓はもちそうで……っ!」

 リヒトがその場を飛び退いた。

「おい、どうしたん……」

 ズボッ

「……あ?」

「……え?」

 プルファーとファーデンの胸から腕が突き出ている。

 ボンッ

 遅れてオージェの体の中から爆発音が生じる。

 突き出ている二本の腕にはそれぞれ心臓が握られていたが、

爆発音と共に握りつぶされた。

「あ、音に吃驚して潰しちゃったわ~」

 腕を引き抜くとふたりはその場に倒れた。

「……マーク・ネルフ」

「あら?私のこと知ってるの?」

「マーダーキラーズの隊長」

「そうなのよ、とりあえずふたりとも無事なようでなにより」

「……ジュラ様……」

「隊長……どうしてここに」

(この有様で無事と判断するのは、まさしく隊長ですね……)

 フラットはともかくオージェはかろうじて生きているという状態だった。

「話は後にして、まずはあれをどうにかしましょうかね~」

 笑顔のままリヒトを見つめるジュラ。

「ようやく本命ということですか」

  

絶望での対処法とは?何でもいいが活路を見出すことだ。

絶望での脱却法とは?原因を見つけ取り除くことだ。

絶望での逃避法とは?全てを諦め流れに身を任せることだ。

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