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2 VS 3

待ち伏せされたときはどうすればいいか?相手によるな。

探していた相手?丁度いいではないか。数が多い?

想定が足りないからそういう事態になるのだ。

 陽が沈みかける頃にカジノ・グリュック・レーベンを

出たフラットとオージェを迎えたのは三人組だった。

「久しぶりだな、マーク・ブルート」

「元気そうですね。プルファー」

「おかげでしばらくは修理だったよ。そっちのやつにも名乗っておくか。

俺はマーク・プルファーだ」

「じゃ、あたしはマーク・ファーデンかな?」

 見知らぬもうひとりが名乗る。

(一緒にいるし、そりゃ仲間ですよね)

 フラットがファーデンと名乗る少女を観察する。

(見たところ普通の少女ですが、この子も何か機械化を

してるのでしょうね)

 ファーデンは赤髪のショートヘアで、上は長袖だが

下は短いスカートという格好だった。

「そういう流れかい?では私もマーク・リヒトとしておきます」

(全員それでいくんですか……)

「それでそっちは何ていうんだ?」

 プルファーがオージェに問いかける。

「別に名乗る必要もないでしょ?」

「こちらはマーク・ゼークラフトです」

「フラット……?」

 オージェがフラットを睨む。

「いや……隠す必要もないですし」

「やけに親しそうね」

「私は誰に対してもこんな感じですよ」

「おや?オージェではないのですね。フラットと同じで

名前とコードネームは別ですか」

「あなたこそさっきカジノにいたわよね?」

「先ほどはどうも」

「えっ?中にいたんですか?」

「ポーカーの参加者にいたわよ。あなた見ていなかったの?」

(そもそも視界が白黒なので言われて気付いたんですけどね)

「……遠くからオージェさん眺めてただけでした」

 言われるまでリヒトと気付かなかったことは伏せておいた。

「もうちょっと注意してよ……それにしても私が調べた時は

引っ掛からなかったのよね」

「やはりそういう能力ですか。無防備でいたのは正解でしたね」

「今はあなたから機械の反応がするわ。取り外せるのね」

「その通りです。さっき襲われたらやられていたでしょう」

(オージェさんの調査を当てにし過ぎた……しかしポーカーの

テーブルを見回った時は確かにいなかったはず)

「流石にブルートに見られたら気付かれるので、そこは避けていましたよ」

(私を避けてオージェさんを観察していたのでしょうか)

 実際フラットがポーカーのテーブルを決めた後に、

リヒトは別のテーブルに参加し始めていた。

「それで?私達を待ち伏せていたのは何故?」

「もちろんあなた方を殺すためです」

「以前は私を見逃したではないですか」

「あの時は目的が違いましたのでね。あれ以来私を探していたようですし。

それにこのふたりがあなたに会いたがっていまして」

「おかげさまで大変でしたよ……結局そっちから出向いてくるとは。

しかもプルファーは知り合いだったんじゃないですか」

「まあそうなるな」

「ファーデンでしたっけ?あなたは?」

「ようやく話せるね!あたしがブルートに会いたかったのは、

あなたが欲しくなったの!」

「え……?告白ですか?」

「えーと、ちょっと違うかな?プルファーにブルートのこと聞いて、

あたしの理想通りの人だったのよ!」

「どういう意味でしょうか?」

「あなた体が切られてもすぐに繋がるらしいじゃない?」

「……まあ、否定はしませんが」

「あたし人を切り刻むのが大好きなんだけど、すぐ死んじゃうのよね……

その点あなたなら大丈夫!」

 ファーデンがピースサインをしてくるのでフラットは困惑していた。

(そういう欲しいですか……)

「よかったじゃないフラット」

 笑顔で祝福するオージェ。

(この人は……)

「……つまり、プルファーとファーデンは私を殺したいと」

「この前のリベンジだ」

「あたしはあなたを生かしたまま捕らえるつもり!」

(既に意見が割れてるじゃないですか……)

「……ではリヒトは?」

「私はふたりとも殺すつもりですが、あなたはふたりに任せますかね。

ゼークラフト、よろしく」

「フラットが二対一なのね。じゃあいいと思うわ」

「私は全然よくないんですが……」

「ところでこのまま始めるの?都市を巻き込むつもり?」

「私たちは特に気にするつもりはないですね」

「俺の爆発で壊れないわけはない」

「あたしは邪魔するものは排除する」

「だそうよ。フラット余裕があれば被害は抑えなさい」

「余裕があればですか……なかったときは?」

「対象の殺害を優先しなさい」

「そうですよね……この都市の人には先に謝っておきます」

「誰にも届いてないけどね」

「気持ちの問題ですよ……」

 ふたりも戦う気になったようだ。

「もうよろしいですか?それでは……」

 リヒトが開戦の合図でもしようとした時

「またあとでね」

 オージェが何かを地面に投げつけた。すると弾けて辺りが煙に覆われる。

「煙幕かよ!俺の領分じゃねえか!」

 プルファーが自分の爆炎を想像して叫んだ。

「何も見えないし、煙たいよー!」

「さて、どうくるつもりですか?」

 ファーデンは慌てたが、リヒトは相手の動きを待った。

「フラット」

「うわっ、オージェさんですか。ひとりだけ見えてそうですね」

 オージェがフラットの目の前におり、相手に聞こえないよう

互いに小声で話している。

「流石にここで戦うのは被害が大きすぎるわ。適当な場所に

お互い移動しましょう。追ってくる相手は決まってるみたいだし」

「そうらしいですね。ではご武運を」

「もし倒せたら支援するってことで」

「わかりました」

 フラットは右腕を切り裂いて血液を出し、建物の上に向け飛ばして

血液を伸縮させながら移動していった。

(使い勝手良さそうな能力よね。あの負荷は願い下げだけど。

さて私も移動しようかな)

 オージェには煙の中で敵がその場に留まっているのが見えていた。

(まあ私みたいに見えなければ、人数がいる場合は迂闊に

動かないのが正解よね。今のうちに私は武器を取りにいかないと)

 オージェがある場所に向かい走り始めた。気配を悟られないよう

足音はなるべく立てないように走る。

 しばらくすると煙が晴れてきた。

「……おい、やっぱりふたりとも消えてるぞ」

「逃げるつもりではないでしょう」

「でもー、いないし逃げたんじゃないのー?」

 ファーデンが辺りを見渡して探し始める。

「いないなー、あっ!向こうで飛んでるのがいる!」

「ブルートじゃねえか。こっちに来いってことか」

「そのようですね。一応被害は抑えたいようで」

「俺は別にどこでも構わねぇから向かうぞ」

「あたしも行くー!」

「ではこちらも分かれますか。またのちほど」

「お前の方は見つかってないんじゃねえのか?」

「そのうち向こうから来るでしょう」

「違いねぇ」

 プルファーとファーデンはフラットを見かけた方角に向かっていった。

「さてと。あちらにブルートがいるなら反対側でしょうか」

 リヒトは急ぐでもなくフラットと反対側に歩き始めた。

 

 フラットはある程度離れると、遠くから煙幕が晴れるのを確認した。

(そろそろ向こうも探し出しますかね)

 ファーデンが辺りを探し始めるのを確認し再び移動を開始する。

(どうやら見つかったようですね)

 プルファーとファーデンがこちらに向かってくる。

(この都市の主だった施設は把握していて良かったですね。

戦うとして被害を考えると時間的に……あそこにしますか)

 フラットが到着した場所はパルク・アスレチック・シュポルトという

アスレチックを主体とした屋外遊具場であった。

 ここは入場が自由であるが陽が落ちると暗くなるためすでに

人はいなくなっていた。

(予想通りもう人はいないようですね)

 場内の様子を確認しているとプルファーが到着した。

「よう、ここでやるのか?」

「そのつもりです」

「人がいないな。気遣う必要がない訳だ」

「一応被害は減らしておきたいもので」

「プルファー!何で先に行ってるの!」

 遅れてファーデンが到着する。

「お前が遅いからだろ?」

「きーっ!ま、いいか。ブルート、まずは試しに切らせてくれない?」

「試しにって……お断りします」

「断られてもやるけど、ね!」

 最後のセリフと共にファーデンがブルートに向かって突進してきた。

(到着して早々に戦闘開始ですか……ファーデンの攻撃をまずは

見極めるのが先決ですね)

 プルファーの弾丸を警戒し障害物があるエリアを選んでいた。

 ひとまず直線状ではファーデンのみ警戒すればよさそうである。

 ファーデンが移動しながら両手を合わせて左右に伸ばすと、

手と手の間にいくつか線のようなものが出来ていた。

(糸?いや、攻撃となると鋼糸か何かですかね)

 フラットは右手の傷口から血液を刃上に出し迎撃の構えを取る。

「そんな感じになるのね!それで防げるの!?」

 ガキンッ

 金属がぶつかるような音がして糸と刃が鬩ぎ合う。

「頑丈さは互角?」

「残念ながら」

(切れ味は良いはずなんですがね……やはり金属製ですか)

 フラットは刃を押して後ろに飛び退く。

「糸の武器ですか」

「そんな感じ。じゃあ次は……」

 ファーデンは手を合わせて糸を収納し、再び手を開き糸を出した。

「これはどうか、な!」

 先ほどより多い本数の糸をフラットに向かい飛ばしてきた。

(遠距離攻撃!?同じように刃で防ぐか……)

 糸が近くまで来ると違和感を感じ、咄嗟に上に飛んでいた。

 障害物があるため横には避けられなかったのだ。

「何で避けるのー!」

 ドチャッ

 飛んできた糸はフラットの後ろにあった壁に当たると、

そのまま付着した。

「さっきと違うじゃないですか!」

「これは捕獲用の糸なの。よく気付いたね!」

(咄嗟に避けて正解でしたか……)

「残念」

 ダンッ

 フラットが後ろに気を取られている隙に、いつの間にか遮蔽物の上に

移動していたプルファーが弾丸を撃ってきた。

「しまった!」

 フラットは右肩を撃ち抜かれて落ちていく。

「もう一発」

 ダンッ

(また撃つのですか!?)

 フラットは血液を前面に壁として弾を防いだ。しかし、弾の勢いを

受け後ろに飛んでいき壁に激突した。そして糸に捕まる。

「ビンゴだ」

「ナイスアシスト!」

(意図して行った連携ならヤバいですね)

「これは捕まえたことになるのか……?」

「あの糸からは簡単には抜け出せない……あーっ!」

 フラットが糸に捕まったマントコートを脱いだ。

「抜け出せました」

「さっさともう一発撃たないからだ、バカが」

「確かに!迂闊だった!」

 心底残念そうに頭を抱えるファーデン。

(意図してない連携でしたか……)

「それがあるなら場所を変えた方がいいですね」

 フラットは後ろの壁を血液で飛び越えて逃げた。

「あーっ!また逃げた!」

「次は俺から仕掛けるぞ」

「殺しちゃ駄目だよ?」

「あいつ次第だな」


 壁を乗り越えたフラットは次の戦場を探していた。

(捕縛の糸は要注意ですね。多分私の刃では切れそうにない。

逃げ出す手段もないことは無いですが……)

 二対一の状況を踏まえて遮蔽物のある場所を選択したが、

相手の能力との相性が悪かった。

(中遠距離からプルファー、近距離からファーデン。

しかもファーデンの方は当たると不味い場合があると……)

 結論としてフラットは迷路エリアに逃げ込むことにした。

 プルファーはすぐに追いかけてきていたので、フラットを補足

していたが迷路に入り込んだのを確認し、ファーデンを待つことにした。

「やっと追いついた……」

「回り込んできたか」

「それでどこなの?」

「あの中だ」

 プルファーが顎で迷路を差す。

「うわー、面倒くさそう」

「あくまで二対一で直接戦いたくないんだろう」

「どうするの?別れて入る?」

「それは面白くないな。お前は近づいた方が良さそうだから先に入れ。

幸いこの迷路は高さはあるが天井がない。俺は上から探す」

「どっちが先に見つけるか勝負ね」

「見つけたら知らせろよ」

「はいはーい。じゃあお先に」

 ファーデンは楽しそうに迷路へと入っていった。

「さてと……」

(上から探すとは言ったが、そこまで高い施設もない。かといって

迷路の壁の上を移動するのもな……)

 迷路の幅を確認しながら見回る。

(普通に四角になっているか。やはり長い、相当な高さから出ないと

全体は見渡せそうにない。入り口と出口が一つずつ)

 入り口の隣に出口があるタイプの迷路であった。

 フラットとファーデンは入り口から入っていった。

(とりあえず上で様子を見守るか……)

 プルファーは入り口と出口の間の壁に登り待つことにした。

「やはり見える範囲にはいないな」


 フラットはとりあえず迷路を奥へと進んでいた。

(追いかけてくるのはふたりかひとりか……)

 ある程度進んだところの分かれ道に隠れた。

(道があればとりあえず糸は避けられますね。あとはどう攻撃するか……)

 フラットは左足を見えない位置で切り裂き血液を操作する。

(あとはどちらが先に来るか……)

 しばらくすると足音が聞こえてきた。

(この感じだとファーデンの方でしょうか)

「そろそろ出てきたらー?」

(警戒心が薄いですね……逆に怖い)

 見てはいないが隣の通りにいるようだ。

(まずは仕掛けますか)

 隠れている分かれ道に足音が近づいてきたところ、半身だけ晒して

血の刃を振りかざす。

「わっ!隠れて攻撃するとは卑怯だ!」

 不意打ちにも関わらず糸で防いできた。

(あのタイミングでも防がれるのですか)

 フラットは再び隠れて逃げ去る。

「また逃げる気かー!」

 ファーデンがすぐに追いかけてくる。

(向かってきましたか)

「今度は捕まれ!」

 ファーデンが立ち止まり糸を飛ばしてくる。

(あれに当たってはいけない)

 フラットは正面に向き直り血の壁を展開し、

当たった糸はそのまま付着する。

「また防がれた!」

(次はあなたの番ですよ)

 ファーデンが攻撃を防がれたことに気を取られていると、

足元から血液が飛び出してきた。

「ぎゃっ!」

 血液は刃二本になっておりファーデンの両足の甲を貫いた。

「なにこれ!痛いっ!」

 刃が長いため足を抜くことも出来ずその場から動けなくなる

(できればもう少し内側がよかったですが十分ですね)

 血液の壁を解き付着した糸も下に落ちる。

 今度はフラットがファーデンに向かい突進していく。

「来るなー!」

「さっきはそちらから来たじゃないですか」

 ファーデンが糸を前に出して防ごうとする。

(それでは駄目ですね)

 フラットは右手の刃を複数の槍上にし、糸を潜り抜けて攻撃する。

「さっきと違う!」

(いけそうですね)

 フラットが攻撃が当たるのを確信していると、

ファーデンが口を大きく開けた。

 ジャッ

 ファーデンの口から大量の糸が出てきて壁となった。

(私と同じですか!?)

 直線に進めていた血の槍を糸の壁に弾かれ、回り込んで

再び攻撃しようとするが糸の壁はファーデンの周りを囲んでいた。

(ではこちらを!)

 ファーデンの足を貫いていた刃に意識をやり、体まで伸ばそうとする。

「がっ!」

 ファーデンは足を切り裂いて後ろに退がった。

 そうしてファーデンは糸に囲まれ球体となる。

(完全防御状態ですか)

「どうだ!これで攻撃できないでしょ!」

「そちらからも攻撃できないのでは?」

「攻撃するときは部分的に解除するから大丈夫!」

「ではこうするとどうです?」

 フラットは大量の血液を糸の球体に浴びせると真っ赤な球体となった。

「何これ!?周りが全部赤い!」

「私の血液でコーティングしました。解除した部分があれば

そこから攻撃します」

「何をする!」

「先に言っておきますが、中で更に糸で全身を纏ってから解除しても

そこもコーティングします」

「ひどい!」

「もうひとりいるんで人質にさせてもらいますよ」

「ひとでなし!」

「あなたがそれを言いますか……あっ、来たようですね」

 プルファーが騒ぎを見つけ、到着して上から見下ろすとこの状況であった。

「なんだこれ?」

「あっ、プルファーだ!捕まったの!助けて!」

「お前が逆に捕まったのか……」

「そういうことです。どうしますか?」

「別にどうということはない。ブルートだけ倒せばいい話だ」

 プルファーが指先をフラットに向ける。

「ではこうします」

 フラットはファーデンの入った赤い球体に隠れる。

「お前……」

「ファーデン越しに攻撃するならばどうぞご自由に」

「いやーーーっ!」

 ファーデンが叫ぶと球体が転がりだす。

「えっ!この状態で動くんですか!?」

 球体に付き添ってフラットも走り出した。

「何だこの状況……」

 プルファーはしばらく呆然としていた。

 

 オージェは隠していた場所に武器を取りに来た。

(まさか探している方が見つかるとはね)

 能力の特性を生かすために武器は長距離射撃用のライフルであった。

 物が大きいため持ち運べず、仕方なく隠しておいた。

遠視眼(ヴァイト)

 能力の発動に発声は必要ないが思考で切り替える必要があった。

(大分悠長に歩いてるわね……そんなに余裕があるのかしら)

 リヒトの様子に違和感を覚えながらも、移動範囲を予測して

狙撃ポイントに移動する。

(今は人通りが多いわね。その辺りなら通常弾で仕留めようかしら)

 リヒトは都市の中で夜でも人通りのある歓楽街を歩いていた。

 明かりは所々に火が灯っている程度でそれなりに暗い。

(このまま進むと歓楽街から外れるわね。となると……)

 オージェは弾丸を通常弾から炸薬弾に変えた。

(これなら万が一避けられても破裂した際に当たるわよね)

 オージェには遠くても見えているため、ライフルにはスコープ等も

付属していない。オージェにしか使えない状態である。

(そろそろポイントね。まさか誘ってるってことは無いわよね……?)

 相手を不気味に感じつつも先手を逃す手はないため撃つ準備に入る。

解析眼(アナライズ)

 遠くを確認しつつ周りの状況も精査する。風向き等の外部要因が

計算できるためスナイパー張りの狙撃が可能となる。

 能力の併用になるため撃つ少し前に発動することにしている。

(やっぱり何も警戒していないように見えるわね。機械用の装備は

しているようで何かが動いているようだけど……)

 オージェの視界にはリヒトの機械部分が解析されていた。

 原理がわからないため機械の装備位置と電気の流れのみ見えている。

(とにかく一撃与えてからよね)

 ダンッ

 三〇〇メートル程離れた位置から弾丸が発射された。

 当然のようにリヒトに命中する。狙ったのは頭部だ。

 頭部に当たった弾丸は炸薬が破裂し、更なる攻撃が

襲い掛かる――はずだった。

(消えた!?)

 オージェの見ていた位置からリヒトの姿が消えた。

正確には命中した直後、一瞬光ってから消えた。

(確かに弾は頭部に命中したはず!)

 炸薬弾は虚しく飛び散る。

(いや、まずはどこにいるかを探さなければ……)

 オージェが立ちあがり周りを探索していると

「だーれだ?」

「ひっ!」

 オージェの背後に誰かがいて、オージェの両眼を後ろから

手で塞いでいるようだ。

(どういうこと……?)

 声で分かりそうなものだが混乱して状況が把握できなかった。

「答えられないのは不正解ですね」

「なにを……」

 ズチュ

「あがぁ……」

 オージェの右目に指を押し込まれ目玉が取り出された。

 後ろにいた人物がオージェの目の前に移動する。

「……リヒト」

「正解です。少し遅かったですね」

 右目を抑えながら相手を警戒する。

「弾は当たらなかったの……」

「当たりましたよ。直前で防ぎましたが」

 リヒトが手を翳し電気の幕を張る。

「電撃……?あのタイミングで防ぐというの……」

「そのくらいでなければ、あそこまで余裕はないですよ」

「それにこの距離をすぐに詰めてくるなんて……」

「まあ、そういうことです」

(これを私が倒さなければいけないの?)

 今更ながらフラットの方を羨む。どのみち戦うことになっただろうが。

「さて、あなたの能力に使うと思われる眼はひとつ頂きましたがどうです?」

「どうって、あなたね……?」

(何故片目だけ奪ったのかしら……)

「どうやら遠距離から終わらせるつもりだったようですが、

次は近距離戦と行きましょうか」

「私に何をさせたいのよ」

「単純にあなた、マーク・ゼークラフトの能力がどれ程のものか知りたいのです」

「……その割には能力を奪われたんだけど」

「これは答えを失敗した罰ですよ?もうひとつあるでしょう」

「……あなたいい趣味してるわ」

「よく言われます」

「後悔しないことね」

「それでは始めるとしますか」


 

 

逃げ回っているではないか。仕方なかった?

探していた者は来ていないようだが?それどころではない?

いい機会だ。想定が足りなかった代償を支払うといい。

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